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〈point de vue 私はこう見る-3-〉 穀物価格の高騰

命で支払われている利益

 穀物価格の高騰が続いている。

 FAO(UN食糧農業機関)の統計によると、昨年の1月から今年の5月にかけて、コメの国際価格は2.95倍、トウモロコシは1.52倍、大豆が1.8倍、小麦は1.71倍に値上がりした。

 穀物価格はなぜ高騰を続けているのだろうか?

 一般的には3つの方向から分析されている。

 第一に、供給面だ。世界の穀物生産地をおそっている干ばつは、穀物供給に著しい障害をもたらしている。小麦輸出の世界シェア2位(16%)のオーストラリアは、今年の小麦生産量が過去5年間の平均を28%下回ると発表した。

 第二に、需要面だ。人口の増加、中国、インドなど新興国の消費増、バイオ燃料のための需要増などがその内容だ。特記すべきは、バイオ燃料の流行が、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)社のような穀物巨大企業に巨額の利益をもたらしているということだ。ADM社は農家から手に入れた穀物をバイオ燃料用として、または食糧・飼料用として販売している。最も儲かるタイミングを見計らいながら最も儲かる対象に販売するのだ。結果、営業利益を昨年度の4600万ドルから今年度は3億6600万ドルまで増やした。つまり、穀物価格の高騰をもたらす事によって利益をあげているのだ。

 第三に、その他の要因だ。原油価格高騰による輸送コストの上昇や、投機マネーの商品市場への流入がこれにあたる。とくにサブプライムローン問題で金融派生商品(デリバティブ)などに投資されていた資金の多くは商品市場へと流れた。米シティーグループのアナリストは今年1〜3月に商品市場への資金流入は700億ドル増加し、価格高騰に寄与したとしている。

 これらのことから穀物価格の高騰は巨大穀物企業と投機マネーに最も利益を与えているといえる。

 一方、穀物価格の高騰は世界に深刻な危機をもたらしている。

 自国民のために輸出規制で穀物を囲い込む「食ナショナリズム」が発生し、危機の度合いをさらに深めている。また、穀物の実勢価格が1%上昇するごとに、現在およそ8億5千万人いるとされる世界の飢餓人口は、1600万人ずつ増えるとも言われている。のみならず、食糧支援も実質目減りしている。食糧の調達が難しくなったエジプト、チュニジア、モーリタニア、フィリピン、インドネシア、メキシコ、ハイチなどの貧困地域では食糧をめぐる暴動が多発している。世界に26億人いるとされる一日2ドル未満の生活費で暮らす人々にとって、穀物価格の高騰は死活問題である。前述の巨大企業と投機マネーの利益は彼らの命で支払われているのだ。

 潘基文国連事務総長は6月にローマで食糧危機サミットを開催すると発表し、参加を呼びかけている。しかし、緊急支援の要請など小手先の対応しかできそうもない。命にかかわる穀物市場への投機マネー規制などの抜本的対応には遠く及ばないだろう。(李俊植、朝鮮大学校経営学部講師)

[朝鮮新報 2008.5.26]