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08「在日朝鮮人歴史・人権週間」全国集会・埼玉、関東大震災朝鮮人虐殺をテーマに

日本政府の責任追及 歴史的事実、国際人権基準から

 関東大震災朝鮮人虐殺をテーマにした2008「在日朝鮮人歴史・人権週間」全国集会(8月30日、埼玉)では、シンポジウム「今問われる真実と責任、そして現在」が行われた。シンポジウムでは公文書や証言で明らかになった歴史的事実と国際的な人権基準に基づいて日本政府の責任が厳しく追及された。主な発言内容を紹介する。

−主な発言内容

「日本人を怒らせるな」

尹峰雪さん

 千葉県在住の尹峰雪さん(66)は、1999年に日本弁護士連合会に人権救済を申し立てた母親の故・文戊仙さんの体験談を代弁した。

 尹さんによると、文さんは地震発生後、「朝鮮人が火をつけた」といったデマが流れた時、幼い妹と弟を抱え家にいたが、そこにカマやとびくちを持った日本人が押し入ってきた。その時、日本人の大家が無実を保証し一命を取り留めた。

 しかし、無実を訴えに外に出て殺害された父の友人の生首を、日本人の一団が竹やりに刺して目の前を練り歩いた凄惨な光景を目の当たりにした。

 あまりに衝撃的な内容だったので家族にも話さず数十年間、「封印していた」が、証言者がほとんどいなくなった99年、同胞の無念を晴らしたいと人権救済申し立ての際、弁護士に心を開き「封印を解いた」。

 尹さんは「母は夏の夕焼けのたびに震災当時を思い出し、『日本人を怒らせるな。殺される』と言って震えていた。ただ、虐殺したのは日本人だが、助けてくれたのも日本人だと言って、みんなが仲良く暮らせるはずだと願っていた。日本政府は真相を解明し、謝罪し、二度とこうしたことが起きないよう務めてほしい」と語った。

 また、事件から85年が過ぎた今も、情況は変わっていないと指摘した尹さんは、在日朝鮮人に対する人権侵害や政治弾圧、朝鮮学校に対する差別、子どもたちへの嫌がらせの問題を挙げ、「拉致問題での怒りの矛先が在日朝鮮人に向けられている。拉致は日本人にとってとてもつらいことだ。だが、85年前に母が体験したことはどうなのか、一度考えてほしい」と述べ、日本政府に対し謝罪と真相解明を求めた。

虐殺実行、煽動、隠ぺい

石田貞さん

 埼玉県朝鮮人強制連行真相調査団の石田貞・日本人側団長は、内務省から得た情報をもとに埼玉県が「不逞鮮人の暴動などに警戒し対処するように」との趣旨の内容を市町村に伝えていたことを県の移牒文を示して説明した。そして、それにより自警団が組織され、殺害に至った経緯を解説した。

 また、群馬県方面に避難する朝鮮人たちが本庄、熊谷、神保原などで自警団や群集に襲われ殺害された事実や県内の犠牲者の数について言及した。

 そのうえで、「政府の責任を問うとともに、虐殺に走った民衆の意識についても問うていかなければならない」と指摘した。

 立教大学の山田昭次名誉教授は、日本当局が朝鮮人虐殺の証拠隠滅を図った事実を公文書などから指摘した。

 それらによると、当時、日本の警察も「朝鮮人が暴動を起こした」と伝えられた内容がデマであると認識していたが、朝鮮人虐殺事件が起こったので、「(朝鮮人の暴動を)肯定に努むる」として「朝鮮人の暴動に対する自衛のために殺害した」という暴論を立て取り繕ったということが明らかだ。

山田昭次さん

 また山田教授は、自警団による朝鮮人虐殺事件の判決38件から、被告が実刑を受けた「実刑率」を算出した。

 それによると、日本人殺害(59.3%)や「警察を襲撃しての朝鮮人殺害」(47.1%)と比べ朝鮮人殺害(16.5%)の実刑率が極端に低いことを指摘した。

 さらに、軍人が銃で朝鮮人を射殺した事件などはさらに形式的な裁判で終わっていると指摘した。

「日本最初のジェノサイド」

梓澤和幸さん

 日弁連人権擁護委員会で同事件の調査委員長を務めた梓澤和幸弁護士は、2003年日弁連勧告について解説。この調査で、軍隊が朝鮮人を並べて機関銃で銃殺した事件など「軍隊による虐殺」と「虚偽事実の伝達など国の行為に誘発された自警団による虐殺」、つまり「国が(虐殺を)自らやり、やらせた」ことが徹底した調査で明らかになった。

 梓澤弁護士は、「自分の足で現地まで行き徹底した調査で事実を一つずつ明らかにした。そして日本の責任を明らかにした。それまでの事件像を根底から覆し、多数派が無視できない国民の事実認識へのきっかけとなった」とその意義を強調。「無念の思いで亡くなった人や遺族の思いを忘れてはいけない。生き方の問題として(事件について)考えていかなければならない」と述べた。

前田朗さん

 東京造形大学の前田朗教授は、ジェノサイド(集団虐殺・集団破壊)の国際的定義について解説。2000年4月、石原慎太郎東京都知事の「三国人」発言を引き合いに出し、人種差別が公然と行われている事実を挙げ、国連などの勧告にもかかわらず人種差別を取り締る法整備をしない日本政府の対応を批判した。

 「石原発言」は、人種差別を扇動する発言でありEUでは禁固刑の対象となるという。そして国際的定義ではジェノサイドの教唆の「一歩手前」までいっている重大な発言だという。

 前田教授は「アルメニア人は自分の民族が虐殺を受けたことを90年経っても忘れていない。関東大震災のジェノサイド問題も終わっていない。国際的な真相解明と責任追及がなされるべきだ」と述べた。(取材班)

[朝鮮新報 2008.9.8]