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そこが知りたいQ&A−米の政治的補償措置の意味は?

敵視政策転換の第一歩、「テロ支援国」指定解除/「敵性国通商法」適用終了

 米国が朝鮮に対する「テロ支援国家」指定解除のプロセスに着手し、「敵性国通商法」の適用を終了させることを宣言した。6者会談10.3合意に基づいた今回の措置は米国の朝鮮敵視政策の転換を具体的行動で示すものとして、朝鮮半島非核化の実現と朝米間の信頼醸成を促進するうえで重要な意味を持つ。朝鮮側は核問題の根源である朝米敵対関係の解消に向けて、米国側の敵視政策撤回を一貫して求めてきた。米国の今回の政治的措置は、そのような政策転換の第一歩だといえる。措置の内容と意義、今後予想される変化などについてQ&Aでみた。

 Q 米国による「テロ支援国家」指定とは、どのようなものなのか。

 A 米国は1987年11月に起きたKAL機失踪事件を機に、翌88年1月、朝鮮を「テロ支援国家」に指定した。以来、「テロ支援国家」指定は米国による朝鮮敵視政策を合理化する口実として機能した。

 米議会は輸出管理法、武器輸出統制法、対外援助法などの国内法に基づき、「外国の政府が国際的なテロ行為を支持したか否か」を決定する権限を国務長官に付与している。この権限の行使が「指定」と呼ばれるもの。これにしたがって米国務省は毎年発表する「世界テロに関する年次報告書」の中で、「直接テロ活動に従事するか、あるいは武器、隠れ場所、財政的支援などの提供、またはそれ以外の方法で国際的なテロ行為を支援した国」という規定を提示し、「テロ支援国家」のリストを挙げている。

 米国は「テロ支援国家」に指定した国々に対して、大きく四つの分野で制裁措置を科している。当該国に対する▼武器の輸出禁止▼汎用品目(軍需分野に転用可能な民需物資)の輸出禁止▼貿易の規制▼対外援助の禁止措置などが主な内容だ。

 「テロ」という言葉同様、「テロ支援国家」という規定も米国による恣意的な「レッテル張り」の意味合いが濃い。自国の意にそわない国々に対する圧力の手段として利用してきた経緯があるからだ。

 Q 「敵性国通商法」の内容は。

 A 今回の措置直前まで、「敵性国通商法」の適用対象は朝鮮とキューバの2カ国のみだった。同法は米国と交戦状態にある国に適用されるもので、米大統領に当該国に対する貿易の禁止と経済制裁の権限を付与する。1950年、朝鮮戦争勃発直後に同法が適用されて以来60年近くも両国間の貿易や投資、金融取引、交易活動などに対する包括的な禁止措置が続けられている。

 Q 今回の措置が持つ意味は。

 A 朝鮮側は「テロ支援国家」指定解除と「敵性国通商法」の適用終了について、「6者会談合意履行の完結において重要なカギとなる政治的補償措置」(外務省スポークスマン談話、4月9日)だと指摘したことがある。米国の敵視政策の象徴であり、ブッシュ政権の政策転換の意志を測る物差しだというのが朝鮮側の立場だ。

 メディアの多くは、もっぱら制裁解除による「経済的恩恵」に焦点を合わせて今回の措置の意味を説明しているが、これは朝鮮半島核問題の本質を理解していないか、もしくは意図的にわい曲している。

 クリントン政権末期の2000年、朝米共同コミュニケの発表に先だって両国はテロ反対の立場を表明した共同声明を発表(10月6日)した。同声明の中で米国は「テロ支援国家のリストから朝鮮を削除する意思」を表明した。

 しかし、翌年発足したブッシュ政権は前政権を全面否定する「ABC」政策(クリントン以外なら何でも、を意味するAnything But Clintonの頭文字をとったもの)を掲げ、合意の履行に背を向けた。圧迫と制裁を強化し、ついには朝鮮を核実験にまで追いやった。このような経緯を見るとき、ブッシュ政権が今回、「テロ支援国家」指定解除の措置を講じたことは、過去の誤った政策路線を是正することに他ならない。

 Q 朝鮮側の評価は。

 A 外務省スポークスマンは6月27日、今回の措置を肯定的に評価、歓迎しながら、「半世紀以上われわれを敵国に規定し適用してきた主だった制裁を解除した米国の今回の措置は今後、対朝鮮敵視政策を完全かつ全面的に撤回する方向へ向かわなければならない」と強調した。

 Q 経済的な側面で今後、どのような変化が起こるのか。

 

制裁の内容

制裁解除後に予想される変化

「テロ支援国家」(1988年指定)

◎輸出管理法、武器輸出統制法、対外援助法、輸出入銀行法、国際金融機関法など適用
⇒貿易制裁、武器輸出禁止、2重用途品目および技術の輸出禁止、対外援助禁止、国際金融機関による借款および支援の禁止、一般特恵関税制度の適用禁止など
・国際金融機関からの借款、支援
・米国企業をはじめ海外企業の対朝鮮輸出および投資制限緩和
・コンピュータ、ハイテク製品などの2重用途品目の輸出統制緩和
・米国の対朝鮮公式援助
・朝米間の商業的金融取引活性化など

敵性国通商法」(1950年適用)

◎貿易、投資などの商業取引、金融取引、交易活動に対する包括的な禁止、適用国と交易した国に対する米国との交易禁止 ・米国内の資産凍結解除
・朝鮮製商品の輸入制限撤廃など

 A 米国はクリントン政権時代にも「敵性国通商法」に基づく対朝鮮経済制裁を一部緩和した。一方で、現在までさまざまな国内法を相互に組み合わせて、朝鮮に対する多層的な制裁を継続している。例えば、「テロ支援国家」指定に関連する制裁の中には、その他の法に基づく制裁と密接にリンクしているものが多い。したがって今回の制裁解除措置は全面的なものではなく、その効果も当面、限定的にならざるをえない。

 しかし米国による経済制裁がある程度緩和される今回の措置で、朝鮮の対外経済活動を取り巻く環境にも変化が起こると思われる(別表参照)。

 また、これは米国にとっても、朝鮮との経済関係を正常化するうえで前提となる措置だといえる。朝米双方は昨年、マカオの「バンコ・デルタ・アジア」(BDA)の凍結資金問題が解決した後も、ひんぱんに2国間協議を行い、両国間の金融関係正常化と朝鮮側の国際金融システムへの参入、違法な金融活動の防止に関する問題などを論議してきた。米国としては、このような協議で話し合われた内容を実現させるためにも、朝鮮に対する制裁措置を解除しなければならない必要性がある。(李相英記者)

[朝鮮新報 2008.7.4]