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朝鮮学校生徒に朝鮮奨学会への応募資格を 神奈川中高・高級部オモニ会 孔連順さんの手記

オモニたちは決してあきらめない

 神奈川朝鮮中高級学校保護者の孔連順さんらは今年3月、財団法人朝鮮奨学会を訪ね、民族学校に通う生徒らにも朝鮮奨学会の奨学金応募資格を認めるよう要望し、これに賛同する署名用紙を渡した。この問題と関連し、孔さんが本紙に寄せた手記を以下に紹介する。

 3月12日、私たち神奈川朝鮮中高級学校高級部オモニ会役員の3人は横浜で合流し、東京・新宿にある財団法人朝鮮奨学会本部へと向かっていた。

 (今度こそ、進展がありますように)

 祈るような気持ちで私は手提げカバンを持つ手に力を入れた。カバンには、朝鮮奨学会が民族学校生にも分け隔てなく奨学金適用資格を与えてほしいとの趣旨の1万110人分の署名用紙が入っていた。

集められた賛同の署名

 脳裏には、この同じ道をたどった昨年のあの日のことが鮮やかに甦った。

 昨年10月にも私は東京のオモニ会代表とともに同本部に赴き、要望書を提出したのだった。その時の理事の方の対応は、申し訳なさそうな、困惑したように見えて、拍子抜けしたと言うのが率直な感想である。

 その後、何の答えも進展もないので、私たちは広く署名活動を繰り広げることにしたのだった。

 11月に神奈川朝鮮中高級学校保護者有志が「民族学校生に朝鮮奨学会の奨学生資格適用を求める会」を立ち上げ、同趣旨の署名運動を展開した。

 日本人有志の方にも賛同呼びかけ人になっていただき、オモニ会中央連絡会やいろいろなメーリングリストなどを通じて署名運動を展開した結果、全国の朝鮮学校の保護者や教員、生徒、同胞や日本人までさまざまな人から署名が届いた。郵送などで届いた署名の数は1万110人に達した。

 協力していただいた方々に感謝の気持ちでいっぱいである。そしてまた、朝鮮奨学会の奨学金適用資格を得ることは、ウリ学生と保護者にとって、どんなに切迫した問題であるかということも、再三身にしみて感じざるをえなかった。

 08年度の奨学生募集を前にして、2月に再度面会に臨んだが、面会日を提示してもらえなかった。仕方なく、私たち神奈川朝鮮学園保護者らでいきなりの訪問を強行することにしたのだった。

 緊張した面持ちでいきなり訪ねていった私たちに対応してくださった役員理事は「(理事会の決定で)現時点では民族学校生は対象外というのは変わらない」と話した。

 相も変わらない答えに失望と落胆を覚えながら分厚い署名用紙の束を提出し、この要請の正当性が認められるまで要望活動を続けていくと告げた。

 奨学会側の「しかし今後も議論は続ける」との最後の一言がせめてもの救いだった。

 日本という異国にあって子どもたちを確固たる民族的アイデンティティを持つ朝鮮人として育てたいという、ただその一心で朝鮮学校に通わせているウリオモニたち。

 それでなくても日本政府の民族的、制度的差別による不当な処遇の下、日本政府からの一切の援助もなく朝鮮学校に子どもを学ばせる学父母たちの経済的負担は少なくない。同胞たちの寄付と、父母たちの大きな負担によって、朝鮮学校が運営されているという、この現状から目をそらすことなく、奨学会の関係者が今一度検討してくれるよう切々と訴えて帰路に着いた。

 今春も、学費の工面が困難で、高校や大学を中途で断念する朝鮮学校生が一部にいたという。子を持つオモニとしてなんとも胸が痛む話だが、だからこそ、私たちオモニたちの力で一日も早くこの現状を打破していこうという想いは強い。

 経済的な困難を理由に進学を断念したり、勉学の道を中途で諦めざるをえなかったり、その可能性を十分に発揮できないでいる同胞生徒に等しく手を差し延べてこそ朝鮮奨学会の存在意義が確実なものとなるのではないか。

 近年、朝鮮学校の高体連のインターハイや選手権などスポーツ分野での活躍はめざましく、学業においても決して日本学校に引けをとらず、勤勉な朝鮮学校生がほとんどであると保護者として自負している。

 JR定期券の学割認定や地方自治体などの助成金拡大、日本の国公私立大学受験資格の個別審査認定など、朝鮮学校の社会的なポジションは改善されつつある。

 3月24日に出された朝鮮学校などに対する税制上の処遇問題や学習権についての日弁連勧告は、とくに記憶に新しく民族教育の正当性を示している。

 自己の言語や文化を維持、発展させること、さらに子にそれを継承させることは「子どもの権利条約」や「国際人権規約」でも保障されている権利であり、よって民族学校生は私たち同胞自身ばかりでなく社会全体で保護し、救済すべきだ。

 朝鮮奨学会が旧態依然のその方針を一日も早く改め、全ての在日同胞子弟に公平に奨学金適用資格を与えてくれるその日まで、私たちは決してあきらめることなく活動をつづけていくだろう。

[朝鮮新報 2008.4.25]