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朝鮮の論調 08年 7月

 6者会談団長会談が久しぶりに開催された(7月10〜12日、北京)。6項目からなる報道発表文が発表され、10.3合意履行を完結させる方法を議論し、朝鮮半島非核化の検証体制樹立で合意した。また、23日には6者の外相がシンガポールで非公式ながら初会合を開いた。7月31日から8月2日までは、ソン・キム6者会談担当米国特使と朝鮮外務省の李根米州局長が検証議定書の細部協議を北京で行った。

−対米 「いまは対話の努力をすべき時期」

 1日、「戦争騒動は対話と両立しない」と題する労働新聞の記事が配信された。記事は、「今は、いつにもまして朝米双方が、対話の雰囲気と相互信頼を保障するために、格段に努力をしなければならない時である」と指摘したうえで、米好戦勢力の軍事策動を「対話の雰囲気を壊し、朝鮮半島情勢を戦争局面へと導くための犯罪的術策以外のなにものでもない」と非難した。

 4日には「全ての参加国の義務履行が正確に完結されなければならない」と題する外務省代弁人の談話が発表された。

 談話は、朝鮮のこれまでの合意履行過程にまず言及し、「ほかの参加国も当然、自らの義務を信義にのっとって履行することで、われわれの努力に応えなければならない」と主張した。

 そして、「10.3合意がなされたとき、手をあげて賛成したにもかかわらず、履行への参加を拒否している国がある」と暗に日本への非難を含ませ、「行動対行動」原則の基本要求として、「全ての参加国の義務履行が正確に完結されてこそ、10.3合意の履行が終了し、次の段階の問題討議が円満になされる」ことを強調した。

 9日には「両面術策は通じない」と題する民主朝鮮の記事が配信された。

 記事は、「朝鮮半島非核化を口に出して言うだけの時期は過ぎた」と前置きしたうえで、「行動だけが6者会談に臨む各国の本心と態度を検証する唯一の基準だ」と指摘し、「米国が心底、朝鮮半島の非核化を望むなら、きちんと行動し、われわれの信頼を得なければならない」と強調した。

 7月は、米国に対して「行動」を促す内容が目立った。6者団長会談に関しては、13日に合意内容だけを簡単に流しただけで、これといった言及はなかった。

−対日 「6者に参加する名分があるのか」

 19日、「会談参加国としての名分があるのか」と題する報道がなされた。

 報道は、日本の外相や官房長官らが「拉致問題」に進展がないかぎりエネルギー支援は行わないと相次いで発言していることに言及し、「6者会談の進展をひたすら妨げようとする笑止な妄動」と一蹴した。

 そして、日本だけが合意履行を拒んでいることを指して、「自己の利己的目的のためには国際的な合意など眼中になく、初歩的な道徳も知らない日本固有の行為である」と断じた。

 また、拉致問題は朝鮮半島の核問題と何ら関連がなく、6者会談で論議される問題ではないことをあらためて強調した。

 そして、「現実は、日本が6者会談に引き続き参加する必要があるのかどうかということを再び問うている」と締めくくった。

 そのほかには、独島強奪策動を非難する談話が祖国戦線と歴史学学会から発表され、「朝鮮の尊厳と自主権に対する乱暴な侵害」などと一様に主張し、「李明博政権の対日外交姿勢にも一因がある」との指摘もなされた。

 今月は配信が8回と少なかった。

−対南 「首脳会談云々、一顧の価値もない」

 5日、祖平統書記局の長文におよぶ詳報が発表された。

 内容は、北南合意に背く李大統領を批判するもので、「民族の前に不幸と悲劇だけをもたらす売国逆賊で北南関係と統一を妨げる癌的な存在である」と厳しく非難した。

 7日には、祖平統代弁人が記者と会見。「李大統領は北南首脳対面と宣言を全面否定、全面無視した」と指摘し、「首脳会談を云々するのは言語道断」と述べた。

 労働新聞も13日付でこの問題を取り上げ、「『対話再開』演説は一顧の価値もない」と題する記事を掲載した。

 記事は、「李大統領は北南宣言と合意をどのように履行していくのかを『真摯に協議する用意』があるだの何だのと言っているが、実践方途まですべて示されている宣言を前にして、ほかに何の協議が必要だというのか」と痛烈に批判した。

 労働新聞は28日付に「歴史的な北南宣言の履行は時代の要求」と題する記事を掲載し、「6.15共同宣言と10.4宣言に対する立場は、愛国と売国を分ける試金石になる」と主張した。

 また、30日付にも「実用主義」を批判する記事を掲載し、「『実用主義』はわが民族同士の理念を全面否定する対決論」だとあらためて強調。「李大統領が『実用』の看板のもと、北南関係を民族同士の関係ではなく国家間の関係として扱おうとしていることが明白に立証された」と指摘した。

 サスペンスドラマにおいて犯人を捜すときは、「誰が最も利益を得たのかをまず疑え」というのが定石らしい。

 この図式を用いて、いわゆる拉致問題を考察していけば、騒動の「犯人」がすぐにわかる。

 拉致騒動で利益を得ているのは誰なのか。

 票を獲得した政治家、支持率が上がった内閣、視聴率を稼いだテレビ、番組出演が増えた評論家、講演回数が増えた大学教授、部数が伸びた新聞、活動の名目を得た右翼団体、再軍備の口実を設けた保守勢力。

 …と、このように指を折っていけば、彼らにとっての拉致問題とは、すでに単なる飯のタネでしかないことがよくわかる。彼らは「解決」など望んでいない。「解決」させないために熱を上げている。

 「圧力」に固執するのも、6者会談に水を差すのも、すべては「金の成る木」を確保し続けるための猿芝居であろう。束になって「拉致利権」に群がる様は、もはや滑稽ですらある。

 「拉致騒動」−。ただただ、白々しい。(韓昌健記者)

[朝鮮新報 2008.8.8]