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朝鮮の論調 08年 4月

 先月末の南朝鮮軍部による「先制攻撃」発言を受けて迎えた4月。1日早々に李明博政権を名指しで批判する労働新聞の論調が配信された。一方、8日にはシンガポールで朝米会談が行われた。続く22日には米核専門家代表団が訪朝(〜24日)。「協議は真摯かつ建設的に行われ、進展があった」と伝えられた。また、日本では11日に対朝鮮「制裁」の延長が閣議決定された。

−対米 会談での協議進展を強調

 8日にシンガポールで朝米会談が行われた。先月28日に発表された外務省代弁人談話で「ブッシュ政権の態度はわれわれを失望させている」と表明したあとのことだけに、注目を集めた。

 会談に関する報道は9日発で伝えられた。外務省代弁人は記者の質問に答え、「6者会談10.3合意履行で提起される問題が真摯に討議された」とし、「会談の結果、合意履行を完結させるうえでカギとなる米国の政治的補償措置と核申告問題で見解の一致を遂げた」ことを明らかにした。また、「今回のシンガポール合意は朝米会談の効果性をそのまま示している」とも述べた。

 22〜24日には米国の核専門家代表団が訪朝した。外務省代弁人は24日に記者の質問に答え、「核申告書の内容をはじめ10.3合意の履行を締めくくるための実務的な問題が討議された」とし、「協議は、真しかつ建設的に行われ、前進があった」と語った。

 朝鮮中央通信は23日、IPU総会全体会議で行われた朝鮮最高人民会議・崔泰福議長の演説内容を報じた。演説は、「米国の敵視政策により朝鮮半島には常に緊張状態が醸成されている」と前置きしたうえで、「米国が対朝鮮敵視政策を撤回し平和的に共存しようとするならば、米国と友邦になれることを(朝鮮が)公式的に繰り返し表明してきた」事実に言及した。

−対日 「制裁」延長の撤回を要求

 対朝鮮「制裁」延長期限(4月13日)が迫る中、2日に報じられた労働新聞の記事では、「日本が今になって6者会談と何ら関係のない、すでに解決済みの『拉致問題』を対朝鮮『制裁』実施の前提条件として掲げるのは、朝鮮半島非核化過程を破綻させ、状勢を対決局面へと導くための挑発的な策動である」と釘を刺し、「無分別な総連弾圧はその一つの現れである」と強調した。

 13日からの「制裁」再延長を受けて労働新聞は、5日後の18日に非難記事を掲載した。そこでは、「これによって反朝鮮対決政策を執拗に追求する福田政権の、非理性的で時代錯誤的な敵視姿勢がさらにはっきりと露わになった」との見解を示した。

 また、記事は「(「制裁」延長の)本質は、朝鮮に対する意図的な政治的挑発である」とし、「朝・日関係を極度に悪化させ、6者会談を破綻させて、総連と在日同胞に対する政治的弾圧と人権侵害を引き続き強行するという露骨な宣言である」と断じた。

 労働新聞は19日にも批判記事を掲載し、「時代の流れと民心の要求を拒絶し、すでに断罪された安倍前政権の政策をそのまま踏襲するなら、自滅しかもたらされないであろう」と警告した。

 24日には、4.24教育闘争60年の歴史を振り返る長文の記事が配信された。

 そこでは4.24教育闘争を指して「世界海外僑胞闘争史にかつてなかった、最も大規模な権利擁護闘争であり、民族教育の自主的権利を血で守り抜いた誇らしい成果であった」と指摘。また、「在日朝鮮人運動の生命線である民族教育を圧殺しようとすることは、すなわち総連と在日同胞を窒息させ、ひいては朝鮮の尊厳と権威を毀損する犯罪行為である」と非難し、法的および道徳的責任を果たすよう促した。

−対南 李明博大統領 名指しで「逆徒」と非難

 南朝鮮軍当局による「先制攻撃」発言を境にして、4月に入ってからのち、一気に対南非難の度合いが強まった。

 1日付労働新聞論評員の記事を皮切りに、李明博大統領個人を「逆徒」と名指しし、「親米追従」や「非核・開放・3000」政策を批判する内容が連日のように続いた。

 また、「先制攻撃」発言の取消と謝罪を求めた北南将官級会談北側代表団団長の通知文(3月29日)を拒否する回答通知文を送った南朝鮮軍当局に対して、北の立場を説明する通知文の再送が3日に報じられ、すべての北南間の対話と接触中止、通行遮断を通知した旨の内容が明らかにされた。

 大統領選以前にも李氏への批判論調はあった。昨年5月26日に配信された労働新聞の記事や祖平統代弁人談話(8月30日)、民主朝鮮の記事(9月16日)などでは、当時大統領候補だった李氏を「親米事大売国奴」「反統一逆賊」といった表現で糾弾し、民族の和解と団結を否定し、平和と統一に反対する逆賊と断じている。

 また、米韓首脳会談(4月19日)での「連絡事務所設置」発言も取り上げ、「この問題はその昔、南の歴代政権が北南関係を国家間の関係として規定し、分断を永久化するために持ち出したもの」(労働新聞26日付)と指摘、「反統一骨董品」との表現を用い、「この発言は、彼の不安感と焦燥感の集中的な表れである」と切り捨てた。

 日本の対朝鮮「制裁」延長を決めるタクトが再度、振られた。指揮者は、昨年の自民党総裁選で「対話」を掲げた人物である。前任者の末路から相応の教訓を得るどころか、かえって自ら進んで同じ轍を踏んだ。

 相変わらず6者会談に水をさしている。そもそも、何のための6者会談なのかが、まだよくわかっていないのではあるまいか。

 数々の内政問題に忙殺され、自己の政治生命維持に汲々とするような現状では、6者会談まで思考が回らないのも無理からぬことか。正常な状況判断もできないまま、取り巻きの「献策」にただただ首を縦に振るだけであろう。

 歳月は人を待たない。日本の「目算」をよそに、6者プロセスは朝米関係を軸にして確然と進行していく。(韓昌健記者)

[朝鮮新報 2008.5.9]