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〈子どもたちに「世界」の料理を〉 群馬県青商会メンバー アボジたち、学校給食に腕をふるう!

初回はメキシコのタコスとイタリアのミネストローネ

 群馬朝鮮初中級学校では現在、月2回の給食が実施されている。1回は女性同盟による朝鮮料理、もう1回はオモニ(母)会によるカレーライスである。そんな中、3月8日に全国でも珍しい群馬県青商会メンバーによる「アボジ(父)給食」が実施され、大いに盛り上がった。

食堂前に生徒たちの人だかり

「アボジ給食」成功に笑みがこぼれる参加者たち

 女性立ち入り禁止となった食堂の厨房には、赤いバンダナに黒のエプロン姿の男たち。活気あふれる厨房。初めての「アボジ給食」を成功させるため、包丁やフライパンを手に奮闘するアボジたちの姿があった。

 昨年暮れに行われた青商会と教員たちの交流の場で、生徒たちがオモニたちによる給食をとても喜んでいるという話が出た。生徒たちが喜んでいるなら「青商会も給食サービスを」と、この場で「アボジ給食」が決まった。

肉をゆでるのも慎重に

 安重根校長は「交流会などで、いつも青商会のトンム(人)たちの学校への愛情を感じる。ビール片手に思いついた提案を実行に移すところが青商会らしい」と「アボジ給食」企画を手放しで喜んだ。

 提案者は県青商会会長の千尚二さん。現在、同校に娘が通う弟の千容植さん(西毛地域青商会会長)を責任者として選び、幹事会で「アボジ給食」を行うことを決定した。

 幹事会では「アボジ給食」のメニューについても白熱の議論が交わされた。その結果、子どもたちが普段食べなれない、世界の代表的な料理を体験させ、「食」に対する興味を引き出そうということになった。

タコスを頬張りながら記念に一枚

手探りで懸命に調理するアボジたち

 記念すべきデビュー作としてメキシコ、イタリアの代表的な料理として知られるタコスと、野菜を摂取できるミネストローネに白羽の矢が立った。

 この日、参加したのは11人。そのうち3人の子どもが同校に通い、他の8人の子どもたちも今後同校への入学を控えているという。

 アボジたちは午前9時に学校に集合し、女性陣の手をいっさい借りず、生徒と教員計57人分の調理に入った。

 前日に5時間かけて煮込んだミネストローネの仕上げやタコスのソース作りと野菜の盛り付けなど、試行錯誤しながらお互いに味見をしたり…。

 開始前の食堂の外には初めての「アボジ給食」が気になってか、アボジたちにプレッシャーをかけるかのように大勢の生徒が集まり窓から中をのぞいていた。

具を載せすぎて口に入らない子も

好みの具を盛り付ける

 11時45分、「アボジ給食」が開始。テーブルに色鮮やかに並べられた初めてのバイキング形式の料理。品書きまで添えられていて、生徒たちは思わずいっせいに歓声をあげた。

 席についた生徒たちはまず、千さんから「今日の献立」について説明を聞いた。

 タコスは、トウモロコシをすり潰して作ったトルティーヤという薄焼きのパンにアボジ特製の四種類のソースを好みで選び、肉、野菜を載せて巻いて食べる。ミネストローネは、イタリア語で「具沢山」「ごちゃ混ぜ」などの意味を表しているなど、デザートのアイスのライチ、カシスにまつわるエピソードなどをユーモラスに語った。

 生徒代表がアボジたちにお礼のあいさつをして昼食がスタートした。

 生徒たちは、われ先にとトルティーヤに好きな具をどんどん載せて小さな口に運んだ。中には具を載せすぎてトルティーヤを巻ききれなかった生徒も。

 普段は苦手な野菜を包んだり辛いソースに挑戦したりと、自己流のタコス作りに食堂は大いに賑わった。

生徒たちのためなら何でもしたい

巻いたり、食べたり、大忙しの子どもたち

 千さんは「生徒たちが一つも残さず平らげてくれたのがとてもうれしい。スープを5時間かけて仕込んだ甲斐があった。人数の少ない学校ではあるがその分できることがいっぱい。積極的に学校に関わっていきたい」と感想を述べ、「世界各国の料理を全部作るのが目標」と張り切っていた。

 金崇浩さん(中2)は「アボジたちによる給食と聞いて初めはどんな物に仕上がるのか不安だったが、見た目もキレイで食べごたえがあってとてもおいしかった」と笑顔で語った。

 金美玖さん(小3)は「初めて食べた料理ばかり。自分で包むのが楽しくてとてもおいしかった。次は中華が食べたいな」とちゃっかりリクエストも。

 朴龍洙さん(30)は「普段はいっさい料理をしないが、生徒たちの喜ぶ姿を想像して作業に取りかかった。料理には不慣れなメンバーで手探りでの作業だったが、生徒たちの喜ぶ姿を見てこんなにうれしいことはない。生徒たちのためなら何でもしてあげたい」と破顔一笑した。

料理完成! あとは子どもたちの評価…

 安校長は「常に物心両面で学校を支えてくれているアボジたちに感謝したい。学校のためならと、忙しい仕事の合間に、新たに一役買ってくれたことに感動している。その懸命な姿に直接触れることで、生徒たちはアボジ、オモニの深い愛情を実感すると思う」と感想を述べた。

 また、「給食作りに参加したメンバーはほとんどがこの学校の卒業生。今、こうして親になり学校のために尽力する姿に目頭が熱くなる。同胞の力と心があってこそ学校は守られていく。これからも学校を中心に地域を活性化させていってほしい」と語った。(文と写真=盧琴順記者)

[朝鮮新報 2008.4.4]