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〈論考E〉 強制連行犠牲者の遺骨問題

日本政府の不誠実さ浮き彫り

 60年間放置されてきた朝鮮人強制連行犠牲者の遺骨調査に日本政府が取り組み始めてすでに3年が経つ。この調査は2004年12月、南朝鮮と日本の首脳会談(鹿児島・指宿)で盧大統領の要請を小泉首相が受ける形で進められた。調査が非公開でおこなわれてきたため、いまだに進捗状況がまったく分からない。

 強制連行犠牲者の遺骨問題は、加害者である日本政府と関連企業が、今まで放置し続けてきた強制連行犠牲者の遺骨を誠意をもって探し出し、礼を尽くして遺族のもとへ、あるいは故郷へ奉還して、はじめて解決をみることができる。

 この間、日本が実施した調査は、@強制連行関連企業125社と、全国の寺院、自治体への「情報提供依頼」に基づいた実態調査、A遺骨を確認する実地調査(73回)である。

 3年間のこれらの調査で日本政府が得た結果は、寺院、納骨堂など281施設からもたらされた2346体の遺骨と粉骨、合葬され数の確定できない遺骨(08年8月現在)のみである。情報の提供元のほとんどは仏教団体や個別寺院で、強制連行企業からの情報はたったの8社にすぎない。遺骨数に関しても、朝鮮人強制連行真相調査団(以下、調査団)が推計した強制連行死亡者総数6万〜10万人と比較すると、わずか4%にも満たない。

 調査の至る所に日本政府の不誠実さが見て取れる。調査団は当時の強制連行関連企業を約1500社以上と推定しているが、日本政府は125社にまで絞り込んだ根拠を明確に示していない。ただ、「60年の間に吸収・合併、廃業したため」と説明するだけだ。

 寺院についても、すべてに調査依頼を出した訳ではないので、調査から漏れている遺骨が相当数あるとみられる。先月も長野県大町市にある長性院からの連絡で遺骨3体が確認された。

 また、寺院や納骨堂に保管されている遺骨のみを調査対象にしているため、鉱山、炭鉱、飛行場、海底などに埋葬、水没した遺骨や遺体については調査対象から外されている。

 さらに、「情報提供依頼書」に「別紙」として添付された612社の強制連行「事業所一覧表」にも重大な欠陥があった。一覧表には都道府県名と所在地そして鉱業系、造船系など業種だけが明記され、事業所名は削除されていた。本来、企業名と所在地を手がかりに所在地周辺の調査を行うにもかかわらず、これではほとんど調査の役に立たない。事業所名を公にすることによって、企業の利益を害するおそれがあるからというのが理由だ。

問題解決に向けて

 このように、日本の遺骨調査からは、加害者としての真剣さと内省が感じられない。むしろこの問題を速やかに葬り去りたいという意図さえ伺える。犠牲者やその遺族、そして「民族の苦痛=恨」を理解し共感共苦するという想像力が欠如している限り、いくら謝罪しようとも問題解決には至らない。

 遺骨問題を解決しようとするならば、誠実さを持って、@徹底的な遺骨実態調査(遺骨の確認、連行及び死亡の過程と原因の究明、未発掘遺骨の調査、犠牲者に係わる関連資料の調査)→A遺族の調査と確認→B謝罪と賠償→C遺族の意思を尊重した遺骨奉還→D追悼碑建立や白書発刊を通じた歴史の記録と教育啓蒙などを実行していかなければならない。

 これを実行させるために、私たちが市民レベルでやるべきことは、遺骨調査を地道に、そして着実に行い、事実を積み上げ、それをもって世論を喚起し、日本政府を追及していくことである。また、北南と在日同胞そして日本市民が強固に手を取り合うことで連帯力を育み、この問題に立ち向かわなければならない。(金哲秀、朝鮮大学校政治経済学部准教授)

[朝鮮新報 2008.11.4]