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多民族共生教育フォーラム2008大阪 「生きる権利としての教育権を」

各地から約300人参加

 「すべての子どもたちに『教育への権利』を」を合言葉に、「多民族共生教育フォーラム2008大阪」が11月23日、大阪・御堂会館で行われ、外国人学校関係者など日本各地から約300人が参加した。

 外国人の子どもの教育への権利に対する社会の関心を高め、外国人学校および外国人の教育権の制度的保障を目的に05年から始まった多民族共生教育フォーラム。今年は朝鮮学校が閉鎖に追い込まれた4.24教育闘争から60年という歴史的な経験を踏まえ、「外国人の子どもたちが安心して学べる居場所」である外国人学校の制度的保障を法政策に反映させるべく、活発な議論がなされた。

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フォーラムの最後には、子どもたちが舞台に上がった

 第1部のはじめに、フォーラム実行委員長である丹羽雅雄弁護士が開会あいさつをし、中森俊久弁護士(フォーラム実行委員会運営委員)が基調報告を行った。

 報告では、外国人・民族的マイノリティの子どもたちの学習権保障の現状と課題について言及された。朝鮮学校や中華学校は「各種学校」であることを理由に、国庫からの助成はゼロ、自治体からの補助金も十分なものとはいえず、処遇面において「一条校」とは雲泥の差がある。

 一方、ブラジル、ペルーといった南米系の学校は、「各種学校」の認可すら取得できず、あまりにも多くのハンディを背負っている。そのために保護者が高額な授業料を払えず、「不就学」といった事態に陥る子どもたちが後を絶たない。

 また近年、日本の政府、政党、経済界から出されている外国人・民族的マイノリティの子どもたちの「教育」をめぐる「提言」、「報告」などの動向について、日本への適応指導にのみ比重が置かれ、学習権保障の観点が著しく欠けていることが指摘された。

 続いて外国人学校の制度的保障を実現する東京ネットワーク準備会の李春煕弁護士、兵庫県外国人学校協議会の蔡昌勝さん、神奈川県外国人学校ネットワーク準備会の「安さん、埼玉県外国人学校ネットワーク準備会の石田貞さんらが各地の取り組みについて、アメラジアン・スクール・イン・オキナワのアントン眞理雄さん、北上田源さん、ELCC国際子ども学校を支援する会の横尾明親さんらがそれぞれの学校の現状について報告した。

学校保健問題に言及

フォーラム前日にはプレシンポジウムや子どもたちの交流プログラムが行われた

 第2部では外国にルーツを持つ子どもたちからのメッセージに続き、「多民族・多文化共生教育へのロードマップ2〜外国人学校の制度的保障を中心に」をテーマにしたパネルディスカッションが行われた。パネラーとして山下栄一参議院議員(公明党)、水岡俊一参議院議員(民主党)、山崎一樹京都市副市長、柴崎敏男さん(三井物産株式会社CSR推進部)、小島祥美愛知淑徳大学教員、金光敏コリアNGOセンター事務局長らが出演した。

 前回国会議員が初めて参加したのに続き、今回は初めて自治体と大手企業の関係者が登壇し、これまでのフォーラムでの議論の積み重ねをもとに、国、自治体、企業が取り組むべきことが具体的に議論された。

 また、留学同K・S医療福祉ネット・関西の学生らによる報告では、外国人学校の多くが「各種学校」や私塾扱いのため、学校保健サービスや保健教育を受ける機会を与えられず、そのために子どもたちの健康管理に差別が生じているとの指摘がなされ、日本政府が早急に公的な措置をとる必要性が強調された。

なぜインターだけを優遇?

11月24日、滋賀県のコンジオサンタナと東大阪朝鮮中級学校でフィールドワークが行われた(写真はサンバを踊るブラジル学校の子どもたち)

 三井物産の柴崎さんは、在日ブラジル人の子どもたちへの教育支援を通じた思い入れを語った。「『雇ってるから』という理屈ではなく、外国人は隣人であるし、子どもは宝。たとえその子が何人であろうと子どもたちはこの日本で生きている。これ以上子どもたちに辛い思いをさせたくない」と涙ながらに語った。

 会場からは、一刻の予断も許されない外国人学校の実情や政府、自治体の無責任ぶりを切実に訴える声が続いた。

 「企業誘致にともなって、教育実績のない学校にいきなり認可をおろして開校しようという動きがある一方で、本当に子どもたちに求められている学校は相手にもされないという不条理に憤りを感じる。一部のインターナショナルスクールが税制優遇されている現状から見ても、子どもたちの権利云々ではなく、完全にお金目当て」「私たち(ブラジル学校)が求めているものは、本当に緊急性をもった必要なもの。私たちは一体いつまで待てばよいのか」

法制定を視野に

 一方、国政に携わっている山下議員、水岡議員からは、法改正、法制定に向けた前向きで力強い発言もあった。水岡議員は「日本が批准している『国際人権条約』には、外国人・民族的マイノリティの教育権の保障について記してあるが、官僚は『教育基本法には書かれていない』という理由を逃げ道にしている。そこで論議がストップしてしまうのが今の国会の現状。しかし、この問題に対する理解のある仲間を増やしてたたかいたい」と述べた。

 フォーラムは回を重ねるごとに各地で外国人学校同士の交流が進み、08年初めて国会で与党の自公議員らによる「外国人学校を支援する議員連盟」が結成されたほか、民主党内にも研究会が発足するなど、具体的な成果を導き出してきた。そして自公の議連が出した提言にもあるように、「外国人学校支援法」の制定をめざした法律案の準備も、「外国人学校・民族学校の制度的保障を実現するネットワーク」によって着々と進められている。【金里映記者】

[朝鮮新報 2008.12.8]