top_rogo.gif (16396 bytes)

朝鮮の論調 08年 3月

 3月2〜7日に米国と南朝鮮軍は大規模なキー・リゾルブ、フォール・イーグル合同軍事演習を行った。朝鮮は連日のように非難の論調を配信した。一方、13日にはスイス・ジュネーブで朝米会談が行われた。10.3合意履行に関する意見の相違点を集中的に協議したと報じられ、金桂官外務次官は会談後、「満足だった」と評価した。また、6日には南側の「北の人権」発言を非難する祖平統の談話が発表された。その中で初めて李新政権に言及し、「保守執権勢力」「独裁政権の末えい」と位置付けた。

−対米 「対話をすればするほど失望」

 昨年10月以降、配信数は月が替わるたびに微減傾向にあったが、合同軍事演習を前後して非難論調が増えた。

 2日に、朝鮮人民軍板門店代表部が談話を発表。今回の演習について「米国が唱えている『対話』や『戦争の終結』は、彼らの核戦争準備を隠蔽し、われわれを武装解除させ、世論を欺くための狡猾な演劇にすぎないということを明白に証明した」と強調した。

 13日には、「核戦争導火線に火をつけようとする無謀な企図」と題する労働新聞の記事を配信し、今回の演習は「その規模にせよ、性質にせよ、明白に朝鮮を不意に先制打撃するための予備戦争、核実験戦争であった」と主張した。

 25日には、「なぜまた対決発作を起こすのか」と題する労働新聞の記事を配信。欧州地域に対するミサイル防衛体系樹立と関連した記者会見の場で、ブッシュ大統領が朝鮮を「ならず者国家」と名指した発言を引用、「対朝鮮敵視思考が根深いものであるということを自らさらけ出した」と指摘した。

 一方、18日には朝米ジュネーブ会談に言及し、「10.3合意と関連し、朝米間に存在する意見の相違に対する具体的な協議」が行われ、「双方はこれからも10.3合意の履行において提起される諸問題の解決方途について今後も直接対座して討議していくことにした」と報じた。

 ところが28日、外務省代弁人は談話を発表し「合意履行の膠着状態は米国に原因がある」「協議をすればするほど、ブッシュ政権の態度はわれわれを失望させている」と指摘し、「米国が引き続き無いものをあるかのようにねつ造しようと強弁しながら、核問題の解決を遅らせるならば、今までかろうじて進められてきた核施設の無力化にも深刻な影響を及ぼしかねない」と強調した。「ウラン濃縮」や「シリア核協力」についてはあらためて全否定した。

−対日 前政権よりも露骨な総連弾圧

 新政権発足以来、様子見が続いていたが、今月に入ってから厳しい批判が目立ち始めた。

 18日に「安倍政権と何が違うのか」と題する民主朝鮮の記事を配信した。その中で総連弾圧に言及、「日本当局による反総連策動は、朝鮮に対する露骨な敵視政策だ」とあらためて強調し、「安倍政権期に始まった総連抹殺策動が福田政権期になってさらに露骨化している」と指摘した。

 19日にも「仮面は外された−福田内閣の在日朝鮮人人権蹂躙行為」と題する論評を配信。「国内に住む外国人たちを、彼らの祖国に対する圧力政策実現の道具と位置付け、集団的に迫害し、その組織まで消してしまおうとする人権の不毛地は、世界に日本しかない」と主張した。

 26日には対朝鮮「制裁」延長と6者プロセスを関連づけた労働新聞の記事を配信し、「日本の対朝鮮『制裁』延長企図は、核問題の解決を邪魔するだけでなく、朝鮮半島非核化にブレーキをかける妄動である」と指摘した。

 また、「『制裁』が朝鮮の経済発展に何の影響も及ぼさないことをすでに知りつつも、継続して『制裁』にしがみつく本心は明らかだ」とし、「それは『制裁』を通じて総連施設を強奪し、『万景峰92』号の運航を遮断することによって総連を物理的に抹殺し、わが同胞たちを祖国から引き離そうとするためだ」と断じた。

−対南 「保守執権勢力」と位置付ける

 6日、国連人権理事会での南側の「北の人権」発言を非難する祖平統代弁人談話を発表し、初めて李新政権に言及した。

 「保守執権勢力」という表現を用いて批判、「外部勢力の対朝鮮敵視策動に追従して国連でも分別なく振る舞っているのは、親米事大と売国売族、同族対決に狂った彼らの反民族的な正体を再度さらけ出した」と糾弾した。

 その後は先月同様に「わが民族同士」を唱える論調の配信が続いたが、月末になって南朝鮮軍部と好戦勢力に対する非難が激しくなった。

 27日に「政権交替を契機に戦争策動が露骨化している」と非難する民主朝鮮の記事を配信した。翌28日にも南の「北方限界線固守」発言を糾弾する朝鮮人民軍海軍司令部代弁人談話を発表した。

 29日には、南の合同参謀部議長による「先制打撃」発言の取消と謝罪を要求する北南将官級会談北側代表団団長の通知文を配信し、「『先制打撃』暴言は、今までの北南関係の歴史の中で、かつてなかった最も厳重な挑戦であり、われわれに対する公開的な宣戦布告と何ら変わりのない無分別な挑発行為である」と指摘した。

 30日には朝鮮中央通信軍事評論員名義の論評を配信し、「『先制打撃』暴言を取り消し、謝罪するという立場を明らかにしなければ、予見されていた全ての北南対話も全面遮断されることになるだろう」と警告した。

 町村官房長官が記者会見で「制裁延長の方針」を語ったのは4月2日。一方、同日夜にNHKは21時ニュースのトップで「北朝鮮、ミャンマーに通常兵器売却増大」という、突拍子もない「報道」を流した。

 どこを押せば、そんな音が出るのか。

 NHKの「報道」は、「制裁」措置延長に対する世論を煽るための、当局と歩調を合わせた意図的な布石であることは明らかであろう。

 思い起こせば、国内政治が混乱し、支持率が下がった時、前首相は「拉致問題」を騒ぎ立て、総連と在日同胞を弾圧し、世論の矛先を「憎むべきは北朝鮮」に向けた。

 その末路は記憶に新しい。「拉致」の一声しか台詞を覚えられず、「空気が読めない大根役者」と野次る観衆の嘲笑から逃げるように舞台を去った。

 出番が回ってきた現首相の学習能力や如何に…とその出方を見守ってきたが、こちらも器量は同じく「大根」の構えか。

 国交正常化に向けて現状を打開すべきと、自民・民主・公明など超党派国会議員による訪朝団派遣の構想が語られている。「制裁」を解除すべきとの世論も高まりつつある。

 英断が求められている。(韓昌健記者)

[朝鮮新報 2008.4.9]