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「悲しみの自由の喜び」

 「悲しみの自由の喜び」−4月21日、済州島4.3事件60周年「共に歩もう平和への道」東京公演での在日作家・金石範さんの発言。それは悲しむこと、泣くことを許された時の喜びだという。

 60年前、かいらい政権の無差別虐殺によって、罪のない家族を失った遺族たち。けれども、彼らはその痛みを悲しむことができなかった。その憤りをぶつけることもできなかった。大切な家族を失ったうえ、自由に悲しみ、泣き、語ることすらできなかった半世紀。その苦しみは、想像を絶するだろう。

 ふと、伯母が、故郷の済州道を懐かしむ姿を思い出した。伯母が故郷の話をする時は、いつも村の歌自慢大会などの明るい話題。暗い話をしたことはない。悲惨な過去を思い出したくないのか、幼かったゆえに記憶に残っていないのか、それはわからない。でも、そんな楽しかった村の暮らしが一変したことに違いはないだろう。

 長い間、歴史の闇に葬られてきた4.3事件は、80年以降、真相究明運動が本格化し、99年12月に「4.3特別法」が制定。03年10月には盧武鉉前大統領が済州島に赴き、正式な謝罪を表明した。今では、済州国際空港をはじめ集団殺戮現場での遺骨発掘を国家事業として進めるなどの取り組みが続いている。

 しかし、未だ真実が明らかにされていない部分がある。今、行動できる者が声を上げ、解明しなければならない。祖国解放を迎えた喜びもつかの間、再び生き地獄を見ることになった済州島の人々の「恨」が解き放たれるために。(裕)

[朝鮮新報 2008.5.19]