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李政権 歴史教科書の修正指示、北南対決 反共姿勢が露わに

「6.15」を否定、軍事独裁評価

 南朝鮮の李明博政権は、高校2、3年生が使用している近現代史教科書が「偏向」していると、教育科学技術部に改善を指示した。北南関係や北側の体制などに関する記述を、かつての軍事独裁政権の認識へと戻そうとするもので、その本性を浮き彫りにするものだ。

軍事政権を美化

 統一部は、教育科学技術部に6種の教科書58項目に対し修正、補完などを求める意見を提出した。

 「南北間に人的、物的交流が増大するなど和解と協力の流れが定着している」(中央教育振興研究所の教科書)との記述について、和解と協力の「定着」という文言に異議を唱え、「人的、物的交流は増えたが、それによって南北間の和解と協力の流れが定着したものではない」と強弁。2000年6月15日の共同宣言発表以降、「わが民族同士」の理念の下で着実に積み上げられてきた北南の和解、協力の事実を否定した。

 国防部の修正要求は、25項目にのぼっている。

 「全斗煥政権は…権力を動員した強圧政治を行った」、「李承晩政権の独裁化」「憲法の上に存在する(朴正熙)大統領」(以上金星出版社)など現在、南朝鮮社会に定着した一般的認識をくつがえし、「全斗煥政権は…民主と民族を掲げた一部の親北的左派の活動を遮断するさまざまな措置を講じざるをえなかった」「自由民主主義体制を確立させた李承晩大統領」「民族の近代化に寄与した朴正熙大統領」と、過去の独裁者たちを肯定的に評価するよう促した。

 また、南朝鮮に対する米国の干渉と支配についても歴史的にさかのぼって美化、正当化するよう求めた。

 たとえば、解放直後の政治情勢に対して「ソ連軍は北側の住民が設立した建国準備委員会を大部分認めた…米軍政は韓国人の自治的な行政と治安活動をいっさい認めなかった」(金星出版社)との記述について、ソ連軍が「北を占領」し「機械、食糧の搬出など帝国主義的行為」を行ったのに対して、米軍政は、「各種自由民主体系の基本権を幅広く保障」し「南が自由民主的社会になるよう支援」したと対米従属的姿勢があらわである。

親米保守勢力が合流

 国防部と統一部のほかにも、大韓商工会議所、韓国教会私学会などの保守勢力、さらにハンナラ党も「教科書委員会」を立ち上げ修正騒動に合流している。

 これは、今回の動きが単純に教科書の記述に関する問題ではなく、民主的かつ統一志向なものを残らず抹殺し、米軍の支配と同族対決、ファッショ統治を全面的に復活させようとするものだとの声が南朝鮮内部からあがっている。

 修正要求を受けた教育科学技術部は、今月末まで専門家の意見を収集し修正案を確定、11月中に該当する出版社に通告する予定だという。

 李明博大統領は、一連の動きについて「誤りを正すもの」「北側の社会主義に正当性があるように記述している教科書を正す」(8日)と、率先して肯定し分断イデオロギーに基づいた同族対決をあおっている。

世論の反発噴出

 こうした動きに対し、強い反発の世論が噴出している。

 民主党は「親財閥、親独裁権力という無能で危険な政権の視点」だと非難。進歩新党のリ・チアン副スポークスマンは「無能な右派政権がもっともたやすくできる右傾化への序曲」だと批判した。

 民主党のキム・ミンソク議員は「ニューライトに基づいた現政権の本質に関連する重大な問題」だと指摘した。また、同党のパク・チュソン議員は「現政権の対北政策によって、南北関係が膠着状態に陥っていることへの国民の非難などに対する劣等意識と脅迫観念から発生した卑劣な試み」「経済が危機に陥っている状況を左右理念論争へと転嫁し政権非難を避けようとするもの」だと指摘し、「統一政策と関連する教科書修正は第2の統一部廃止と変わりない画策」だと非難した。

 また、南朝鮮の歴史学会と現役教師、教育市民団体などで構成された「教科書問題解決のための共同対策委員会」準備委員会は9日、抗議活動を行い政府に対して政治的中立性を無視した歴史教科書修正行為を中断するよう求めた。

 一方、朝鮮教育省のスポークスマンは3日、今回の歴史教科書改悪について談話を発表し、「李明博一味の歴史教科書わい曲策動は親米保守勢力の地盤を強化し、育ちゆく新しい世代に同族への敵対意識を露骨に鼓吹して民族の和解と団結を阻み、6.15以来、南朝鮮で高まった自主、民主、統一の気運を骨抜きにし、抹殺しようとする不純な犯罪的企図から発したもの」だと指摘した。(呉陽希記者)

歴史学者たちが抗議声明 「政治的中立性の否定」

[朝鮮新報 2008.10.15]