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〈朝・日政府間実務会談〉 日本の約束違反に不信感

「関係改善の意志」見極め

 【瀋陽発=金志永記者】朝・日政府間実務会談が11、12の両日、中国・瀋陽で開催された。会談では拉致問題再調査の形式と方法、日時などが議論され、合意に達した。しかし、日本側の言行不一致に対する不信感と関係改善の意志に対する朝鮮側の疑心が払拭されたわけではない。

正常化のための会談

会談の合意内容を発表する朝鮮側代表団

 「双方が一度約束したことを守らなければ、会談をしないよりもさらに悪い結果をもたらすことになる」

 11日の会談後、朝鮮側団長の宋日昊・外務省朝・日国交正常化会談担当大使は日本に対する不満を露わにした。

 日本は6月に北京で行われた朝・日政府間会談で約束した「制裁措置の部分解除」を実行に移さなかった。今回の会談で朝鮮側が日本側の約束違反を厳しく追及したのは、それが両国関係改善に関する日本側の意志と直結する問題だからだった。

 朝・日政府間実務会談は、拉致問題を論じるだけの場ではない。平壌宣言にもとづき、過去を清算して国交正常化を実現するための会談だ。

 これについては、日本側も認めている。会談では日本側も朝・日双方が協議を行う最終目的について、異論を唱えていない。

 朝・日関係が悪化したのは、日本が拉致問題を口実にして朝鮮に対する対決政策を強行したからだ。制裁措置はその具体的な表現だといえる。

 日本が朝鮮との関係改善を望むのならば、まずは率先して行動するべきであり、制裁と対話は両立しないというのが朝鮮側の立場だ。

 ところが日本政府は自ら動くことができない状況にあった。その打開策を模索したのが6月の北京会談だった。朝鮮が拉致問題の再調査を実施するとしたことで、日本政府は行動の選択肢の幅を広げた。しかしその後、躊躇して制裁措置を全面解除する決断に至ることはできなかった。

 北京会談直後、朝鮮国内の専門家の間では、「制裁措置の部分解除」は福田政権の脆弱性とそのリーダーシップの限界を示しているという見解が提示されたが、その憂慮は的中したといえよう。日本政府は「約束対約束」をうんぬんしながら、強引な論理を持ち出し、部分解除の措置さえも講じなかった。

反対勢力の策動

 朝鮮側との約束を破ったことについて日本政府は、拉致問題で硬直した世論を考慮せざるをえなかったと弁明するかもしれないが、事態はさらに深刻だ。

 宋日昊大使は、北京会談以後、朝・日関係がかえって悪化したと述べ、「拉致問題を口実に関係改善を望まない人びと」の存在について指摘した。

 朝・日間の関係改善を望まない人びとの反対によって政府が実際に動くことができないのであれば、会談をこれ以上開催する必要がないと朝鮮側は判断するだろう。制裁の一部解除も実施することができなかった日本政府が、平壌宣言を履行して過去の清算に基づく国交正常化を実現することができるとは到底考えられないからだ。

 日本側が制裁解除という行動に移らなかったのは、朝鮮側が動かなかったからだという、いわゆる「行動対行動」論はまったくの詭弁だ。

 福田政権が行動を留保しなければならなかった理由は、朝鮮ではなく日本内部にあった。日本政府が朝・日関係改善に反対する勢力に縛られているかぎり、会談で議論された拉致問題の再調査も順調に行われる保証はない。

 朝鮮側は自らが約束した再調査を積極的かつ誠実に進めていくだろう。

 しかし拉致問題を、朝鮮との対決を煽り、日本による過去の清算を妨害するための口実としてきた勢力が、「問題の解決」など望んでいないことは明白だ。再調査の過程でさまざまな言いがかりをつけ、「結果」が出ることを今後も先送りにさせようとするかもしれない。

行動の基準

 福田政権は朝鮮に求めた再調査の帰結を正確に定めるべきだろう。そして政府間実務会談の目的に合致するよう、平壌宣言履行の環境作りに向けた行動を起こさなければならない。

 今まで日本国内では、政府もマスコミも拉致問題の「決着」について公に語ったことがない。今回、日本側が再調査を要求したことは、「決着」をはかるという立場を表明したものだともいえる。しかし朝・日関係が悪化した中で再調査の「結果」を得れば、その内容のいかんを問わず反対勢力は両国政府の努力を水泡に帰そうとやっきになるだろう。

 今回の会談で朝・日双方は「互いの関心事項について関係改善という見地から協議し誠実に努力」することで合意した。

 拉致問題の再調査を契機に関係改善の突破口を開いていくのか、それとも今後も関係を悪化させていくのか―朝鮮側は福田政権が拉致問題の再調査後、朝・日関係をどのように進めていくのかを見守りながら行動しようとしている。

[朝鮮新報 2008.8.20]