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〈コマチュック〉 在日サッカー少年 「夏の祭典」

 第29回在日本朝鮮初級学校学生中央サッカー大会(3日〜5日、兵庫県淡路市佐野総合運動公園)は、朝鮮学校に通う在日サッカー少年にとっての「夏の祭典」。真っ青な天然芝がその舞台だ。今年は53チーム、750人の選手(11人制、8人制含む)がエントリーし、全109試合が行われた。11人制の優勝は城北朝鮮初級学校。「死ぬほどうれしい」(金成輝主将、6年)と悲願の初優勝を果たした城北イレブンは、体に比べると大きすぎるトロフィーと優勝旗を抱いて歓喜の声を上げた。

今年も「西高東低」

東京第5(青)×尼崎

 今大会は、3日間の日程を2日間に「短縮」して行われた。台風による影響から、初日の試合が組めなかったためだ。29回を数える大会の歴史でも、過去に1度しかなかったことである。2日目から天候は回復し、試合は5分短縮の15分ハーフで行われた。

 選手たちは初日のうっぷんを晴らすかのように、元気にグラウンドを駆けた。今大会では大差の試合は少なく、好ゲームが続いた。それだけに応援にも熱が入る。

 11人制第1試合は、埼玉朝鮮初中級学校×「カンソン」(西大阪朝鮮初級学校、泉州朝鮮初級学校、奈良朝鮮初級学校、和歌山朝鮮初中級学校の合同チーム)。1点リードで試合を優位に進める埼玉相手に、「カンソン」は中盤の深い位置から左右にボールを送ることで状況の打開を図った。時間が進むにつれて「カンソン」の固さは消え、パスワークが次第に良くなり、終了間際に同点に追いついた。試合はこのまま終了。勝ち点1を分け合った。

 予選はリーグ戦で行われるため、勝ち点1はとても大きい。

 そろいのユニフォームに身を包んだ「カンソン」の応援団は、「優勝したみたい」と喜びに湧いていた。

 東京朝鮮第5初級中学校は、「なんとしても1部でやりたい。1つでも多く試合したい」と意気込んで試合に臨んだものの、1回戦で生野と対戦して0−1で惜敗。その希望は叶わぬものとなった。

千葉(黄色)×北海道

 引き分け以上で1部進出が決まる千葉朝鮮初中級学校は、地元朝青員の協力を得ながら、出場チームの中では珍しく3バックシステムで大会に臨んだものの、サイドからの突破を許し、1部進出最後の切符を東大阪に奪われてしまった。

 熱戦の結果、1部リーグには地元兵庫から2チーム、東京、大阪から各3チーム、西東京、愛知、広島から各1チームが勝ち残った。地元兵庫を代表して1部に進出した西神戸朝鮮初級学校と神戸朝鮮初中級学校、明石朝鮮初級学校合同チームはそれぞれ城北、名古屋朝鮮初級学校にPK戦で敗れた。

 兵庫サッカー協会の金順治理事長は、「前回大会では地元から1部に進出するチームはなかったが、今年は西神戸がベスト4まで進み兵庫の意地を見せてくれた」と語った。そして、選手たちが互いの成長を促す登竜門として、大会運営のバックアップを今後も惜しまないと約束した。

 一方、西東京朝鮮第1初中級学校は大阪朝鮮第4初級学校に0−2、「東京の覇者」と呼ばれた東京朝鮮第9朝鮮学校は生野朝鮮初級学校との一戦で、PKで星を落とし関東勢はベスト4で全滅。今年も「西高東低」の様相を呈したが、「東西の溝は埋まりつつある」と関係者は話していた。

「死ぬほどうれしい」

11人制1部決勝 城北×生野

 11人制の決勝は、城北×生野の大阪同士の決戦となった。

 11人制1部決勝、正確なフリーキックを武器に個人技で勝ち進んできた生野に対し、城北は細かくつなぐサッカーで勝負を挑んだ。前評判通り、試合は生野優位で進んだ。開始早々、生野は立て続けにフリーキックのチャンスを得る。優勝候補と呼ばれた大阪第4を2本のフリーキックで沈めた生野である。しかしここでは不発、逆に城北がコーナーキックからのワンチャンスをものにした。

