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北京で朝米協議 10.3合意履行、最終局面に

「次の段階」見据えた行動調整

 6者会談で合意された9.19共同宣言履行の「第2段階」が最終局面に入った。朝鮮代表団団長の金桂官外務省次官と米国代表団首席代表のクリストファー・ヒル国務省次官補が5月27、28の両日、北京の米大使館で協議を行った。協議では「第2段階」の行動措置が示された10.3合意の履行を完了させる「最後の手順」について意見が交わされたようだ。

具体的な手順

 金桂官次官とヒル次官補が対面するのは、4月上旬シンガポールで行われた朝米会談以来、1カ月半ぶりのことだ。会談では「10.3合意履行を完結させるうえでカギとなる米国の政治的保証措置と核申告問題で見解が一致」(朝鮮外務省スポークスマン)、その後、米国務省のソン・キム部長が二度訪朝し、朝鮮側は寧辺核施設の稼動記録などの資料を提供した。

 今回、北京で行われた朝米対話は交渉の場というより、「第2段階」を完了するため、残された技術的問題を確認することに目的があったようだ。「カギとなる問題」は、すでに朝米間で合意している。10.3合意により、朝鮮は寧辺核施設を無力化し、現存する核計画に関する申告を行い、米国は「テロ支援国」指定解除、「敵性国通商法」適用終了などの政治的措置を講じることになっている。金桂官次官とヒル次官補は、合意履行を完結させる措置の具体的な手順、日程など実務問題を話し合ったとみられる。

 協議終了後、ヒル次官補は記者団に「(今回の)主なテーマは核申告の検証と、これに関する協調体制を(朝米間に)つくること」と語った。ヒル次官補の発言の前提となっている事実に視点を合わせれば、合意履行の障害となっていた核申告をめぐる対立が解消し、朝鮮側の行動と同時に行われる「テロ支援国」指定解除も、すでに結論が出ていることは明らかだ。

「第2段階」の完了

 朝米は10.3合意に示された「第2段階」のゴールと「次の段階」のスタートラインを見据えている。今後の展開を描きながら、残された手続きを着実に進めている。ヒル次官補は、今後、数週間内に「(核申告の検証に関する)技術専門家による会合」があるだろうと語り、6者合意に定められた朝鮮に対するエネルギー支援を議論する必要性についても指摘した。

 10.3合意履行の最終局面で朝米が、今までのプロセスをあらためて検討する姿勢を示しているのは、「第2段階」完了時の状況が「次の段階」における行動の枠組みを決定するからだ。10.3合意履行が完結すれば6者会談の再開、新たな行動計画の開始へと、事態は一気に進展する可能性がある。

 しかし「次の段階」では、朝鮮半島非核化に向けたさらなる目標を掲げることになる。各国の行動計画と合意履行のプロセスは、従来よりも長期的な展望に立って進められることが予想される。

 米国の場合、大統領選挙を控えた時期に「次の段階」を準備しなければならない。ブッシュ大統領の任期中にすべての懸案問題が解決されないとしても、従来の目標を継続的に追求するための「交渉と行動の仕組み」は作っておかなければならない。次期政権に既存の路線を引き継がせるためには、必ず実現しなければならないステップだ。

 6者合意履行の原則である同時行動はすべての参加国に適用される。各国の行動措置は均衡が保たれなければならない。例えば、ヒル次官補も北京で発言したように10.3合意履行の最終局面で、朝鮮側が、他の参加国の義務事項であるエネルギー支援の遅れを問題視するのは当然だ。

窮地に立つ日本

 現時点では、核申告に対する検証とこれに関する協調体制も技術的問題だといえる。米国にとって、さらに厄介な政治的難題は日本の処遇であろう。日本は対朝鮮敵視政策を続け、6者合意に沿ったエネルギー支援も拒否している。そして拉致問題を口実に「テロ支援国」指定解除にブレーキをかけたが、米国が解除に踏み切ることが既成事実として明らかになるにつれ、窮地に立たされた。

 米国としては同盟国である日本が「第2段階」完了後の国際情勢の変化に取り残された場合の利害関係を考慮せざるをえないだろう。とくに突然の局面転換は弊害が大きい。今回、ヒル次官補は金桂官次官との協議で「日朝関係改善の重要性を強調」したと記者団に再三アピールした。10.3合意履行の最終局面で日本が辛うじて6者の枠組みに留まっていることを確認させたのは、米国務省次官補のコメントだけであった。

 朝米会談が行われるたびに繰り返されてきたヒル次官補の「対日メディア外交」は、米国が拉致問題に関する日本の主張を支持したというより、そうした言動をとらなかったことに対する弁明のようなものであった。これまでも朝鮮は米国との会談で、拉致問題の解決過程を含めた朝・日関係の現状について自国の立場を明確に伝えたという。米国も、日本が旧態依然とした態度を取り続けることを望まないであろう。

 逆説的ではあるが、ヒル次官補の発言にいつになく「日朝関係」のフレーズが多く登場した今回の朝米交渉は、10.3合意の履行完結が近いということを示している。日本は苦しい立場に追い込まれ、最終判断を迫られている。(金志永記者)

[朝鮮新報 2008.6.2]