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千葉・八千代市「つつじ祭り」に参加して 「キムチとチヂミ」で追悼、支援

 2008年5月3日、私は八千代市で開催された「つつじ祭り」を、抑えがたい感動に震える思いで迎えました。若葉が萌え風薫る春爛漫の季節の中で開催された「コリアン料理サークル」が主催する「キムチとチヂミ」の模擬店をどうしても成功させたいという切実な願いを持っていたからです。

 その理由の一つは、「料理教室」の成果をこの模擬店で披露し、利益を朝鮮学校支援の一助にしたいという願いからでした。教育こそ国家成り立ちの基礎です。純真無垢な子どもたちの輝ける未来のために、学びやすい環境を作ってあげなければなりません。

手作り「キムチとチヂミ」の模擬店のようす

 もう一つは、亡くなられた朝鮮の方々への慰霊の気持ちでした。

 「つつじ祭り」が開催されるこの場所は八千代市萓田と呼ばれ、関東大震災で犠牲となられた朝鮮の方々が葬られております。

 現在は、一部が「ゆりのき台」という新興住宅地に姿を変えて20年、約8万人が住んでいます。大きな街になりました。私の友人夫妻は20年以上、毎月葬られた場所を巡回して供養花と敬拝を捧げることを欠かしませんでした。

 この季節、つつじが咲き乱れるこの場所に立つと、我知らず胸が熱くなるのです。ここに朝鮮の方々をお迎えしたら、亡くなられた方々が少しは慰められるかしらと思い始めて、はや20年を過ごしました。切なる願いが天に届き、突然このような形でみなさまをお迎えできたのですから、この感動に震えてきました。

 無念と恨みを抱えて逝かれた方々に、キムチの匂いをプンプンさせて、焼きたてのチヂミの香りと、懐かしい故郷の民謡や円舞曲やウリマルの会話を、吹き渡る風に乗せて届けたかったのです。

 当日は昼まで小雨が降ってしっとりと街が濡れましたが、私は亡くなられた方々が喜んでくださったのだと感じています。涙なしに接することのできない歴史がそこにあるからです。

 四千数百年の歴史が生んだ朝鮮半島の伝統と文化は、世界に類を見ないほど叡智に優れています。礼儀と儀式に始まり終わる、情の厚い民族です。とくに、世界の同胞たちとは異なる環境で生活する在日のみなさまは、新しい文化を作り出して世界に発信しています。

 その代表がキムチです。朝鮮半島のものでありながら、日本を経由して世界へ飛び出した健康食品です。キムチ外交は、国際交流の担い手になっているのだなあと感じました。

 亡くなられた方々も喜んでくださり、民族の誇りを持ち続けていただけるように切望しております。

 萓田を訪れてくださったみなさまが、慰霊と供養の新しい歴史を記してくださったと、深く感謝いたします。そして、利益を朝鮮学校にお届けできることをうれしく思います。

 心からお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。(千葉県八千代市 石井忠子)

[朝鮮新報 2008.5.30]