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朝鮮の論調 08年 10月

 10月11日、米国が朝鮮を「テロ支援国」リストから削除した。10.3合意に記された期限から遅れること約10カ月。米国が合意義務を履行したことにより、近日中の6者会談再開もささやかれている。一方、日本では新宿商工会などへの不当な強制捜索(10月29日)が行われ、安倍政権時代から続く政治弾圧路線に変化のないことが露わになった。北南朝鮮は10.4宣言発表から1周年を迎えたが、当局間の関係はこう着したままである。

−対米 「テロ支援国」リスト削除、「歓迎する」

 朴吉淵外務次官は国連で行った演説で(1日、朝鮮中央通信)、朝鮮半島の非核化は金日成主席の遺訓であり、そのために誠意ある努力を傾けるであろうと表明する一方、「自主権を侵害しようとする試みに対しては絶対に許さない」ことを強調した。

 米国が11日に行った朝鮮の「テロ支援国」リスト削除に関して朝鮮外務省スポークスマンは12日、朝鮮中央通信記者と会見した。

 スポークスマンは、1〜3日まで朝米会談が行われたと前置きし、米国による朝鮮の「テロ支援国」リスト削除は「10.3合意での公約」とあらためて指摘したうえで、その措置を「歓迎する」と表明した。

 また、今回の措置に伴い、「行動対行動」の原則で寧辺の核施設の無力化を再開することと、10.3合意の完全な履行を前提にして、核施設無力化対象に対する検証に協力するとの立場を明らかにした。

 そして、「今後、10.3合意履行が完全に終了されるのかどうかは、米国の『テロ支援国』リスト削除措置が実際の効力を発生し、5者が経済補償を完了することにかかっている」と付け加えた。

 15日には労働新聞が米国の核政策を批判する記事を掲載した。

 記事は、「米国が他国には核兵器を保有するなと求めながらも、自分らは核戦争策動に狂奔していることは、他国が強力な軍事的抑止力を持ってこそ、米国と向かい合って自国の生存権を守ることができることを確信させている」と指摘し、「われわれの核抑止力は、核戦争防止の手段であり、自主権と平和守護の宝剣である」と主張した。

−対日 朝・日関係の基本は過去清算

 10月下旬以降、日本の6者会談参加資格を問う論調が連日繰り返された。

 21日に民主朝鮮が「日本の6者会談参加資格を問う時期がきた」と題する記事を、22日には労働新聞が「会談参加資格を失った悪質な妨害者」と題する記事をそれぞれ掲載した。

 両紙ともに共通していたのは、6者会談は朝鮮半島の非核化を実現するためのものであって、拉致問題を論じる場所ではないというものだ。

 そもそも、6者会談で拉致問題が議題に上がったことは、ただの一度も無い。にもかかわらず、議題にない事柄を持ち出して会談そのものを停滞させるのであれば、参加資格が問われることは必至であろう。

 また、日本が拉致問題を持ち出す理由についても言及し、「朝鮮半島の非核化を妨げて軍事大国化と海外膨張野望を実現するための口実」(民主朝鮮)、「人気取りの処世術にすぎない。拉致問題を騒ぎたてることで民心を買って権力を維持し、派閥の勢力を拡大しようとしている」(労働新聞)などと指摘した。

 また、民主朝鮮は「朝・日関係の基本は日本の過去清算である」ことをあらためて強調し、労働新聞は「拉致問題を在日朝鮮人に対する人権侵害行為を正当化し、過去の清算を回避するための盾に悪用してはならない」と指摘した。

−対南 北南関係 全面遮断含む重大な決断も

 金正日総書記と盧武鉉前大統領による首脳対面・会談から1年が過ぎた。

 本来ならば、今頃は10.4宣言に沿って北南関係が進展していたはずだが、それらが李明博政権の反北政策で水泡に帰したことは周知の事実である。

 3日に平壌で開かれた「10.4宣言発表1周年記念中央報告会」で報告者は、「北と南、海外の全同胞は6.15共同宣言と10.4宣言の履行を通じて遂げた立派な結実を重んじ、これを強固にし、『わが民族同士』の旗じるしをいっそう高く掲げて進むべきである」と強調した。

 労働新聞は4日付の記事で「わが同胞にとって10月4日は、自主統一時代を開いた6月15日とともに祖国統一運動史にしっかりと刻まれた意義深い日である」と指摘した。

 民主朝鮮も同日付で論評を掲載し、「南朝鮮での1年間の事態は、民族に背を向け、外部勢力に寄生する売国奴が権力を掌握している限り、北南関係が改善されないという深刻な教訓を残した」と主張した。

 16日付の労働新聞は論評員の記事を掲載し、「もし売国逆賊の集団が度重なる警告にもかかわらずわれわれの尊厳を毀損し、無分別な反共和国対決の道に引き続き進むなら、われわれはやむをえず北南関係の全面遮断を含む重大決断を下さざるをえなくなるであろう」と警告した。

 この御仁は旧日本軍の亡霊ではあるまいか、と錯覚しそうになった。執筆論文が物議を醸した田母神氏(前防衛省航空幕僚長)は、おそらく本気で「日本が侵略国家というのは濡れ衣だ」と信じている。

 「従軍慰安婦」を否定した安倍元首相をはじめ、日本の政界には田母神氏と同様の思想を持つ政治家が少なくない。現首相も過去に「創氏改名は(朝鮮人が)名字をくれと言ったのがそもそもの始まり」と講演で発言したことがある。

 田母神氏が生まれながらにしてあのような史観を有したわけではない。歴史認識は教育課程を通じて植え付けられるものである。とすれば、問題の論文は、さきの戦争を美化するための体系的な史観形成システムが戦後から現在に至るまで連綿と受け継がれてきたことの証左と言える。

 そのような教育を受けた人たちが、国会や地方の議員を務め、国政の要職に座り、口々に侵略の歴史を否定して回る。やがて五十年が過ぎ百年が経てば、日本が犯した罪を知る日本人はいなくなる…。

 日本右翼、復古主義者の描く「最良の筋書き」である。(韓昌健記者)

[朝鮮新報 2008.11.14]