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〈虫よもやま話-10-〉 採集記−石垣島編−

 「来年は石垣島に連れてってやるからな!」

 2003年の夏休み。

 アボジはそう言いながらバイト先へ発つ私を見送ってくれました。しかし、その後すぐに重度の病に蝕まれていたアボジの容態は急変し、遠方にいた私だけが死に目に会うこともできず、これが最後の会話となってしまいました。

珍品:ヒロオビゴマフカミキリ

 2008年のゴールデンウィーク。

 1週間ほど石垣島へ採集に行こうとの誘いがありました。もともと行く予定だった後輩が行けなくなったことと、私の祖国訪問が延びたため、採集へ出かけるチャンスが偶然、舞い込んできたのです。その時はただラッキーと思い喜んで承諾しました。

 出発前、私用で急遽帰った実家で偶然アボジの登山靴を見つけました。そっと履いてみると、私と違ってあれほど体が大きくてごつかったアボジの靴が見事ピッタリ。その瞬間、「わしも連れていけ!」という稲妻のような声が聞こえたような気がしました。

 これはアボジの策略なのでしょうか? あれから5年を経て、アボジとの会話がこのような形で現実になったのでした。

 いざ石垣島へ降り立つ時には自然と涙が溢れ、「よし! この靴と一緒に思う存分楽しむぞ!」と、これまでにないエネルギーが体中に漲ってきました。そのため石垣島では朝から深夜まで寝食を割いて採集を行いました。最終日には無数の傷や全身の筋肉痛に加え、口内炎や汗疹で体がボロボロになっていたほどです。

 そして、無事研究室へ戻ってきた私を待っていたのは、予想をはるかに上回る採集結果でした。同じ研究室の先輩で15回も石垣島へ出かけているにもかかわらず、わずか1頭しか採れなかった珍しいカミキリムシを3頭採っていたり、研究室の標本室に1頭も所蔵されていない虫を5頭も採っていたり、まだ数例しか採集報告のない虫や新種と思われる虫を採っていたりと、驚愕の連続だったのです。先生に「ハンちゃんは馬力がある!」と言われた時、今回の採集の大きな成果を実感することができました。

 しかし、そんな中まだまだ遊び足らず不満気な人が一人。そう、あの「ピッタリの靴」が私に向かってこう言うのです。

 「次はわしをウリナラへ連れて行け!」と。

 イェ、アボジ、次こそ本番ですね。(韓昌道、愛媛大学大学院博士課程)

[朝鮮新報 2008.10.17]