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この「紙」を作るのはあなた

 まさか、祖国の労働者たちの前で「演説」することになろうとは思いもしなかった。「しどろもどろ」、この言葉を自分で自分に使う日が来ることもまた、想像もしないことだった。

 取材の途中、万雷の拍手が響き、筆者が紹介された。伝えたいことの半分も言えなかった。思い出したくもないのに、「懸命に語る姿を見たときに、思わず涙が出そうになったよ。がんばる在日同胞を人民は誇りに感じているんだよ」と、現場スタッフは、ほろ酔いを少し過ぎたあたりで決まって語り出す。

 平壌支局での常駐記者活動の中で、学校、農場、工場、企業など多くの現場をまわり、多くの人たちと出会った。気が付けば、わずか2カ月足らずで3冊目の「取材ノート」がその役目を終わろうとしている。乱筆は誰が新報を作っているのかを静かに物語る。確かに執筆、編成、編集は記者が受け持つ。しかし、本当のところは、書き留められた人々の声が新報を作っているのである。いつ、どんな時でも、同胞社会に必要な喜怒哀楽は同胞たちの中から生まれる。同胞たちの手に新報を届けている各地の活動家も知っているはずだ。そして、同胞を愛する祖国の人々もまた新報を彩るには欠かせない存在であることをあらためて痛感する。

 だから、前述のスタッフに、あなたも新報の大事な作り手の一人だと言った。「ありがとう。みんなで一緒に作ろうな」と彼は笑顔を浮かべ、なみなみと酒を注いでくれた。その酒は記者が買った酒なのだが、まぁこの際、気にはしまい。(丘)

[朝鮮新報 2008.4.14]