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山口・下関市教育長の妄言 在日同胞、日本市民ら連日抗議

「植民地支配は事実に反する」 暴言撤回し謝罪せよ

下関市教育長の発言撤回と謝罪を求める山口の同胞ら

 山口県下関市の嶋倉剛教育長が「植民地支配は事実に反する」「(日朝)併合は対等で行われた」などと妄言を繰り返した問題で、県下の同胞と各界各層の日本人士らは、嶋倉教育長と江島潔市長に対し発言の撤回と謝罪を求め、連日申し入れと抗議を行っている。

 山口朝鮮学園の代表と保護者、県下の同胞ら約70人は3日、下関市役所を訪れ、嶋倉教育長あての「発言の撤回、謝罪の申し入れ」書を提出。嶋倉教育長との面会を繰り返し求めたが、応対した石津幸紀夫・教育政策課長は「その旨を伝える」との返答に終始した。

 梁益善さん(80)は「私は植民地支配によって、日本への渡航を余儀なくされた当事者だ。市内の学校教科書にも記述がある。教育のトップが歴史をわい曲するのは許せない」と強く抗議した。

 一行は江島市長に対し、教育長が発言を撤回し謝罪するよう指導することを求める申し入れを行ったが、市長は最後まで面会に応じなかった。

日本各界が声明、決議

下関市教育長妄言問題の経過

●6月26日

 山口朝鮮学園・保護者団体側 朝鮮学校は他の外国人学校とともに処遇改善を求めている。ただ、インターナショナルスク―ルなどとは歴史的背景が違い、植民地支配で渡航した人たちの子弟が通っていることをふまえて対処してほしい。

 嶋倉剛教育長 植民地支配という部分については事実に反するので受け入れられない。

 学園側 平壌宣言や村山首相談話でも植民地支配を謝罪し認めている。事実を認めてほしい。

 教育長 植民地支配だと事実関係を変えて語ったのでは全然、事実関係は進まない。

●6月27日

 教育長 (日朝)併合は対等に行われた。そもそも歴史認識を補助金の場で持ち出すのはルール違反。席をけらなければいけなかった。(日朝)併合の部分をどのように表現するかは自由だ。

 渡海紀三朗文部科学大臣 わが国の植民地支配によって多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大な損害と苦痛を与えたという認識を政府は表明しており、私の認識も同じ。もしもそれに反する発言ということであれば、大変遺憾だ。

 教育長 政府見解を尊重する。

●6月30日

 江島潔市長 慎重な発言を求める。学校の補助金を求める際に、過去の問題を持ち出すのは筋違いだという教育長の考えには一定の理解ができる。(発言の撤回や謝罪は)求めない。一部のマスコミが取り上げて火に油を注いでいるとしか思えない。

 朝鮮女性と連帯する日本婦人連絡会は6月30日、嶋倉教育長の発言に抗議し撤回と謝罪を求める要望書を提出。「朝鮮半島において日本が朝鮮総督府を置き、厳しい統治を36年間にわたって行ったことは歴史的事実。朝鮮の人々に創氏改名や神社参拝の強制など耐えがたい苦痛をもたらした」と強調し、こうした認識から1995年に村山首相談話が発表され、歴代総理がこれを踏襲、日朝平壌宣言に明記されたと指摘した。

 「フォーラム平和・人権・環境」も抗議声明を発表、下関市長と教育行政の監督権者である文部科学省に対し、「自らの責任で、山口朝鮮学園、在日韓国朝鮮人ならびに大韓民国・朝鮮民主主義人民共和国に対して、この発言の訂正・謝罪を行うとともに、嶋倉剛下関教育長を解任するよう」求めた。

 日本共産党市議団は7月1日、市長に対し教育長を罷免するよう求めた。民主党山口県連も6月29日の県定期大会で撤回と謝罪を求める決議をした。

 日本教職員組合中央執行委員会は、地方組合あてに問題を通知し協力を要請した。また、山口県教職員組合、山口県退職教職員協議会、日朝友好連帯の会、堀内隆治・前下関市立大学学長をはじめとした有志らが、それぞれ発言の撤回と謝罪を求める申し入れを行った。(金静媛、山口県朝鮮人強制連行真相調査団朝鮮人側事務局長)

教育助成は行政の義務 当局者の稚拙な認識

 朝鮮学校は日本政府から予備校や自動車学校と同じ「各種学校」として扱われており、国庫からの補助はなく各自治体からの独自の助成だけを受給している。

 山口県は一人あたり年5万円を補助している。私立学校の5分の1以下と少額ながら、保護者らの要請を受け入れ今年度から一人あたり1万円増額した。しかし、下関市は山口朝鮮初中級学校に年20万円と生徒1人あたりわずか1000円しか支給していない。

 学園側は今回、県の半額まで増額するよう求めたにすぎないが、嶋倉教育長は市の財政難、国の制度と公教育のルール、1965年文部事務次官通達などを理由に突っぱねた。問題の発言はこうしたやり取りのなかで発せられた。

 県弁護士会は06年4月6日、朝鮮学校への補助金を私立学校または公立学校に準じて増額するよう県と各市に勧告した。だが、嶋倉教育長はこれについて「市の財政を知らずにだしている」と非難した。

 嶋倉教育長はしきりに「財政難」を口にしたが、ちなみに毎日新聞によると、下関市は6月30日、「夏のボーナス」として職員3279人に対し総額25億7717万6467円を支給(1人平均77万9186円)。前年に比べ0.99%増えた。特別職に、市長267万1590円、副市長216万9135円、教育長182万5995円などが支給された。

時代に逆行

 在日朝鮮人にとって下関は「渡日の玄関口」として特別な意味を持つ。1948年教育闘争では、学校閉鎖に反対する同胞集会が全国で最初に開かれた。近年も民族教育の権利拡充運動が活発に展開されている。それだけに、今回の教育長の発言に対する怒りは強い。

 教育助成金については、国連人権理事会、諸条約委員会、日本の弁護士連合会などが再三、是正を勧告している。

 嶋倉教育長が取り上げた1965年文部事務次官通達は、効力を失っていることが2000年8月の国会答弁で明らかにされている。民族教育の権利は「特権」ではなく「当然の権利」として認められ、外国人学校支援、処遇改善の声は市民だけでなく国会議員の間でも広がっている。

 今回の問題は、こうした流れを受け入れず、時代に逆行し国粋主義を通そうとする考えを持った官僚、公務員が今も根深く存在していることを示している。

 下関市では予算削減、公立小・中学校や保育園の統廃合など教育行政が問題となっている。こうしたなか、市側の働きかけで文部科学省現役課長だった嶋倉氏を、5月に教育長として迎え入れた。

 事態の深刻さを飲み込めない江島市長は、発言の撤回や謝罪を求めないとする一方で、「一部のマスコミが火に油を注いでいる」と教育長を擁護。同胞や市民の感情を逆なでした。(泰)

[朝鮮新報 2008.7.7]