top_rogo.gif (16396 bytes)

〈羅先紀行 朝鮮経済復興の鼓動 -上-〉 朝ロの結びつき緊密に

経済協力の新モデル創出へ

 【平壌発=李相英記者】朝鮮とロシアが共同で推進する羅津−ハッサン区間鉄道および羅津港の現代化事業の着工式を取材するため、10月上旬、朝鮮東北部の国境都市・羅先市を訪れた。朝ロ初の大規模経済協力事業は、朝鮮が一丸となって進めている経済復興に向けた取り組みにどのような影響を及ぼすのか。また同事業をきっかけに、両国関係はどう進展するのか。羅先経済貿易地帯の開発を含めた対外経済の展望、国内鉄道輸送部門の現状と課題など3回に分けて報告する。

貿易拡大に期待

歓談しながら着工式が行われる会場へ向かう朝ロの関係者ら

 首都・平壌から列車で24時間。内陸部を抜け咸鏡南・北道の東海岸沿いを走る鉄道は咸興、金策、清津などの主要都市を経て羅津駅にいたる。列車はさらに50数キロを進み、朝鮮側の国境駅である豆満江に到着した。

 駅からは朝鮮とロシアを直接つなぐ唯一の鉄道が北側に伸びている。左側にゆるやかなカーブを描く単線路の向こうに両国を分かつ豆満江にかかった朝ロ親善橋が見える。豆満江を越えた線路はロシア側の国境駅・ハッサンを経て、沿海州から広大なシベリア地方へと通じている。

 羅津−ハッサン区間の鉄道を改修して羅津港にコンテナ専用埠頭を建設する今回の共同事業を通じて、朝ロ、さらには朝中が国境を接するこの地には東北・東南アジアからロシア、欧州につながる陸上および海上輸送の拠点が整備されることになる。

 朝ロ両国首脳によるモスクワ宣言(2001年)で明らかなように、将来的には交通、運輸面で朝鮮と欧州を結ぶ大動脈となる朝鮮半島縦断鉄道(TKR)とシベリア鉄道(TSR)の連結も視野に入れたプロジェクトだ。

 10月4日の着工式当日。

 会場となった豆満江駅近くの朝ロ親善閣前広場は、両国関係者と羅先市民、報道関係者らであふれかえった。

 数年間にわたる協議と現地調査を経て着工を迎えた今回の事業。朝鮮側は政治的な意義以上に、経済的な実利の面で期待を寄せているようだった。式に参加した関係者らも慎重な口ぶりながら、事業がもたらすメリットについてさまざまな側面から語った。

 関係者の発言や公開された数字などを総合的に判断すると、以下のようにまとめることができる。

 まず、鉄道と港湾の整備によって陸路と海路を組み合わせた輸送の迅速化が実現、同地域内の物流が活性化する。

 改修工事によって羅津−ハッサン間の鉄道貨物輸送量とスピードが大幅にアップする。

 また、大規模コンテナ処理能力を持つ埠頭の建設は、「ロシアやアジア諸国との2国間貿易だけでなく、多国間の中継貿易という見地からも経済的効果が大きい」(ペ・ホンチョル羅津港長)。

 つぎに、羅先経済貿易地帯の開発に再び拍車がかかる効果がある。

 鉄道や港湾といったインフラの整備は同地帯の開発における長年の課題のひとつだった。インフラ整備に一定のめどがつけば、「海外企業の進出や投資増大にも明るい展望が見えてくる。市側としても大きな期待を持っている」(羅先市人民委員会の関係者)。

 また、「羅先地域の開発は金策、清津など咸鏡北道の工業地帯の発展にも一定の好影響を与えるのではないか」(鉄道省関係者)。

 さらに長期的な視点で見ると羅先がアジアと欧州を結ぶ国際輸送ルートの要衝として整備されれば、朝鮮側にとって貿易の促進、鉄道や港湾使用料の収入などメリットは大きい。

さらなる進出促す

 朝鮮側が「朝ロ両国の共同の発展と利益にかなう大規模協力実現の第1歩」(全吉洙鉄道相)と意義づけているように、今回の事業をきっかけに朝ロ両国の政治、経済的な結びつきはより強まるだろう。

 朝ロ関係は2000年代に入って新たな次元で発展している。00年2月には、朝ロ親善、善隣および協力に関する条約を締結、冷戦期のそれに代わる新たな友好親善関係の枠組みを定めた。

 その後、同年7月のプーチン前大統領の訪朝と朝ロ共同宣言発表を皮切りに、01年8月の金正日総書記のロシア訪問とモスクワ宣言調印など活発な首脳外交を通じて関係を強固なものにしていった。

 両国は今年の外交関係樹立60周年を機に関係をさらに深めている。10月15日から18日まで朴宜春外相がロシアを公式訪問、11月には崔泰福・最高人民会議議長の訪ロも予定されている。

 とくに今回の事業は経済分野における協力拡大に先鞭をつけるものとして両国関係者の関心は高い。「援助や借款ベースの経済協力だけでなく、商業的利益の観点からも互いに協力し合えることを示す機会になる」と、スヒーニン駐朝ロシア大使は話す。

 ほかのロシア企業の進出を促し、さらにEUやアジアなど海外からの投資呼び込みにつながるのかどうかは、今回の事業の成功いかんにかかっている。

 朝ロ両国は事業の推進企業として羅先国際コンテナ輸送合弁会社を設立した。出資比率は朝鮮側3割、ロシア側7割。鉄道と港の開発、運営のみならず金属製品の生産、販売など計16種類の業種を扱うことが決まっている。

[朝鮮新報 2008.11.7]