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〈月間平壌レポート -08年11月-〉 経済復興の息吹を実感

2012年に向けて着実に

 【平壌発=李相英記者】11月を迎えて、冬の訪れが感じられるようになった平壌。20日には今冬の初雪が降った。年頭の3紙共同社説は、建国60周年を迎える今年を歴史的転換の年として輝かそうと呼びかけた。経済各部門では同社説で提示された課題を遂行するための追い込みに入っている。

自力更生の精神

南興青年化学連合企業所のガス化プラント工事現場の一部

 10月下旬から今月にかけて、経済各部門の生産現場を集中的に取材した。電力や鉄道網など「人民経済の先行部門、基礎工業部門」と呼ばれる基幹部門を中心に、軽工業、科学、機械部門にいたるまで今年、高い生産実績をあげた企業を訪れた。平壌市内だけでなく地方にも足を延ばした。全体の限られた部分を見たにすぎないが、多くの現場で設備の現代化や技術革新が進むなど、「強盛大国の大門を開く」2012年に向けた確かな歩みを実感できた。

 平壌紡績工場は今年、生産ラインの大部分を一新、人民生活向上に必要な衣類の生地を大量に供給している。

 黄海北道の電力問題解決に重要な意義をもつ礼成江発電所の建設現場では1号発電所が10月に完工。2号は来年上半期の完成が目標だという。

 また、平安南道安州郡の南興青年化学連合企業所では現在、関係者の注目を集める大規模工事が行われている。ガス化プラント工事と呼ばれる、無煙炭によるガスを利用した生産ラインの建設がそれだ。石油に代わり朝鮮に豊富な石炭を利用し、経費を半分に削減するという。化学肥料の生産で大きな前進が見込めると関係者らは期待を寄せる。

 訪れた現場ごとの実情はさまざまだったが、一貫していたのは自力更生の精神とプラス思考だ。南興のカン・ウンハク副支配人は、「条件は決して十分ではないが、われわれには大きな工事をやり抜くだけの力量がそろっている」と自信に満ちた表情で語っていた。

 また今年、建国60周年を迎えて大きく様変わりした首都平壌では9月以降も建設事業が各分野で進められている。市中心部の万寿台通りや普通江区域の烽火通りでは歩道や住宅などの改築が行われている。蒼光通りの飲食店街もリニューアル真っ最中だ。19日には、都市経営省とクウェート・アラブ経済開発基金との間で汚水関連施設の現代化に関する協力合意書が調印された。平壌市の建設に関しては先ごろ、金正日総書記の指導があったことも伝えられている。今後もさまざまな対象計画が推進される見通しだ。

女子サッカーの快挙

 ニュージーランドで行われた女子サッカーのU−17W杯で朝鮮代表が優勝した。このニュースは、北京五輪での金メダル獲得以来の明るい話題を提供している。

 16日の決勝戦の結果は同日晩、テレビで得点シーンの映像とともに報じられた。翌日の各紙は1面の下段に写真3枚を使って編集するなど、異例の扱いだった。

 この快挙に平壌市民も沸いた。栄えある第1回大会の覇者ということもさることながら、決勝で米国を破っての優勝だけに喜びはひとしおのようだ。決勝戦の模様は翌日の晩ほぼノーカットで放映された。大柄な米国選手を相手に鮮やかな逆転勝利をおさめたゲームに、本紙支局が事務所を構える平壌ホテルの宿泊客、従業員らの目はくぎづけだった。その後も数日間、試合の模様はテレビ放映された。

 国同士の誇りが激突する代表戦の注目度は高い。見る側にもさまざまな思いが交錯する。スポーツと政治は別物だが、政治・軍事的に敵対関係にある米国が相手とあって、市民の反応は素直だった。「胸がスカッとした。米国も強かったが、われわれの方が数段上だった」とは、支局現地スタッフの感想だ。

 この数日前には、女子サッカー朝鮮代表チームの主将リ・クムスク選手の結婚がメディアで報じられた。10年以上にわたって国家代表選手として活躍、朝鮮女子サッカーの黄金期を築き上げた彼女の今後の去就に注目が集まっている。

 朝鮮女子サッカーの実力をあらためて強烈に印象づけたU−17W杯での優勝は、次代を担う若き才能が着実に育っていることも示した。リ選手にとって後輩からの最高の結婚祝いになったのかもしれない。

一喜一憂せず

 当初20日に予定された選手らの帰国は、雪の影響で21日にずれ込んだ。初雪には似つかわしくない、まとまった量の雪だった。冬の到来を本格的に告げるかのように、今月中旬から気温は急激に下がり、風も日々、冷たさを増している。

 寒風は北南関係にも吹いている。北側は今月中旬、板門店赤十字連絡代表部を閉鎖し、12月から陸路による運行を厳しく制限、遮断すると発表した。南側の態度に変化がないことを見極めたうえでの措置だ。

 一方、米国では次期大統領が決まるなど、朝鮮を取り巻く状況も変化している。ただ、情勢に関する人びとの見解は「一喜一憂」とはほど遠い。何よりも目前の課題である経済復興、生活向上に全精力を傾けている。

 12月に入ると各職場で今年の総括が始まる。来年元旦の共同社説では建国60周年の今年がどのように評価され、2012年に向けた展望がどのように示されるのだろうか。

[朝鮮新報 2008.11.26]