 キーパーの上を越えてきたボールを金龍飛選手が飛び込んで頭で決めて先制。「鋼鉄の頭」とチームメイトから手荒い祝福を受けた。「飛び込んだら入った」と金選手は振り返る。

 後半に入って両サイドからの突破で1点をもぎ取った生野だったが、わずか3秒後、まさかのキックオフシュートが生野ゴールに突き刺さった。その後は生野の攻撃を、143aの小柄なキーパーを中心によく守った城北に勝利の女神がほほえんだ。ホイッスルと同時に崩れ落ちる生野イレブンと、サポーターから万雷の拍手を受ける城北イレブン。

 主将の金成輝選手が胴上げで宙に舞う。城北イレブンは「死ぬほどうれしい。初優勝だ」と喜びを爆発させた。

 彼らの「夏の祭典」はこうして幕を閉じた。

8人制1部で優勝した大阪福島

 前回大会を生野の監督として優勝に導いた城北の安相秀監督は、「自分たちのペースで狙い通りの試合ができた。よくがんばった」と選手をねぎらった。

 8人制1部は総じて、11人制にはエントリーせず8人制一本にしぼってきたチームが多く、決勝戦には大阪福島朝鮮初級学校×川崎朝鮮初級学校、東京朝鮮第6初級学校合同チームが名乗りをあげた。

 8人制1部決勝は体力の勝負でもある。両チームに大きな差はなかったものの、わずかに大阪福島が決定力で勝っていたことが勝敗を分けた。

「サポーター」も熱戦

 会場にはそろいのユニフォームやTシャツ、タオルを身にまとった学父母の姿が目立った。その姿は、完全に「サポーター」である。子どもと同じ背番号なのだろうか、背番号入りのユニフォームもあふれていた。「ピルスン(必勝)コリア」を歌った後、「みんなコリアだった」と困惑するサポーターの姿も。

 ユニフォームを見てナショナルチームを言い当てるあたり、大会への関心とともに父母の目は肥えてきていると言える。

遠方から参加した各校にはサッカー協会から支援金が贈られた

 会場にはグラウンドを囲むように、各校のテントが張られている。選手たちの息使いと監督、サポーターの激が行き交っている。まるで「選手村」のようだ。

 グラウンドでは終了のホイッスルと同時に、その場に倒れこむ選手たちをよく目にする。敗れた方のイレブンが涙をこぼしているのである。「何もしてあげられないのが歯がゆい」と、サポーターたちもその勇姿に拍手を送り、同じく涙していた。

 試合が進むにつれ、「選手村」は喜びにわくテントと、沈むテントの両極に分かれていった。

 大会競技班の責任者でサッカー協会の梁★壽さん(技術部所属)は、「バランスの取れたチーム、精神的に相手を上回ったチームが結果を残した。今後もシュート、パス、トラップなどの基礎技術の向上を、継続は力と信じて取り組んでほしい。日々の練習が試合に勝つための精神力を養ってくれる」と述べた。

 サッカー協会の李康弘理事長は大会を振り返り、「兵庫県をはじめとする同胞、学父母の協力で今年もいい大会となった。今後は各チームとも選手たちの習得能力が高い要求に応えうるものと信じて、基礎技術の向上に励んでほしい」と語った。また、無常にもPK戦で敗れた選手たちに対しても「いい経験だと思うことが大事。失敗を恐れず、大胆にサッカーを楽しんでほしい」とエールを送った。

 一方、熱烈な応援で大会を盛り上げた西播、大阪第4、東京第3、東京第4のサポーターに応援賞が授与された。

 また、遠方から参加した北海道、九州、東北、茨城、山口の各チームにはサッカー協会から支援金が送られた。(鄭尚丘記者)

▲大会結果

 【11人制】

 1部 @城北A生野B大阪第4C西神戸

 【8人制】

 1部 @大阪福島A川崎、東京第6合同B南武C北大阪

 結果詳細はサッカー協会ホームページ(http://www.ksaj.gr.jp/)で。

★=口へんに寅

[朝鮮新報 2007.8.10]