〈ヘバラギCUP〉 好試合に学父母も感動 |
在日朝鮮初級学校学生中央バスケットボール大会「第5回ヘバラギCUP」(在日本朝鮮人バスケットボール協会主催)が7月31日〜8月2日、東京朝鮮文化会館(東京都北区)で行われた。大会には北海道から九州までの朝鮮学校から男子9チーム、女子16チーム、約300人が出場。トーナメント方式で行われた。男子は埼玉朝鮮初中級学校、女子は東京朝鮮第2初級学校がそれぞれ初優勝した。 試合決めるフリースロー
大会全38試合、選手たちは暑さに負けずコートを走り回り熱戦を繰り広げた。なかでも、もっとも会場をわかせたのは、最後に行われた女子の決勝戦だった。 決勝戦のカードは、これまで最高順位が2位の東京第2と埼玉。両者一歩も引かぬシーソーゲームで勝敗は最後までもつれた。 決勝戦は序盤から得点を重ねた埼玉が前半で9点差をつけたが、第3クォーターに入り東京第2が驚異の粘りを見せ同点に。 フリースローを立て続けに決める埼玉に対し、決まらない東京第2は苦しい展開。残り時間2分を切ったところで埼玉が連続でシュートを決め、39−38とリードを奪った。埼玉は勝利を信じリング下を固めた。 最後の攻撃を仕掛ける東京第2は残り2秒、埼玉のエンドラインからのスローインをカット。これが相手のファウルを誘いフリースローのチャンスを得た。残り時間は1秒、まさに試合を決めるフリースローだ。 チームメイト、監督、応援に駆けつけた父母らの大声援を一身に受ける東京第2・金美玲選手(初6)のフリースローを会場中が固唾をのんで見守った。
金美玲選手はこのときを振り返り「はずせば負けだから緊張した。正直、入るとは思ってなかった」と語る。 だがそんな緊張をはねのけ、同点、逆転と、2本のフリースローを見事決め、初優勝を掴んだ。チームメイトが駆け寄り抱き合って喜びを分かち合った。 キャプテンの金珠英選手(初6)は「みんなが最後まであきらめずに走った結果」と胸を張った。 学校に体育館がない東京第2は、デコボコのグラウンドでの練習を余儀なくされている。週に一度、日本の小学校の体育館を借りて試合に備えるのが精一杯。今大会に向け苦しい走りこみ主体の練習にも耐えた。 李長根監督は「バスケが大好きな子どもたちに少しでも良い環境をと思って学父母の協力も得てがんばってきた。それだけに優勝できてうれしい」と語った。 応援に駆けつけた父母らは「点差が開いたのに一つひとつシュートを決めて追いすがる子どもたちの姿に感動した」と語った。 埼玉、男子優勝、女子2位
一方、3大会連続2位とあと一歩のところで優勝を逃した埼玉。試合が終わっても選手たちは呆然としていた。洪貴恵監督は、敗北を他人の責任にしたり試合中に泣いてしまう選手がいるなど「精神的な弱さ」を指摘。「子どもたちの成長を考えると負けも悪くない。冬の大会を目指してまたがんばりたい」と語った。 自ら「厳しい」と評価する洪監督の指導を受ける埼玉は、男子が先に初優勝を遂げた。初級部のバスケットボール部を受け持って3年目となる洪監督は、今の6年生が4年生の時に担任も受け持った。バスケ好きの生徒たちを手塩にかけて育ててきた。それだけに優勝の喜びは大きかった。 西東京朝鮮第2初中級学校との決勝戦は第3クォーターを終えて22−19とリードを許した。「サイタマ!」「ニシニ!」と応援合戦が展開されるなか、選手たちは互角に渡り合ったが、最後は埼玉が地力を発揮。畳み掛けるように得点を重ね、32−25で初優勝を勝ち取った。 埼玉のキャプテン・金唯史選手(初6)は「落ち着いて練習どおりにやれば勝てると信じていた」と語った。背番号がパンツに隠れて見えないほど小柄な金暉恭選手は、4年生ながら中心選手として出場。「いっぱい練習してずっと勝てなかった日本の学校にも勝てるようになった。優勝してもっとバスケが好きになった」と語った。 そろいのうちわを用意して大会一の大声援を送った埼玉の学父母らは、子どもたちを褒め称え監督と抱き合って喜びを分かち合った。 2位の西東京第2の選手たちは悔し涙を流したものの、「自分たちの力は発揮できた」(キャプテンの李樹勇選手、初6)。 遠方からも出場 今大会最南端からの参加は2連覇中のディフェンディングチャンピオン・北九州朝鮮初級学校(男子)。結果は4位だった。3人の6年生を中心に力強いプレーで連覇中の力に恥じないプレーを見せた。準決勝で西東京第2に敗れた主将の梁泰栄選手(初6)は、「すべての面で負けていた」と涙で声を詰まらせた。しかし、監督や父母らは「まだまだこれからのチーム」と期待した。 最北端からの参加は、ドキュメンタリー映画「ウリハッキョ」で何かと話題の北海道朝鮮初中高級学校(女子)。結果は2敗と振るわなかったが、「くやしいけど良い経験ができた。飛行機に乗ってみんなで参加できて楽しかった」(主将の権明姫選手、初6)。 名古屋からはオモニたちの応援団が駆けつけた。地元関東勢に負けない大声援で選手たちを後押しした。名古屋朝鮮初級学校男子チームを引っ張った主将・全基弘選手のオモニ・李美鈴さんは「メンバーぎりぎりでよくがんばった。最後まで一生懸命走る子どもたちの姿を見て、応援しながら涙を流した」と語り、東京まで足を運んだことに満足げだった。(李泰鎬記者) ▲大会結果 【男子】 1部 @埼玉A西東京第2B東京第4C北九州 【女子】 1部 @東京第2A埼玉B東京第4C川崎 [朝鮮新報 2007.8.10] |