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往年

 東京都青商会主催のサッカー大会に参加した。30代後半から40代が中心で、ほとんどが東京朝高サッカー部のOBだ。歴代の名プレーヤーたちによる、ちょっとしたオールスター大会だった。

 同じチームに日本人の若者が助っ人として参加していた。5年ぶりにボールを蹴ったというわりには上手い。鹿児島実業出身と聞いて思わず嘆息した。大会終了後、昼食の焼肉パーティーを経て一団は居酒屋へと移動した。助っ人くんを独り占めにし、サッカー談義に耽った。

 すると突然、「…お前ら、いい時代に生まれたよ」と先輩が呟いた。

 「当時、俺たちにとっての最高の舞台は静岡フェスティバルって言ってなぁ。…知らないだろ?」

 助っ人くんが神妙な顔持ちで話した。

 「昔は朝高のことを『幻の強豪』って呼んだみたいですけど、結局それは『存在しない』ってことと同義語になっちゃうんですよね…。鹿実の場合、全国出場は通過点でしたけど、その全国への出場資格すら与えられないっていうのは、ちょっと想像つきません」

 先輩は寂しく笑った。杯を傾けながら「酒を注げ」と言った。

 朝高に全国への門戸が開かれたのは、1994年。以来、「夢は国立」が朝高サッカーの合い言葉になった。

 だからこそ忘れてはいけない大切なことがある、と朝高生に伝えたい。

 たとえ実力があっても「幻」と呼ばれ続けた往年を。先輩たちが築き上げた歴史の上に、今の君たちが立っているということを。(健)

[朝鮮新報 2008.1.15]