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講演「異文化に暮らすマイノリティの輝き」 埼玉セセデセミナー第2弾「子どもたちの将来」

ウリハッキョの「うり」に納得

 10月25日、子育て世代向けの連続講座を開いている女性同盟埼玉では、ハナ信用組合埼玉支店で、埼玉セセデセミナー第2弾「子どもたちの将来」(主催=同準備委員会、埼玉朝鮮初中級学校オモニ会)が開かれ、同胞女性など約60人が参加した。

 セミナーでは、心理学修士・シニア産業カウンセラーの李舜哲さんが「異文化に暮らすマイノリティの輝き」について講演を行った。

セミナーには約60人が参加した

 李さんはまず、異文化とアイデンティティの関係について世界の著名人を例に挙げ、2つ以上の文化的背景を持つ人たちの活躍について触れた。そして「これら異文化の人々が『自分は誰か?』『自分は何をする人か?』という問いや葛藤の中で答えをうまく探せた場合、自分の進むべき目標・課題を見つけ自己実現に向かっていくが、答えをうまく見つけられなかった場合は混乱してしまう」と話した。

 李さんはまた、日本の中学・高校・大学に通う同胞学生を対象に行った意識調査の結果を示し、「自分を在日朝鮮・韓国人、民族系、混血系と答えた人が全体の91%という数字が出た」と述べ、このようなデータから今日まで在日コリアンのアイデンティティがなくならない4つの理由を、@世代間伝達、Aコミュニティ・ネットワークの存在、B民族教育であるとまとめた。

 講演では「日本の教育を取り巻く現状」と「日本学校に通う同胞生徒が抱える問題」についてもいろんなデータと資料、生徒や保護者、民族学級講師の声などを通してわかりやすく説明された。

 李さんの講演で特に参加者たちの関心を引きつけたのは、「私たちの課題−ウリハッキョの『ウリ(売り)』を伸ばそう!」の内容であった。

 李さんの話によると、朝鮮学校の「うり」は、@アイデンティティ教育、Aコミュニティーの存在、B学校生活での集団的競争、C教職員の熱意だという。

 セミナー終了後、参加者の申栄姫さん(中3・中2の娘、初5の息子の母)は、「子育ては不安がいっぱい。セミナーに参加して、自分では気づかなかったウリハッキョの良さに気づかされた。子どもをウリハッキョに入れて間違いではなかった」と話し、李正子さん(高2・中3の娘、初5の息子の母)は、「私は朝鮮人同士のときは本音トークで辛口なことを言うけど、日本人と話すときはものすごく誇らしく朝鮮学校を語っている。子どもたちには厳しい日本の社会で、日本人に『朝鮮へ帰れ!』と言われたら、堂々と闘える自信と誇りを持ってもらいたい。子どもは高校まで安心して朝鮮学校に送ろうと考えている」と語った。

 また、金静寅さん(中1の娘、初5の息子の母)は、「今日の講義で朝鮮学校のよさが何なのかがわかりやすく整理された。日本学校を出た私と違い子どもたちにはマイナスのアイデンティティが全くない。子どもたちがこれからどう生きるかという問題を、日本の学校では受験競争で勝ち、大企業で生き残っていくことと捉えるが、朝鮮学校では誰かのために役立たなくてはいけないと考える。当然自分も良くなければいけないが、誰かの役に立たねばならないという意識は朝鮮学校の卒業生によく見られるものだ」と話した。

 講師の李さんは、今年から埼玉初中の専属カウンセラーとしても働いている。「今後は保護者を含め、児童・生徒の進路相談にも応じて行きたい」と話していた。(金潤順記者)

[朝鮮新報 2008.11.7]