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同胞による同胞の介護 ホームヘルパー2級への道 −8−

「水平展開」「ヒヤリハット」は記録から

実習を控えての最後の演習

 夏の盛りに始まった研修も季節は移り、虫の鳴く季節を迎え、そして終わろうとしていた。はや3カ月が過ぎていた。

 いよいよの実習を控えて「レクリエーション体験学習」と「訪問介護計画について」学んだ。これが東京中高の一室を借りて行われる「最後の授業」となる。

 レクリエーションとは、心身を豊かに育み、より楽しく生きる喜びに満ちた人生の創造を可能にする諸活動だと講師は説く。ライフステージ別の、すなわち乳幼児期、少年期、青年期、成年期、老年期に即したレクリエーションが必要であり、ただ「遊ぶこと」とは異なる。

 老年期には生きがいの創造として、老化による心身の変化を受容できるかぎり受け止めるようにし、欲求を満たしていく。

 大切なことは「共感の姿勢」。強制ではなく、ともに楽しむことが大事である。

 実際に受講生同士でレクリエーションをやってみた。

 風船と団扇でやるバレーボール、ビー玉を紙の上で転がしながらみんなでつなぐリレなど、椅子に座ったままでできるレクリエーションをやったところ、成年期の受講生たちが必死に団扇を振り回していた。相当なストレスを溜めこんでいるのではないだろうかと思わされる。

 とにかく、老若男女がともに楽しめたということは「成功」と考えて差し支えないだろう。「共感の姿勢」は、自分たちが実際に共に楽しんでこそ生まれるものだということだ。

 「統一的なサービスのためにも、ヘルパー自身の身を守るためにも記録は重要」だと講師は熱弁を奮った。

 記録が基礎の基礎といわれるのは、記録をきちんととらならいでいると、ヘルパーが不利益を被る恐れがあるためだ。

 講師は実際に記録が不十分または記録通りの訪問介護が行われなかったために、事業所が保険料の返還を求められたケースやヘルパーが起訴されるといった事例を挙げた。訪問介護計画に則した介護サービスを行うことが求められる。

 リスクマネジメントとして現場で重要視される「水平展開」(場所Aで起こった事故は、同じような環境のB、Cでも起こりうるということ)、「ヒヤリハット」(事故にはならなかったがヒヤリとしたこと、ハッと気付いたこと)などすべてが記録に由来する。共有することで未然に事故を防ごうという考え方だ。

 (次回は、介護療養型医療施設での第1回実習。実践の場でうまくシーツは敷けるのか)

(鄭尚丘記者)

ワンポイントレッスン 講師からのメッセージ

 ヘルパーの視点から言えば、よき援助者ほど大切なものはありません。よき援助者とはケア・マネジメントの担当者です。現在ヘルパーが足りないとされるひとつの要因として、いわゆる「燃え尽き症候群」が挙げられます。利用者の生活にどっぷりと浸かることは多々あることです。必然的にお互いの依存度は高まります。そこで、介護計画を専門的に看て、スーパービジョンしてくれる人、即ちサービス提供責任者が登場します。(土井義昭・社会福祉士、ケアマネージャー、行政書士)

[朝鮮新報 2008.1.18]