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朝・日の地すべり研究者が交流

京大准教授 朝鮮で講演、現地調査も

 京都大学防災研究所・福岡浩准教授とNGO国際災害救援青年ボランティア機構の和田晋典理事長からなる日朝友好斜面防災学術交流団が、朝鮮の国家科学院の招きで9〜16日、朝鮮を訪問した。交流団は朝鮮の研究者らと交流し、地すべりの現地調査を実施した。

 13日には、福岡准教授が人民大学習堂で「地すべり概論と監視技術」と題した学術講演を行った。

 参加したのは、国家科学院の地理学研究所、地質学研究所、地震研究所、金日成総合大学などの地すべりに関係する研究者、教官ら約50人で、福岡准教授は、日本および世界における地すべり研究の一端を紹介した。

 また、日本で開発された地すべり崩壊時間の予知法について紹介するとともに、朝鮮における地すべり地形分布図作成の重要性を強調した。地すべり分布図は将来の地すべりハザードマップ作成にとって極めて重要であり、研究者らが早期に作成することを推奨した。

 2時間におよんだ講演後には約1時間の質疑応答も行われ、活発な意見交換がなされた。

 講演では監視技術の紹介にとくに時間が割かれたが、参加者からは地すべり運動のメカニズムの研究成果についても紹介してほしいという声が聞かれた。

 訪問中、交流団は朝鮮の地理学研究所の研究者らとともに、平壌から伸びる元山方面と妙香山方面の高速道路沿いの地すべりに対する現地視察も行った。

 「ウルリムの滝」、妙香山国立公園地区の調査を実施した福岡准教授は多くの地すべり地形を指摘。元山方面は岩盤の落石、浅層崩壊が卓越し、妙香山方面の道路沿いでは沖積層や崩積土内の浅層―深層地すべりが多く見られたという。

 また地理学研究所から白頭山地区で地すべりが多発しているとの報告を受けており、同地区の現地視察は近い将来に実施したい考えだと述べた。

 福岡准教授は、国連機関が防災技術セミナーなどを通じて朝鮮への技術支援を検討していると指摘。同氏は世界遺産地区の地すべり危険度評価の研究も推進しており、白頭山地域を対象にした国際共同研究や東北アジア地すべりシンポジウムおよび現地討論会を、日本と南朝鮮の研究機関の協力も得ながら推進したいとしている。

 福岡准教授は国際斜面災害研究機構(ICL)の理事をしており、国際的なネットワークの中に朝鮮の研究者も入ってほしいと強調している。今回の訪朝で高い見識を持った朝鮮の地すべり専門家と交流することができたことが最大の成果であるとしながら、「これからも交流を深めていきたい」と話した。

 一方、和田理事長は、「朝鮮では豪雨時に土砂災害がひん発している」と指摘しながら、日本だけでなく海外に暮らす同胞などの力で、被災者支援や防災のための植林活動を展開できる方法を模索していきたいと述べた。

 また、在日同胞が植林を進める「在日同胞愛国林」を訪問し、海外同胞墓地の西側斜面など、植林に適した土壌でかつ、地すべりが発生し始めているような斜面が植林に適当ではないかと指摘した。今後も継続的に訪朝する意向で、試験的にでも早期に植林を行いたいと述べた。

 和田理事長は学生主体の海外災害被災者支援ボランティアを立ち上げており、「学問や人道支援、また文化的なつながりから、日朝間の交流を深めていければ」と話した。【平壌支局】

[朝鮮新報 2008.8.27]