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08「在日朝鮮人歴史・人権週間」 関東大震災時の朝鮮人虐殺85年関西集会

「国家、民衆の責任は終わっていない」

山田昭次立教大学名誉教授が朝鮮人虐殺の歴史的意味と国家責任について講演した

 関東大震災(1923年9月1日)時の朝鮮人虐殺85年2008「在日朝鮮人歴史・人権週間」関西集会が1日、大阪北区民センター(大阪市北区)で行われた。「在日朝鮮人歴史・人権週間」関西実行委員会による主催で、「在日朝鮮人歴史・人権週間」全国実行委員会、朝鮮人強制連行真相調査団が後援した。

 日本弁護士連合会は、関東大震災時の朝鮮人虐殺について「虚偽事実の伝達など国の行為に誘発された自警団による虐殺」だとして、日本政府に「責任を認めて謝罪すべきである」と勧告(2003年8月)したが、いまだに「責任も謝罪」も行われてない。

 集会には、日本と北南朝鮮、在日との真の和解と新たな未来に向けて、事件を歴史的な事実に基づき、人権の視点で全面的に検証するという趣旨に賛同した総連の各団体代表、在日同胞、日本の各市民団体、宗教団体の関係者ら210人が参加した。

 集会に先立ち、フォト・ジャーナリストの「昭写真展が開かれ、劇団「タルオルム」のマダン劇「記憶」が上演された。

 朝鮮人虐殺を扱ったマダン劇は被害者と加害者を交互に対照的に描きながら、事件の凄惨さを浮き彫りにした。「直接体験したことではないが、当時のことを深く考えるきっかけになった。心が痛い」と観覧者たちは怒りと悔しさを口にしていた。

マダン劇は事件の凄惨さを浮き彫りにした

 集会では、日朝市民連帯・大阪の有元幹明共同代表、大阪府朝鮮人強制連行真相調査団の金由光団長の挨拶に続いて、山田昭次立教大名誉教授が「関東大震災時の朝鮮人虐殺の歴史的意味と国家責任・再論」と題し講演した。

 山田名誉教授は@9月1日夕方からの警察の行動、A戒厳令が布告された9月2日の内務省が行った朝鮮人暴動流言の公認と全国への伝達措置、B在日朝鮮人運動の高揚に伴う日朝社会主義者・労働者の連帯志向に対する警視庁の大弾圧、C「愛国心」で奮い立った自警団大衆の前に孤立し、窮地に追い込まれた少数派の日本人社会主義者、D虐殺の国家責任に対する官憲の徹底した隠ぺい政策−について語った。

 そして、官憲が朝鮮人暴動流言を発した遠因として、3.1運動とその後の民族解放運動の高まりがあり、近因としては3.1運動以降の在日朝鮮人運動があったと指摘。とくに警視庁が警戒した朝鮮人社会主義者・労働者と日本人社会主義者・労働者との間に生まれていた連帯志向について詳しく解説した。

 また、虐殺は一部で言われているような9月3日からではなく、1日から始まっていたと強調し、それも偶然ではなく計画的なものであったと、当時の資料や新聞を用いて歴史的背景を分析した。

 一方で朝鮮人・日本人虐殺、警察襲撃事件の第一審判決の実刑率が朝鮮人虐殺に限り明らかに低かった点に触れ、「朝鮮人は命の価値まで差別された」と指摘した。そして、朝鮮人追悼碑には「誰が殺したのか」が書かれていないと語り、国家責任を追及して明らかにしなければ「民衆の責任もまた終わらないだろう」と結んだ。

 集会では「在日朝鮮人の歴史と人権は分離できないことを再度確認し、関東大震災時の朝鮮人虐殺85年を契機にさらに力強く『在日朝鮮人歴史・人権』運動を推し進めること」を宣言するアピールが採択された。

 奈良県調査団の藤原好雄日本人側代表が閉会の挨拶をした。

 参加者たちは「歴史にウソはつけない。今日学んだことを広く伝えていきたい」(大阪朝高生徒)、「歴史を正確に学べば人生に誤りがなくなると思う。隣人に脅威を与える社会から一日も早く脱却したい」(集会事務局)などの感想を残した。(鄭尚丘記者)

[朝鮮新報 2008.10.6]