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朝鮮が見る原油価格高騰とサブプライムローン問題

世界的な経済不安定の要因は…、米国の「対テロ戦争」

 最近、米国での景気停滞に対する危機感の増大によって世界的規模で株価が暴落し、経済恐慌まで起こりかねないという不安と懸念の声が広がっている。こうした世界的経済不安定の主な要因は、一般的に、米国でのサブプライムローン問題、また、原油価格の急騰にあると言われている。しかし朝鮮は、その要因を米国の「対テロ戦争」との関連の中で見ている。1月26日発朝鮮中央通信は、「世界的な経済不安定の禍根はどこにあるのか」と題する記事を発表し、「米国の際限なき帝国主義的欲望に根源がある」「『対テロ戦争』の破たんは『米国の時代』の終えんを意味する」と指摘した。

ドル安政策の代価

引き続く株価の急落に深刻な表情を浮かべるソウル・汝矣島証券取引所の職員 [写真=聯合ニュース]

 株価は今年に入って、米国で10%以上下落し、欧州でも下落幅は11%以上になる。2001年の「9.11事件」以来、最高を記録した。

 インド、南朝鮮、香港、日本、シンガポール、中国などアジアの国と地域でも大幅に下落した。国際通貨基金(IMF)の専務理事は、世界のすべての先進国が米国の成長減速の影響を受けている現在の状況は深刻だと述べた。

 朝鮮中央通信はこのような事実を伝えながら、「世界的経済不安定の主な要因は、一般的に原油価格の急騰と米国での住宅市場危機にあると言われている。しかし、掘り下げて見ると、その裏には米国の無謀な戦争政策、『対テロ戦争』が影を落としている」と指摘する。

 21世紀に入り米国は、「対テロ」戦略に従って、3回の戦争を挑発した。2006年のレバノン侵攻は米国とイスラエルの惨敗に終わり、それより先にアフガニスタンとイラクで始めた戦争はさらに抜け出すことのできない泥沼に陥っている。

 朝鮮中央通信は、米国がこれらの戦争に多大な資金をつぎ込んでいる事実とともに、その一方で財政危機からの活路をドル安による輸出増大に求めている事実を強調する。ドル安により、世界市場で原油価格がその実質的な価値をはるかに超えたと見ている。

 これにより、原油消費国はもちろん、産油国にも深刻な脅威が生じている。

 一方、米政府はこの3年間、ドル安政策に転換して金利を次々と下げた結果、米国の輸出は増えて昨年の8カ月間だけでも11%増えた。2004会計年度に4130億ドルを記録した財政赤字は2006会計年度に2482億ドル、2007会計年度に1628億ドルに縮小し、5年ぶりに最低水準を記録した。

 朝鮮中央通信は、その代価が原油価格の高騰だと指摘する。そして、「『対テロ戦争』が国内経済に及ぼす破局的結果を免れるための米政府のドル安政策は、原油市場での投機行為、『需要と供給の不均衡』などとは比べものにならない原油価格上昇のもっとも根本的な原因だ」と結論づけた。

「富益富、貧益貧」の激化

 米国で問題になっているサブプライムローンとは、低所得者やクレジットカードで返済延滞を繰り返す人など、いわゆる信用の低い個人を対象とした住宅ローンを言う。通常の住宅ローンに比べ金利が高く設定されている分、審査基準は緩くなっている。2004年頃から普及、拡大されたが、昨年から破綻するサブプライムローンが急増した。昨年6月現在、全米でローンの支払いができずに差し押さえられたり低価格で競売に出された住宅は420万戸だという。

 朝鮮はこのサブプライムローン問題も、究極的には「対テロ戦争」が根源となっている、と見る。

 朝鮮中央通信は次のように説明する。

 …米政権は、「対テロ」の美名のもと、軍事費を無制限に増やす代わりに、保健医療、住宅などの部門の社会的支出を大幅に削減した。国民の税金を減らして自力で立ち上がるようにするという聞こえのいい減税政策を標ぼうしたが、その恩恵を受けるのは富裕層だけであった。現政権の任期中に米国の貧困者数はおよそ500万人も増え、貧富の格差は史上最高水準に達した。

 昨年、米国のある社会団体が発表した資料によると、米国の貧困者数は3700万人に達しているが、これは米国人の8人に1人が貧困者であることを意味する。「対テロ戦争」による「富益富、貧益貧」(富む者はさらに富み、貧しい者はさらに貧しくなるという意味)の激化は、必然的に「米国経済の動力」とされる消費者支出を減少させて経済成長を抑制すると同時に、不動産市場と金融業界の危機を触発している。

 その集中的な現れがまさに、経済的に苦しい人々が貸し付けられた住宅ローンを支払えなくなり、多くの住宅融資業者が損失を受けたり、閉鎖する事態、住宅市場危機である…。

 朝鮮中央通信はまた、1月9日に国連貿易開発会議(UNCTAD)が米国での住宅市場危機と不況によって世界経済が停滞に陥る危険が増大しているとし、米国が急激かつ無秩序なドル安政策を取っていることに警鐘を鳴らしたにもかかわらず、米連邦準備制度理事会(FRB)は1月22日、またしても金利引き下げ措置を発表して世界をさらに騒然とさせている、と批判した。

 そして、「諸般の事実が示しているように、こんにち世界が絶えず経ている政治的・経済的不安定と動乱は、米国の際限なき帝国主義的欲望にその根源がある」と強調した。(姜イルク記者)

[朝鮮新報 2008.2.8]