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〈point de vue 私はこう見る-8-〉 再入国許可制度

「制度廃止」から見える日本の孤立

 在日朝鮮人が権利擁護運動の中で改善・廃止を要求してきた再入国許可制度が、外国人登録とともに、いよいよ来年廃止される見通しとなった。日本政府が、09年通常国会まで見直し法案を提出することを閣議決定したからである(「規制改革推進のための3カ年計画」07年6月22日閣議決定)。

 同制度はすでに1998年、国際人権規約の規約人権委員会より、自由権規約第12条第2項、4項(いずれの国からも自由に離れ、自国に戻る権利)に違反するとして、「日本で出生した在日韓国・朝鮮人のような永住者」は除くよう勧告が出されていた。

 にもかかわらず、日本政府が「入国手続きを簡素化し利便性を図る」と奇弁を弄し、改善を頑なに拒んできたため、近年、国際社会からの批判が厳しさを増していた(「法律時報」80巻2号73頁参照)。

 とりわけEUは、日本との規制改革対話の場において、2005年から3年連続で速やかな廃止を強力に求めていた。EU駐日代表部の「日本の規制改革に関するEU提案」を見ると、「他のほとんどの国では見られない特異なもの」(05年)、「なぜ永住資格を持った外国人に適用されるのか」(06年)、「この特異な制度は不必要な負担と、何よりも重複を意味する」(07年)、と新たな批判点を加えながら強く迫る様子がうかがえる。追い詰められ降伏する日本側の姿までも想像するのは筆者の邪推だろうか。

 そもそもこの制度は、「外国人」(=朝鮮人)の祖国往来と日本での活動を取り締まることを目的に導入された極めて人権侵害性の高い制度と言わざるをえない。このことは、導入と立法の経緯、運用実態を見れば明らかである。

 つい最近でも、制度を盾に入管局長通達で、「在日の北朝鮮当局職員」の朝鮮を渡航先とする再入国を原則として認めず、在日朝鮮人一般の数次再入国許可を制限し出入国の権利を侵害したことは記憶に新しい。植民地時代ならばともかく、永住者にまで出入国の許可が要る時代錯誤な制度であると規約人権委員会が勧告を出し、EUも廃止要求する所以である。

 二つの制度に代わる「新たな在留管理制度」として法務省は、「在留カード」制と「適法な在留外国人の台帳制度」の導入を検討している。

 特別永住者を対象外とした「在留カード」制は、中長期滞在者と永住者を対象に常時携帯・提示が義務付けられ、違反すると罰則を科せられる。現行制度の本性的な人権侵害規定はそのまま踏襲される。

 「外国人」(=アジア人)を統治する発想でその在留を律する時代はすでに終わった。過去の清算を再び先送りすれば、孤立は深まるばかりであろう。(任京河、朝鮮大学校経営学部准教授)

[朝鮮新報 2008.6.30]