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平壌市民 9.19共同声明履行に期待

「『良い前例』作った米の行動」

 【平壌発=姜イルク記者】朝鮮外務省スポークスマンは6月27日、米国が6者会談10.3合意にしたがって朝鮮を「テロ支援国家」リストから削除するプロセスに着手し、「敵性国通商法」の適用を終息させる決定を発表したことに言及し、「われわれは、これを肯定的な措置として評価し、歓迎する」と述べた。外務省スポークスマンによるこの発言内容を国内のすべてのメディアが報じた。平壌市民は、この報道に大きな関心を示した。半世紀以上続く朝米間の対決と不信の関係を平和共存の関係に変える「新たな転機」がもたらされたという認識が広がっている。

根強い不信感

 平壌市民は今回の米国の措置に対しておおむね歓迎の意を示している。

 しかし外務省スポークスマンの発言が伝わった直後、一部では「実際に制裁を解除するのかどうか、見守る必要がある」という声もあった。米国に対する朝鮮の人びとの根強い不信感の反映だ。

 人びとの目には、米国は一度交わした約束を裏切る国に映ってきた。そのような前例を何度となく目撃してきたからだ。

 米国は1994年10月に発表された朝米基本合意文を一方的に破棄した。

 合意文によると、米国が03年まで朝鮮に軽水炉を提供するかわりに朝鮮は黒鉛減速炉と関連施設を凍結し、究極的にはこれを解体することになっていた。合意後、朝鮮は朝米基本合意文上の自らの義務を誠実に履行してきた。

 ところがこの合意文は、当時クリントン政権が朝鮮の「崩壊」を前提に交わした空手形であったことが明らかになった。米国は他国を引き入れ97年にようやく軽水炉の建設に着手。約束履行期限の03年までの完成は到底不可能なことだった。

 ブッシュ政権発足以降、この合意文は事実上、破棄された。02年10月、平壌に特使を派遣したブッシュ政権は、「朝鮮側がウラン濃縮による核開発を認めた」と一方的に発表、「第2次核危機」を引き起こした。そしてこれを口実に、重油の提供と軽水炉の建設を中止に追い込んだ。

 その後、6者会談が開かれ、05年には朝鮮半島非核化のロードマップが明記された9.19共同声明が採択された。米国はこの文書に署名した。

 ところがブッシュ政権がこの発表を前後して対朝鮮金融制裁を発動したことで、その後の6者会談は膠着状態に陥った。

履行意志の再確認

 06年10月、朝鮮の核実験後に6者会談が再開。朝米は2国間接触と会談を繰り返した。

 朝鮮側が米国側にたびたび強調したことは、米国が核問題を生じさせた自身の対朝鮮敵視政策を転換し、それを言葉ではなく「行動」で示さなければならないということだった。

 6者会談と朝米協議のすべてのプロセスで貫徹される「行動対行動」の原則は、朝鮮の人びとにとっても米国との関係を分析し判断する基準となっている。

 平壌市民は、朝鮮半島問題で言動不一致を繰り返す米国が今回、6者合意に従ってついに「実践的な措置」を講じたことに注目している。今後、朝鮮半島の非核化を実現していくうえで、「良い前例」を作ったというのだ。

 「第2次核危機」を含めた一連の事態は、朝米両国間の合意が一方による約束違反で破棄されるという深刻な教訓を残した。

 しかし9.19共同声明は94年の朝米基本合意とは違い、多国間会談で合意されたものだ。他のすべての国と同じように米国の義務事項の履行問題も徹底的に国際社会の検証と監視を受けなければならない。

 平壌市民は一様に、9.19共同声明の履行条件において、朝鮮に対する米国の強権行為はこれ以上許されないと語っている。

 それは、自国が9.19共同声明の履行という国際的な公約を必ず行動に移すと信じてやまないからだ。朝鮮が動けば、米国も動かなければならない。これは今後の情勢発展を推し量る平壌市民の尺度となっている。

 市民らは、外務省スポークスマン発言の一字一句を刻むようにして読んでいた。彼らの関心を最も集めたのは次の箇所だ。

 「今後重要なことは、米国がわれわれの核抑止力を生じさせた対朝鮮敵視政策を根源から撤回することである」

 市民らは、今回の朝米同時行動が一時的な状況変化ではなく、長期間にわたる対決の構図を清算するより大きな歴史的転換につながることを予期している。

[朝鮮新報 2008.7.4]