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「日朝友好学生の会」訪朝団 非正常な現状、再確認

「出会って話す大切さ実感」

 【平壌発=李相英記者】日朝の大学生、教員らで構成された「日朝友好学生の会」訪朝団が8月26〜30日に朝鮮を訪問した。短い滞在期間だったが、一行は在日本朝鮮留学生同盟(留学同)訪問団とともに各地を訪れ、各階層の市民たちと交流を深めた。

同世代青年との交流深める

金塘里協同農場の青年たちとともに

 訪朝団は滞在期間中、チュチェ思想塔や凱旋門、万景台学生少年宮殿、朝鮮歴史博物館など平壌市内の名所を参観し、開城、板門店を訪れた。また、朝鮮の青年たちと交流し、「従軍慰安婦」被害者とも会った。27日夜には大マスゲーム・芸術公演「アリラン」を鑑賞した。

 毎年夏に組まれる留学同訪問団と共に日本人学生らが朝鮮を訪れるのは05年、07年に続き今回が3回目。同訪朝団は日本人大学生3人と教員3人、そして日本の大学に通う同胞学生2人の計8人で構成された。日本人メンバー6人は全員が初めての訪朝だった。

 複雑な日朝関係の中での訪問となったが、メンバーらは朝鮮について実際に見聞きすることの大切さ、草の根レベルの民間交流の重要性を肌で感じていた。

 「日朝友好九州学生の会」代表を務める九州女子大学4回生の橋本純さん(22)は、「街並みがきれいで人びとの表情は明るいし愛嬌がある。団結力の強さにも驚いた。朝鮮のことをまったく知らないわけではなかったが、実際に訪れてみると、日本で見聞きしていた情報とは隔たりがあった」と話す。

 立命館アジア太平洋大学2回生の三科博さん(19)も、「日本では朝鮮についていろいろと言われているが、本当の姿は実際に訪れてみないとわからない。やはり国も人が中心。敏感な政治問題はいったん脇に置いて、生身の人間同士が出会い、触れ合ういい機会だった」と意義を指摘した。

 メンバーからは、建国60周年を目前に控え活気づく平壌市内の雰囲気、交通保安員の女性が印象に残ったという声が聞かれた。また「アリラン」公演についても、「圧倒された」「世界広しといえども、あのような規模の作品を上演できるのは朝鮮だけ」など一様に感嘆の声を寄せていた。

 「板門店で朝鮮半島分断の現実を再確認した」という新潟国際情報大学の吉澤文寿准教授は、開城、南浦訪問を通じて朝鮮の今後の経済発展の可能性を見たと述べた。

 一方、今回の訪朝では現地の学生、若者との交流の機会も設けられた。一行は27日に平壌外国語大学を訪問。29日には金塘里協同農場(平安南道)を訪れ、青年分組員らと昼食をともにし歌を披露し合いながら楽しいひとときを過ごした。

 橋本さんは、「日本の若者に比べてしっかりしていると感じた」と印象を語った。

 「都市より農村の風景に興味があった」と語る同志社大学の板垣竜太准教授は、自身が専攻した文化人類学の手法を例に、隣国理解において、実際に現地を訪れ人びとと触れ合う「フィールドワーク」の有効性について指摘した。

 「朝鮮の人々には彼ら自身の論理があって、その一貫した論理に基づいて社会が動いていることを肌で感じた」と板垣准教授。「日朝間にはさまざまな問題が横たわっているが、今後、両国の若者の交流がいっそう深まることを願っている。機会があれば今度は長期間滞在したい」と話した。

「慰安婦」ハルモニとの面談

「従軍慰安婦」被害者、金英淑さんの証言を聞くメンバーら

 同日、一行は留学同訪問団とともに平安南道温川郡に住む「従軍慰安婦」被害者・金英淑さん(82)を訪ねた。

 1927年に平安北道泰川郡で生まれた金さんは父の死後、孤児となり、10歳のときに地主の3番目の妾の家に売られた。13歳の時、日本人巡査に「いい働き口がある」とだまされ、瀋陽の日本軍「慰安所」で5年間性奴隷生活を強要された。解放後、旧ソ連、モンゴルなどを転々とした。46年に帰国した後は、食堂で働きながら一人で暮らしてきた。

 今なお、国家的な謝罪と賠償を拒み続けている日本政府を激しく非難する金さん。彼女の生々しい証言を聞いた一行は、未だ過去清算がなされていない朝・日間の非正常な関係をあらためて認識したようだった。

 板垣准教授は、「ハルモニたちは『慰安婦』時代に受けた心と体の傷によって家族を作れず、ずっと一人で生きてこざるをえなかった。彼女たちの苦しみが癒されず、植民地支配が終わった後も続いていることは悲劇」だと述べた。

 橋本さんは、「『日本政府と一般の人びとは区別している。悪いのは政府であって、あなた方ではない』というハルモニの言葉の重みが胸に迫ってきた」と神妙な面持ちで語った。三科さんも、「日朝関係の改善や両国間の友好親善のために自分たちがどう行動すべきなのか、考えていかなければいけない」と話した。

[朝鮮新報 2008.9.10]