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〈point de vue 私はこう見る-11-〉 成人識別たばこ自動販売

「タスポ」導入、何が変わるの?

 成人識別ICカード「taspo(タスポ)」導入、価格引き上げの議論、喫煙エリア制限など、喫煙者の一人として非常に肩身の狭い思いをしている。

 7月1日より関東地方・沖縄県など1都8県のたばこ自動販売機に成人識別が導入され、全国のICカード方式の自動販売機でたばこを購入する際にはタスポが必要になった。

 タスポ導入は未成年者の喫煙防止を目的としており、自動販売機でたばこを購入するときタスポをタッチして、成人であることを確認できなければ購入できなくなった。

 07年「全国たばこ喫煙者率調査」(日本たばこ産業株式会社=以下、JT)によると、成人の喫煙者率は男女計で26.0%(男=40.2%、女=12.7%)で2700万人、男性は1965年以降のピーク時の83.7%と比較するとマイナス43.5ポイントで喫煙者は減少傾向にあり、女性は横ばい状況だ。

 未成年者の喫煙の動機は「好奇心」や「何となく」が多く、たばこは自動販売機や小売店で容易に入手でき、未成年の喫煙行動は友人、親、兄姉などの喫煙と密接な関係があるとされている。

 未成年者の喫煙状況は、厚生労働省の調査によると、男子高校3年生の喫煙経験率は1996年=55.6%、2000年=55.7%、2006年=40.2%であり、最近は減少している。

 未成年者の喫煙経験率の減少は、未成年者を取り巻く喫煙環境の変化、つまり、成人の喫煙率の減少、禁煙ブームと密接に関係している。

 未成年者でも容易にたばこを入手できるという自動販売機の普及台数はJTによると1995年=49万8800台、2000年=62万5900台、2005年=61万6200台であり、青少年のたばこの入手先の第1位は自動販売機で、約7割が利用している。

 消費行動プロセスは「認知段階」→「感情段階」→「行動段階」の3つの段階に分けられる。未成年者の喫煙動機である「好奇心」や「何となく」は、興味や関心を抱き、欲求し、記憶する「感情段階」に関する問題である。タスポの導入は、未成年者にもたばこに対する興味や関心を抱く要因になる可能性がある。

 タスポの発行によって、自動販売機による未成年者のたばこ購入が不可能になったわけではない。

 タスポには「譲渡、貸与を禁止します」と表記されているが、父母が未成年者の子どもに貸与したという事件が発生しているように、成人からタスポを借りうけて、たばこを購入することは可能である。

 最後に、タスポの導入は、社団法人日本たばこ協会、全国たばこ販売協同組合連合会、日本自動販売機工業会の3団体が主体となって推進しているが、本気で「未成年者の喫煙防止」に取り組んでいるのかを疑いたくなると同時に、本音は別なものにあると思う。(李平太、朝鮮大学校准教授)

 ※本連載は今号で終わります。朝鮮大学校経営学部創設25周年(1982年4月)を記念して企画されたものでした。

[朝鮮新報 2008.7.22]