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置き去りにされた在朝被爆者

 先日、友人と井上ひさし作の演劇「父と暮せば」を観劇した。

 原爆投下から3年後の広島が舞台。愛する者たちを原爆で失い一人だけ生き残った負い目から、幸せになることを拒否してきた主人公の葛藤に胸が締め付けられた。

 1945年8月、広島、長崎に原爆が投下されてから今年で63年。当時の惨禍はいうに及ばない。あの夏、被爆したのは日本人だけではなかった。そこには強制連行などで渡日を余儀なくされた朝鮮人もいた。広島で約5万人、長崎で約2万人とされている。

 先日、朝鮮在住被爆者の実態調査のために在朝鮮被爆者支援連絡会の代表らが訪朝した。向井高志会長は、在朝被爆者への救済が実現されていない現実について「日本の過去清算で決して忘れてはいけない課題」だと指摘する。

 2007年末の時点で、朝鮮国内で確認された被爆者は1911人。80%が死亡し、約20%にあたる382人が生存しているというが、明日の命をつないでいくことさえ困難な状況にある。

 「被爆者は被爆者」。当然、治療を受け補償されるべき権利がある。植民地支配、被爆、援護からの切り捨てという3重苦のまま「置き去り」にされている在朝被爆者は今も夜も眠れぬ痛み、苦しみにもだえているという。

 国交なきことは理由にならない。

 現在、在朝被爆者の半数以上が71歳以上の高齢者だ。日本政府が故意に「置き去り」にしている過去。見過ごすことはできない。(陽)

[朝鮮新報 2008.7.22]