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〈point de vue 私はこう見る-9-〉 米国の金融危機

投機マネー暴走の規制が必要

 昨今、金融に関する問題が多く取り上げられ注目されている。

 米国のサブプライムローン(信用力の低い借り手を対象とする住宅融資)問題の深刻化、スタグフレーションの危険性、ドル体制の動揺など枚挙にいとまがない。「経済の金融化」や「産業の金融化」というキーワードに象徴されているように、実体経済から独立して一人歩きする金融活動の問題点が表面化している。

 たとえば、サブプライムローンの証券化によって米国の住宅バブルと世界的な金融資産バブルが促進されたが、住宅バブル崩壊を契機として証券化商品価格も下落し、金融危機が進行している(注参照)。

 こうしたなか、今回の金融危機が戦後最悪の危機になるとの指摘が増えつつある。

 この問題に関しては、債務担保証券という証券化商品の不透明性が問題となっている。米国では、サブプライム関連の住宅ローン担保証券と他のリスクの低いローンを混ぜて債務担保証券が作られ、世界各国の投資家に売却される仕組みとなっていた。その過程で、債務担保証券の格付けが嵩上げされ証券が購入しやすくなったので、金融資産バブルが生じた。

 金融資産バブルを支えたのは、新たな運用先を求めて動き回る過剰な投機マネーの流入だった。OECD(経済協力開発機構)によると、07年6月の債務担保証券残高は3兆jに近いと見積もっている。

 このように、証券化商品の再証券化によってリスクがどのくらいあるのか誰もわからない状況となり、結果的にリスク増幅が生じた。マネーゲームを助長する投機資本主義の限界が表面化しているのだ。

 この問題と関連して、「証券化自体が問題なのではなく、金融機関のリスク管理能力を高めることが大切」といったような問題設定は説得的でない。証券化が金融機関のモラル低下や金融資産バブルを促した点を軽視しているからだ。

 金融危機が深化するなかで、FRB(米連邦準備制度理事会)は大量に資金を供給することによって、危機を最小限に防止しようと躍起になっている。6月現在、政策金利(FFレート)は2%にまで低下している(昨年9月から累計3.25%の利下げ)。

 しかしながら、中央銀行の資金供給はあくまでも金融機関の資金繰りを一時的に回復させるだけであって、収益力の回復とは別問題であることに注意する必要がある。

 こうしたことは、低金利下にもかかわらず、米銀の貸出基準が厳格化していることにあらわれている。要するに、中央銀行の資金供給は金融機関の収益力を向上させる「万能薬」ではない。

 金融危機に対応するためには、国内対策だけではなく各国金融当局が国際的な協力体制を構築し、投機マネーの流入を適時適切に規制することが大切だ。原油や食品価格高騰を引き起こしている投機マネーの暴走に歯止めを掛ける必要がある。

 「規制の民営化」ではなく、金融当局による「直接的規制」の強化が必要だといえる。弱肉強食の市場原理主義的な思考からの脱却が求められている。(卞栄成、朝鮮大学校経営学部准教授)

 【注】住宅ローンの証券化とは、多くの住宅ローンを集めてきて、これを担保に特別目的会社が証券を発行することをいう。金融機関はローン債権のリスクを減らすために、自らが設立した特別目的会社にローンを売却する仕組みとなっている。

[朝鮮新報 2008.7.7]