在朝被爆者問題 向井高志・原水禁副議長に聞く |
「忘れてはいけない過去清算」 被爆者支援に着手、世論アピールも 【平壌発=文−姜イルク、写真−鄭茂憲記者】「在朝鮮被爆者支援連絡会代表団」が6月24日から26日まで訪朝し、現地で原爆被害者の実態を調査した。昨年12月に結成された在朝被爆者支援連絡会は、被爆者援護法に基づく日本政府の支援を唯一受けることができないでいる在朝被爆者のために支援活動を展開している。連絡会には広島原水禁、長崎原水禁、在日朝鮮人被爆者連絡協議会、ピースボートなどが加わっている。代表らの訪朝は、連絡会結成以来初めてのこと。代表らは朝鮮滞在中、反核平和のための朝鮮原子爆弾被害者協会の関係者と会い、互いの計画を報告、今後の活動について議論を交わした。代表団団長である在朝鮮被爆者支援連絡会の向井高志会長(原水爆禁止日本国民会議副議長)に話を聞いた。 −今回の朝鮮訪問の目的は。 朝鮮にいる被爆者の実態を調査、把握し、彼らに対する日本政府の謝罪と賠償を早期に実現するための条件と環境を整えることにあった。 また、朝鮮側と日本の平和人権団体、支援者の連携を強化するという目的もあった。究極的には、日朝平壌宣言に基づく国交正常化交渉の前進を双方の政府に促し、同時に民間レベルの交流を強化していくための訪問だった。 −朝鮮を訪れた印象は。
今回の訪朝を通じて、被爆者の実態を詳しく知ることができた。 被爆者1911人中、80%が死亡し、約20%にあたる382人が生存しているが、彼らは高齢であり、健康状態は極めて悪化しているという報告があった。 被爆者の証言を聞き、彼らが当然受けなければならない日本政府の支援を受けることができず、精神的、肉体的な苦痛の中で高齢化している実態を把握することができた。この事実を重く受け止めている。 日本政府に対する要請行動をどのようにして展開すべきなのか、座視したままでは問題は解決しない。日本政府の態度を是正させることを考えなければならない。原水爆禁止日本国民会議、在日朝鮮人被爆者連絡協議会などと連帯しながら日本での活動をさらに強化していきたい。 −今後どのような活動を展開するのか。 まず日本政府に対する要請活動を強化していく。私たちは在朝被爆者の問題を日本の過去清算において、決して忘れてはいけない課題であると規定している。今後、急速な進展が予想される日朝交渉の流れの中で問題の解決を促していきたい。 次に朝鮮の団体との連帯を強化する一方、在朝被爆者に対する支援に着手していきたい。具体的には、広島県医師会などとの連携の下、医療陣を朝鮮に派遣することを予定している。 また、在朝被爆者支援のための募金活動も展開していく。訪朝団の派遣や交流事業を深めていくことも計画している。 同時に、日本における在朝被爆者支援運動を強化していかなければならない。 現在の在朝被爆者の実態、日本政府の不当な対応などを広くアピールし、世論を喚起させながら中央と地方で支援運動を展開していく。 −在朝被爆者問題の本質とは。
朝鮮半島の北側にいても、南側にいても、またアジアや米国などどこにいても、被爆者は被爆者だ。このことについては、日本政府も認めている。日本政府は当然、朝鮮にいる被爆者についても責任を果たさなければならない。 日本では関連法が改正され、在外日本大使館、領事館でも被爆者申請をできるようになった。しかし、実際には在朝被爆者に対する救済は実現しなかった。 2001年3月、在朝被爆者問題に関連して日本政府が代表を平壌に派遣したことがあるが、それ以来、政府は何もしてこなかった。 在朝被爆者は日本によって強制連行され、原爆の被害を受けた人びとだ。日本政府はこの歴史的事実を直視して責任をとらなければならない。 −問題解決のカギは。 私たちは日本政府が過去の過ちを清算することによって、日朝国交正常化を早期に実現しなければならないと一貫して主張してきた。 強制連行、日本軍「慰安婦」、そして在朝被爆者問題の解決に基づいた国交の正常化だ。 在朝被爆者問題の解決は、これ以上引きのばすことのできない切迫した課題だ。被害者たちは高齢化しており、明日の命をつないでいくことも困難な状況にある。一日でも早く、在朝被爆者に対する支援を実現しなければならない。 在朝被爆者問題が未解決なのは、日本政府の責任だが、この運動を展開している一人として、日本で効果的な運動を活発に展開してこれなかったことについて在朝被爆者に申し訳ないという気持ちもある。 私たちは、今後さらに運動を強化していくと被害者に話した。運動を強化することによって、彼らの期待と要求に応えていきたい。 [朝鮮新報 2008.7.9] |