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朝鮮の英語、コンピューター早期教育 導入から3カ月 小学校の授業風景

「情報化時代の人材育成」

 【平壌発=李相英記者】朝鮮各地の小学校で英語とコンピューターの教育が9月からいっせいにスタートした。従来、これらの授業は中学校から行われてきた。今回の措置は、21世紀情報化時代の人材育成を目標に小学校段階での教育強化を図ったもの。導入から3カ月あまり。現場の雰囲気はどうなのか。平壌市牡丹峰区域にある西興小学校を訪ね、授業風景をのぞいてみた。

基礎をしっかり

西興小学校での英語授業風景

 「Good morning,everybody.」

 「Good mornin,teacherr!」 

 3年7組の英語授業。教室には担任のキム・ウンギョン教員のあいさつに答える生徒の元気な声が響き渡る。授業中の教授用語は基本的に英語だという。中学以上の外国語教育では一般的だが、小学校の授業も例外ではないようだ。

 この日の授業はアルファベットの学習。先生が「Apple」「Bag」などアルファベット順で始まる英単語と絵が描かれたカードをかざしながら、発音の手本を見せる。先生の口の動きをまねながら生徒たちがそれに続く。表情は真剣だ。

 小学校3年の英語教育は大きく4つの段階に分けて行われる。第1段階ではもっとも基本的なあいさつの言葉を、続く第2段階ではアルファベットの読み書きを習う。第3、第4段階に入ると家族や学校など身近な生活に関する語彙や会話の学習に進む。

 小学校の段階では何よりも英語に慣れることが第1で、文法よりも会話など実践的な面を重視しているという。

 教壇に立つキム教員は今年、平壌教員大学を卒業したばかり。1年目の新人教師だ。新任ながら、区域内の教員らによるコンテストで優勝するなど授業には定評がある。「科学技術やITが重視される時代に、外国語やコンピューターを早期に学ぶことには意義がある。中学校での本格的な教育にスムーズに移行できるよう、基礎をしっかりと教えたい」と話す。

 授業を受ける生徒の表情も明るい。最前列の席で一生懸命に発音を繰り返していたチョン・ソンフィさんは、「英語を学ぶのは楽しい。授業の時間が待ち遠しい」と笑顔を見せた。

 宿題も、授業で習った簡単なあいさつや会話を家族と交わし、その結果を発表するといった形式が多い。生徒たちは習いたての英語を家族の前で披露するのが楽しいらしく、学習意欲をかきたてる効果を生んでいるという。

家庭で復習

 一方、今回の措置を機に新設されたコンピューター室では3年2組の授業が行われていた。教室には10台あまりのコンピューターが窓際に並んで設置され、反対側の壁には機械各部の名称や操作方法などをわかりやすく解説した教材が貼り付けられている。

 今回の授業の内容はキーボードの操作方法。机の前に置かれたキーボードを叩く音が教室に響く。覚えの早い生徒はまっすぐ前を向きながら両手をなめらかに動かしていく。まだ慣れていないのか、キーを見つめながら一字一字ゆっくりと叩く生徒の姿も。その後は順番にモニターに向き合って簡単な単語や文章を打ち込む。コンピューターの起動から文書作成ソフトを開くまでの一連の手順を覚えるのも授業の一環だ。OSは朝鮮で独自に開発されたものを使用している。

 コンピューター教育も英語と同じく、まずは身近に接して慣れることに重点が置かれる。

 3年生の段階では本体やキーボードの操作方法、OSに関する基礎知識を学ぶ。音楽を再生したり簡単な絵を描くことも、コンピューターの機能を理解し親しむ助けになるという。4年生に上がると、より高度な文書や画像の作成を学ぶ。 最近、平壌でもコンピューターがある家庭は珍しくない。学校で体系的に学んだ内容を家で復習すれば教育の質も高まると学校側は期待している。

地域で支援

 同校では昨年9月から早期教育実施に向けた準備が本格的に進められた。教育に必要な各種設備を導入し、教員らに対する技能講習も3段階にわたって行われた。「学生時代からコンピューターや英語に接している若い教員とは反対に、ベテランの教員は覚えるのにだいぶ苦労したようだ」と、同校のコ・ミンエ校長は少々苦笑い。

 コンピューター教育の開始にあたっては設備導入が大きな問題だったが、同校の後援機関である西平壌百貨店側が多くを負担してくれたという。朝鮮では各学校に対して地域の機関、企業所が後援団体となり、教育に必要な設備や財政を支援する制度が設けられている。

 授業に対する生徒たちの評判も上々だ。「好奇心旺盛な年頃なので学習熱意も高い。何より知識を吸収するスピードが速い」とコ校長。学父母らも早期教育実施を喜んでいるという。

 コ校長は今後の課題として、設備の拡充など教育環境の充実を挙げる。「コンピューター室の数を増やし、台数も授業時には生徒全員に行き渡るようにしなければいけない」。

 英語の授業は週2時間、コンピューターは4時間が割り当てられている。始まったばかりなので試行錯誤の毎日だというが、「国の未来を担う人材を育てる質の高い教育を心がけていきたい」(コ校長)と決意を語った。

[朝鮮新報 2008.12.3]