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実質的な関係進展のカギ 試される福田首相のリーダーシップ

 6者会談10.3合意の履行が最終局面に入る中で国際社会での孤立が浮き彫りとなった日本は、今回の実務会談を通じてようやく外交的な選択肢の幅を広げることができた。しかし会談の現場で合意がなされても、それを次の段階の行動につなげる日本側の政治的決断が伴わなければ、朝・日関係の実質的な進展は期待できない。

方向性の再確認

 世論の関心は「よど号」関係者の帰国など個別の事案に傾きやすいが、今回の会談での合意は朝・日間の外交レベルでの変化をもたらすだろう。今回の会談でこう着状態打開の糸口を探しあてた双方が今後行う作業は、「対話の継続的な推進」だ。朝・日間の対話は当然、「平壌宣言に沿った早期国交正常化」という共同目標を提起することになるだろう。これは事実上、昨年9月にウランバートルで行われた作業部会において双方が見解の一致を見て内外に公表した外交交渉の枠組みを再確認したものだ。

 ウランバートルで双方は、具体的な行動措置を協議するために「可能な限り作業部会をひんぱんに開催する」ことに合意したが、結局実現しなかった。会談の数日後、日本では安倍首相の辞任劇があった。対朝鮮強硬策を追求した前任者の悲惨な末路を目撃しながらも、後を継いだ福田政権は従来の政策基調を是正しようとはしなかった。

 安倍前首相が任命した「拉致内閣」の基本メンバーをそのまま受け継いだ福田首相は思い切った選択ができない、参議院での与野党逆転という「ねじれ国会」が首相の行動を制限している、などの観測もあるが、客観的に見れば、当事者に弁明の余地はない。

 たとえば昨年来、対朝鮮「制裁」の延長措置を二度にわたって断行したのは他ならぬ福田政権だ。実際に朝鮮側は福田政権の「仮面ははがれた」(朝鮮中央通信、3月18日)と指摘、その政策の誤謬を断定するに至った。前任者のように「対朝鮮圧力一辺倒外交」に陥っているとの非難をメディアを通じて繰り返してきた。

政治家の役割

 日本で政権が交替してから約9カ月が経った。北京会談の現場周辺では、「今回の会談が重要なきっかけになりえる」という話も出た。今回の合意が、たとえ昨年ウランバートルで合意した朝・日関係進展のロードマップを再び確かめたレベルであったとしても、それが福田政権下でなされたということに新たな意味があるという見方だ。福田政権発足後、朝・日間で公式会談が開かれたのは今回が初めて。当然、福田首相は今回の合意に対する責任を負うことになる。

 今回の会談は宋日昊・外務省朝・日国交正常化会談担当大使と斎木昭隆・外務省アジア大洋州局長の北京接触(7日)を通じて決まった。接触後、斎木局長は会談当日まで一時帰国した。おそらく斎木局長の報告に基づいて、日本の政策担当者の中で会談議題の設定や合意内容に関する調整作業があったと思われる。

 過去にも朝・日双方の外交官は両国間のこう着状態を打開するために動いたことがある。朝鮮半島非核化のロードマップが明示された9.19共同声明が採択された後には、中国で接触し政府間会談の再開を準備したことがある。昨年は6者合意履行に合わせてウランバートルで両国関係の「リセット」を試みた。

 ところが両国関係はなかなか改善されなかった。外交官が交わした約束が簡単に覆されるケースが多かった。日本側からは、官僚にできることは現状打開の条件と環境を整えることしかなく、実際に行動を起こすか否かは結局のところ政治家の役割だと指摘する声も少なくなかった。

 10.3合意が履行されれば、東北アジアの情勢は新たな発展の様相を帯びる。今回の実務会談には朝鮮側も真しな姿勢で臨んだ。大勢に逆行して外交的窮地に追い込まれた日本が、今回の合意を起死回生の機会にすることができるか否かは政策担当者の決断にかかっている。

 日本は会談の結果を北京の現場で明らかにせず、わざわざ首相をはじめとする政府閣僚らに対する報告を経た後、官房長官の会見を通じて公表する手順を踏んだ。国内の複雑な政治情勢下で政権運営が困難であったとしても、朝鮮半島をめぐる国際情勢は日本の内部事情に関係なく進展することが予想される。福田首相の政治的リーダーシップが試されている。

[朝鮮新報 2008.6.18]