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〈教室で〉 東京第6初級 1年担任 李洙連先生

ノートに咲いた「はなまる」畑、「子どもは褒めて伸ばしていく」

先生の褒め言葉ににっこり

 東京朝鮮第6初級学校(東京都大田区)1年生の教室には、担任の李洙連先生(58)の後に続いて朝鮮語を学ぶ児童たちの声が響いていた。

 「35 誕生日プレゼントをもらいます」

 李先生が題目を読み上げると、子どもたちは「35! 誕生日プレゼントをもらいます!」と声を合わせる。

 男子5人、女子3人。李先生が、この日新しく学ぶ「パッチム『ㄷ』」を「가나다라(カナタラ)」につけて、一文字ずつ正しく発音するよう指示すると、子どもたちは順番に席に立って、自信たっぷりに発表した。

 「갇(カッ)! 낟(ナッ)! 닫(タッ)! 랃(ラッ)! 맏(マッ)! 받(パッ)! 삳(サッ)! 앋(アッ)! 잗(チャッ)! 찯(チャッ)! 칻(カッ)! 탇(タッ)! 팓(パッ)! 핟(ハッ)!」

集中力と忍耐力

一文字一文字正確に発音する

 ノートには、先ほど発音した文字がマスごとにきちんと書かれている。児童の隣に寄り添って、低い机の脇に膝を折ってノートの中を眺めた李先生は、「きれいによく書けましたね」と言って、よく書けた文字の一つひとつに「はなまる」をつけた。ノートが赤い「はなまる」畑になった児童の顔には、文字通り、満面の笑みが浮かんだ。

 李先生の話によると、初級部1年生は文字を学ぶ基礎段階。だから、褒めながら字をきちんと書くよう指導するのが肝心だと言う。

 子どもたちのノートをのぞいて見ると、初めに先生が書いた点線の上を子どもたちがなぞり、次に先生がつけてくれた文字の 「ポイント(点)」を子どもたちが字を書く時に必ず通るよう指導していた。

 「字をきれいに書くためには、集中力と忍耐力が必要。幼い児童が机に向って姿勢を正し、鉛筆をしっかり握って、きれいな字を書いた時は、子どもたちを心から褒めてやることが大切。こうしたていねいな訓練を繰り返したすえに、子どもたちは先生の手助けがなくても、先生と同じ字を書けるようになる」

誕生日を知ってますか

にぎやかな授業風景

 この日の授業では、日にちの発音練習も行われた。「みなさん、自分の誕生日を知っていますか?」と李先生が問いかけると、子どもたちはいっせいに「はい!」と答える。

 韶華さんの誕生日は5月22日、暢訓くんの誕生日は12月20日、夏寿さんの誕生日は8月25日、鎔★くんの誕生日は12月1日。児童らは、朝鮮語で「○月○日です!」と的確に答えていく。鎔★くんは「1日」という部分を、朝鮮語固有の言い方「段馬欠」に直して言った。こうして一人ずつ順に答えた子どもたちは、まだ答え足りないのか、「先生、弟(妹)の誕生日は○月○日です!」「わたしはお兄ちゃんの誕生日を知っています!」とわれよわれよと李先生を呼んだ。

 活気あふれる児童たちの姿に微笑みながら、李先生が「弟(妹)、お兄さん、お父さん、お母さんの誕生日をみんな言えますか?」と聞くと、子どもたちは「はい!!」と元気に手を上げた。

教え子たちの支持

 李先生は今年、教員生活39年目を迎えた。広島県で生まれ育った李先生は、幼い頃、近くに朝鮮学校がなかったため、日本の学校に通った。民族差別がひどかった時代、学校では朝鮮の子どもたちを目がけて石を投げつけるなど、露骨ないじめも多かった。山を越えて「午後夜間学校」に通い、初めて朝鮮の言葉と文字を学び、歌を習った。次第に胸の中に朝鮮人としての誇りが膨らんでいった。高級部から広島朝高に編入。その後、組織の要求に沿って、高3の時に東京中高で1年間の「教員養成」クラスに入った。「同胞が暮らす町、民族のにおいがする生活環境の中に身を置けたことがどれほどうれしかったか、寮生活をしながらも本当に楽しかった」と当時を振り返る。

 「今、朝鮮学校を守り、子どもたちをわが校に通わせている保護者たちも、大部分は民族教育を受けて、自分の子どもを朝鮮人に育てようという強い意志を持った人たちだ。これから育ち行く子どもたちが、国際社会で働くようになっても、朝鮮の言葉を知り、自分のアイデンティティをしっかりもつことは大切。そういう意味で、今後も民族教育が必要だという真理には変わりがない」

 李先生は、朝鮮学校で学ぶ子どもたちを、すべての面で日本の学校に通う子どもたちに引けを取らぬよう育てたいと考えている。そういう李先生の教え子たちの中には、自分の子を李先生に学ばせたいと願う者も少なくない。

 一昨年の春、脳梗塞で倒れ、一時休職していた李先生に「自分の子どもをどうしても受け持ってほしい」と強く願う教え子たちの熱意に押されて、李先生は昨年春に再び教室に戻ってきた。

 冷めやらぬ教育的熱意と豊富な実績を持つベテラン教師。その存在が、民族教育において何より貴重な財産だということを、保護者たちは誰よりもよくわかっているような気がした。(文=金潤順記者、写真=盧琴順記者)

★=王へんに基

※1949年生まれ。広島朝鮮初中高級学校(高級部)を経て教員養成クラス修了。京都第2初中(当時)、東京第7初中(当時)、東京第6初級で教べんをとる。教員生活39年目。模範教授者、初1日本語教科書編さん委員、初1国語課題帳製作メンバー、東京第6初級1年担任。

[朝鮮新報 2008.2.22]