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10.4宣言発表1周年記念討論会 南側政権に批判集中

現状分析と打開策を提示

 10.4宣言の発表から1周年が経つが、李明博大統領の執権後、宣言は履行されないどころか北南関係は危機的状況に置かれている。その根本的な原因は何か、そして打開策は−10月27日、中央大学駿河台記念館で行われた10.4宣言発表1周年記念討論会(主催=同実行委員会、後援=6.15共同宣言実践日本地域委員会)では在日同胞と南の専門家が北南関係の現状分析と膠着打開のための対案を示した。パネリストは南朝鮮月刊誌「民族21」編集主幹兼代表の鄭昌鉉氏、韓国問題研究所(京都)所長の康宗憲氏、月刊誌「統一評論」編集長の崔錫龍氏の3氏。それぞれの立場から分析を行ったが、発言内容にはいくつかの共通点があった。

認識に疑問

会場には日本各地から350余人の同胞が駆けつけた

 現在の北南関係の膠着状態は李明博政権の対北政策に原因がある。極右保守勢力で固められた政権は、同族対決姿勢をいっこうに崩そうとしていない。

 討論会では、このような政権内部の対決姿勢が指摘される一方、李大統領自身の北への認識不足が批判の対象となった。「李政権の対北構想は現状からかけ離れている。北の情緒をまったくわかっていない」(鄭昌鉉氏)、「李大統領は北をあまりにも知らなすぎる」(崔錫龍氏)との声があがった。

 さらに、政権内の、対北関係に精通した人材の不在が指摘された。康宗憲氏は、「李大統領を取り巻く官僚らの中に対北専門家がいないので、たとえ北に特使を送りたくても送る方法を見出せない」と指摘した。

康宗憲氏

 また、李大統領が6.15と10.4を7.4共同声明や南北基本合意書など過去の合意と同列に扱っていることにも触れ、首脳合意の内容に対する李大統領の認識度が論議の対象となった。

 李大統領が「最も重要な南北精神」(3月26日)とする南北基本合意書には「互いの制度を認め尊重する」などと明記されている。その精神は6.15、10.4に貫かれている。
崔錫龍氏は6.15、10.4について「7.4共同声明と南北基本合意書の基本精神と内容をすべて具現し、より統一志向的に発展させた民族統一の里程標、実践綱領」と指摘した。

 そして、李大統領はたびたび、「北との対話の用意がある」と発言しているが、それならば両宣言を否定するのは明らかに矛盾であり、政権内における北南関係専門家の不在を物語っているとも付け加えた。

「本当にCEOか」

 討論会では、李大統領がCEO(最高経営者)を自負していることにも話題が及んだ。

 康宗憲氏は、前任者が交わした契約を一方的に破棄するのは業務上背任になるとしながら、6.15、10.4を否定する李大統領は本当にCEO出身なのかと問いかけた。

 崔錫龍氏は、李大統領は北南間の合意を履行しない理由として「莫大な費用」をかかげているが、これは南の企業も望んでいる事業で、合意が履行されれば双方に経済効果があると強調した。

特使派遣を主張

崔錫龍氏

 米国が朝鮮を「テロ支援国」リストから削除し、6者会談の進展は北南関係にも良い影響を与えるとの見方が広がる一方で、討論会開催直前の10月16日、「重大決断」を予告する労働新聞論評員の記事が発表された。

 論評員の記事は、李政権が「われわれの尊厳を毀損し、無分別な反北対決の道に引き続き進むなら、われわれはやむをえず北南関係の全面遮断を含む重大決断を下さざるをえなくなる」と強調した。

 討論会では、このような状況を乗り越えるためにはどうすればいいのかが論議され、対北特使の派遣が指摘された。

 口火を切ったのは鄭昌鉉氏。「北が李明博政権の対北政策の真相について聞いているのだから、李大統領は正確な意思を伝えるため特使を北に派遣すべき」だと主張。康宗憲氏も同じ見解を示した。

 また、特使の派遣が早急に行われるべきだという認識もともに示した。

鄭昌鉉氏

 鄭昌鉉氏は、来年の春までには特使を送るべきで、そうでない場合5年の任期期間ずっと南北関係で苦労するだろうと述べた。康宗憲氏は、「もたもたしていると、李明博大統領の特使よりも米大統領になる公算が大きいオバマ氏の特使が先に行くかもしれない。南北が優先されるべきだ」と、早期の特使派遣を促した。

 李明博政権に対して南朝鮮内では野党などから国政、内閣の刷新を求める声があがっている。

 鄭昌鉉氏はこれらの情勢変化に注目すべきだとしながら、「経済面での人事刷新は確実で、問題は青瓦台の外交安保ライン。刷新されるなら、対北関係改善に前向きになったとの現れだと見ることができる」と指摘した。(姜)

[朝鮮新報 2008.11.7]