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そこが知りたいQ&A−南朝鮮新政権、朝鮮はどう見ているの?

親米、反北の保守執権勢力

 朝鮮が南の李明博政権に対する非難の度合いを強めている。南朝鮮軍合同参謀本部議長の北側に対する「先制攻撃」発言(3月26日)をめぐって北南関係の緊張状態が続く中、労働新聞1日付は同紙評論員の長文(以下、論評)を掲載、李明博政権発足後初めて同政権に対する体系的な批判を展開した。李政権に対する北側の立場、北南関係の最近の動きと今後の展望などについてQ&Aで見た。

 Q 労働新聞の論評が発表された経緯は?

南では、李明博政権に対する非難世論が高まっている(3月28日、ソウルでの集会) [写真=統一ニュース]

 A 昨年12月の大統領選挙後、北側は南の次期政権に対して沈黙を守ってきた。その一方で、「わが民族同士」の固守、6.15、10.4両宣言の履行を事あるごとに強調してきた。しかし南側はこれに呼応せず、2月の政権の正式発足後には人権問題などを口実に北側との対決姿勢を鮮明にした。

 北側は3月6日、祖国平和統一委員会代弁人談話を通じて初めて新政権に言及し、「保守執権勢力」と批判した。南朝鮮軍合同参謀本部議長の「先制攻撃」発言についても、「偶然の失言ではなく、現南側当局の対北政策を代弁したもの」(3月30日発朝鮮中央通信の軍事評論員の文)との見方を示した。

 このような流れの中で労働新聞1日付の論評が発表された。

 Q 論評の内容は?

 A 李明博政権が対北政策として打ち出した「非核・開放・3000」に焦点を合わせ、「核」「開放」「人権」などのキーワードに込められた同政権の北南関係、統一問題、核問題に対する認識を全面論駁する内容になっている。また、南側に対する強硬な対応を示唆し、今後、北南関係と朝鮮半島情勢が破局的事態に陥った場合、その全責任を南側が負うべきだと警告した。

 昨年の大統領選挙後、北側が南側大統領を名前を挙げて非難し、新政権の対北政策についてまとまった見解を示したのは今回が初めてだ。非難の度合いも、「保守執権勢力」という表現から「逆徒」「詐欺師」などとエスカレートしている。

 Q 「非核・開放・3000」に対する見解は?

 A 論評の内容に基づいて整理すれば、北側の「完全核放棄」と「開放」を北南関係の前提条件として打ち出した「荒唐無稽でせん越な戯言」「民族の利益を外部勢力に売り渡し、対決と戦争を追求し、北南関係を破局へ追い込む反統一宣言」という見方だ。「李明博政権の反民族性を集中的に示すもっとも醜悪な妄言、でたらめな妄想」と全面的に否定している。

 論評は核問題に関して同政権の「北核放棄優先論」を例に挙げ、「朝鮮半島核問題の発生経緯と本質、6者会談の合意も知らない」と、その無知を辛らつに批判した。北の核抑止力は「やむをえず保有せざるをえなくなった」ものであり、核問題発生の責任の一端は南朝鮮当局にもあると主張し、米国と南朝鮮が自らの非核化義務を棚上げし北側の非核化のみを言い募るのは、問題の解決を台無しにするという指摘だ。

 個別の問題に対する見解は論評全文に詳しいが、一貫しているのは、現在まで積み上げてきた北南関係を全否定するような「政治感覚の欠如」「対米従属」といった指摘だ。論評が言及している「アマチュア政権」という表現は、李明博政権に対する北側の評価を端的に表すものだといえる。

 Q 「実用主義」についてはどうか?

 A 「非核・開放・3000」の根底にある思考として、「反動的」かつ「民族の理念にそむくもの」だと非難している。「実用主義」を掲げることで6.15、10.4両宣言を全面否定し、その履行を妨害する一方、北南関係を外交関係の枠組みの中で扱い、民族問題を対米関係に従属させようとしているとの指摘だ。「北南関係を外交関係の下位に置き、それに服従させると内外に公然と宣言したのは李明博だけ」と、南側歴代政権との対比の中で現政権の「反民族的な性格」を際立たせている。

 Q 今回の論評に対する朝鮮国内の反応は?

 A 国内メディアは異例の扱いで同論評を報道した。労働新聞をはじめ各紙が2面のトップに掲載、テレビも全文を繰り返し伝えた。一般市民の間でも大きな反響を巻き起こしている。

 個人名がクレジットされない「評論員」名義の文は一般の署名入り論評に比べて重要度が高く、労働新聞だけで使われている形式だ。同紙評論員の見解と主張は党機関紙編集部の意向、すなわち党の声が直に反映されている。

 党機関紙評論員の文が政府声明やスポークスマン声明に匹敵する重みを持つと言われるゆえんだ。

 Q 北南関係の今後の展望は?

 A 論評は李明博政権の発足によって「北南関係の前途には険しいいばらの道が作られた」と指摘、朝鮮半島とその周辺情勢にも影響を及ぼすと今後の情勢に対する憂慮を示した。

 北側の李政権に対する厳しい非難の根底には、北南双方が6.15共同宣言と10.4宣言の履行に力を尽くすべきという一貫した姿勢がある。論評は「今後も6.15時代の発展のために努力していく」という北側の立場を再度強調する一方で「時代に逆行する愚か者の挑戦に対しては容赦なく粉砕する」と警告している。北側の一般市民の間でも南の新政権が今後も北側との対決路線に進む場合、6者会談のプロセスに障害が生じることがあっても断固とした対応をすべきだという声が高まっている。(相)

[朝鮮新報 2008.4.9]