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朝鮮の論調 08年 8月

 北京五輪に沸いた8月。残念ながら北南選手団の合同入場は実現しなかった。11〜12日には中国・瀋陽で朝・日政府間実務会談が行われ、一定の合意がなされた。一方、6者会談で合意された米国の履行義務である朝鮮の「テロ支援国」リスト削除は、発効期限の11日を過ぎても行われなかった。これを受けて朝鮮外務省は26日、核施設無能力化作業の中断および復旧を考慮する旨のスポークスマン声明を発表した。

−対米 無能力化中断、現状復旧考慮

 6月26日、朝鮮は10.3合意に従って核計画申告書を提出した。同日、ブッシュ大統領は朝鮮の「テロ支援国」リスト削除を議会に通知した。

 翌27日に朝鮮外務省代弁人は同時行動を歓迎する立場を表明し、寧辺核施設の冷却塔が爆破された。

 しかし、8月11日が過ぎても米国は「検証作業」云々を口実に、未だに朝鮮を「テロ支援国」のリストから削除していない。

 これに対し朝鮮は18日発の朝鮮中央通信で「われわれは10.3合意に従って正確で完全な核申告書を提出した」ことをあらためて強調し、米国の合意不履行を「行動対行動」の原則に対する明白な違反行為であると非難した。

 26日には外務省スポークスマン声明を発表し、「6者や朝米間のいかなる合意にも、われわれの核申告書に対する検証問題をリスト削除の条件として規定した条項はない」ことを強調した。

 そして、「行動対行動」原則の具体的な内容にも言及し、「南朝鮮とその周辺に米国の核兵器がなく、新たに搬入されたり通過したこともないことを確認する検証が、われわれの義務履行に対する検証と同時に行われるべきである」と指摘した。

 声明は、今回のリスト削除延期措置は「テロ支援国リスト」なるものが、実際はテロと関連したリストではないことを米国が自認したことになると指摘し、「われわれは『米国に従順ではない国』のリストにそのまま残されてもかまわない」とする立場を明らかにした。

 声明は、核施設無能力化作業の即時中断を発表する一方、寧辺核施設の原状復旧に関しては、「(復旧の)措置を考慮する」という表現に止めている。

−対日 侵略犯罪を絶対に忘れない

 この時期は毎年、8.15の解放記念日を前後して、日本の過去清算問題への言及が増える。

 1日、朝鮮占領被害調査委が日帝の「徴兵制」を批判する談話を発表したのを皮切りに、2日と5日には労働新聞が文化財と山林資源の略奪を非難する記事を相次いで掲載した。

 同紙はまた、9日に強制連行を非難する記事を掲載し、「強制連行犯罪は、官権と軍権を全動員して行われた露骨な人間狩り、拉致行為である」とし、「被害者たちに殺人的な奴隷労働を強要することに目的を置いた過酷な人権蹂躙犯罪であった」と強調した。

 14日には靖国神社参拝と関連した8千字以上に及ぶ論調が配信され、「靖国神社参拝を伝統化、合法化しようとする日本反動の策動は、過去、日帝が敢行した侵略史を闇に葬り、過去清算を永遠に回避しようとする破廉恥な者たちの拙い政治的妄動である」と厳しく糾弾した。

 22日には、朝鮮社会民主党と南朝鮮・民主労働党の連名による独島強奪策動を非難する共同声明が発表された。また24日には、「浮島丸」事件と関東大震災朝鮮人虐殺を糾弾する記事を労働新聞が掲載した。

−対南 李明博は現代版の「乙巳五賊」

 民主朝鮮は1日、「ARF議長声明」から10.4宣言への支持表明削除を要請した南当局を非難する記事を掲載した。記事は「北南対決を追求する反逆的正体を国際舞台でさらけ出した」と非難し、「李明博が権力を握っているかぎり、民族の和解と団結、統一への道には障害だけが作られるであろう」と指摘した。

 6日には、独島問題の再燃を招いたのは「未来志向の韓日関係」を謳った結果だと批判する論調が配信され、その中で李明博大統領を現代版の「乙巳五賊」と酷評した。また、「独島をどうにかして手に入れようとしている日本にとって、李明博のような逆賊の執権はまたとない機会となっている」と厳しく非難した。

 20日には、李政権が掲げる「実用主義」を「北南関係を破局へと導く反統一対決論だ」とあらためて批判する記事を労働新聞が掲載した。

 記事は、「北南関係を改善し、統一を実現することは、一方の利害関係だけではなく、民族共同の利益を先決に解決すべき愛国事業である」と指摘した。

 また、「『実用主義』は反統一策動を合理化するための分裂論」であるとし、「実用主義」を掲げる目的は同族間の和解と協力ではなく、対決を追求するためであると強調した。

 日本のメディアのほとんどが、6者会談の最終目標を「北朝鮮の核放棄に向けて…」(朝日新聞社説8月27日付)というふうに捉えている。

 この視点がすでに間違いである。情勢を見誤る素因と言っていい。

 6者会談の最終目標は、「北朝鮮の核放棄」ではない。9.19共同声明に示されているように、あくまで「朝鮮半島の非核化」である。非核化に取り組むのは朝鮮だけではない。6者が同時に行動しなければならない。南朝鮮への核配備が公然の秘密となっている米国にいたっては、なおさらであろう。

 それにしても、かつての「BDA」問題といい、今回の「検証」騒動といい、米国の驕慢な身勝手さにはつくづく呆れ果てる。約束の反故、履行の遷延、合意への難癖…なんでもござれである。

 今の状態が続けば、ブッシュ政権は対朝鮮政策における執権当初の過ちを、政権末期を迎えて再び繰り返すことになる。

 米国のある哲学者がこんな言葉を残している。

 「過去から学ばない人間は、過去を繰り返す運命にある」(韓昌健記者)

[朝鮮新報 2008.9.10]