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朝鮮の論調 08年 11月

 北側は南側の対北対決姿勢が危険水位を越えたと判断し、12月1日から軍事境界線を通過する陸路の通行を遮断するなどの「重大措置」を講じている。北南関係はこう着状態を通り越し、断絶状態へと至った。朝・日間も、朝鮮が自国への主権侵害とみなす総連に対する相次ぐ弾圧によって最悪の局面に直面している。一方、朝鮮外務省スポークスマンは6者会談の10.3合意履行に関して、検証問題をめぐる朝米間の合意内容を明らかにし、5者の義務履行を促した。

−対米 朝米合意内容明らかに

 朝鮮外務省は12日、スポークスマン談話を通じて10月1〜3日にクリストファー・ヒル米国務次官補が訪朝した際になされた検証問題をめぐる朝米間の合意内容を明らかにした。

 談話は、朝米が検証問題に関する朝鮮の特殊な状況について見解の一致を見たことに言及。

 そして、検証対象は寧辺の核施設であり、検証方法は現場訪問、文書確認、技術者とのインタビューに限定され、検証の時期は10.3合意に伴う経済補償が完了した以降にするということが骨子になっていると明らかにした。

 そのうえで、交戦状態にある朝米関係の現在の信頼水準を考慮せず、いわゆる「国際的基準」の適用に固執して朝米間にやっともたらされた書面合意以外に一文字でもさらに求めるなら、それは「主権侵害行為」だとけん制した。

 また、この合意内容を公表した理由について、一部の勢力が6者会談の10.3合意履行の遅れの責任を朝鮮側に転嫁したためだと指摘した。

 外務省スポークスマンは、「経済補償が引き続き遅れる場合、無力化速度はその分さらに落」ち、「6者会談の展望も予測し難くなる」と主張した。

 一方、米国で4日に行われた大統領選挙で民主党候補のバラク・フセイン・オバマ上院議員が当選した。7日の朝鮮中央放送、労働新聞、民主朝鮮8日付がこれを報じた。

−対日 「最悪の危機局面へ」

 10月29日、警視庁公安部外事第二課は、「税理士法違反容疑」を口実に、新宿商工会、総連新宿支部、元新宿商工会副会長宅など、6カ所に対する強制捜索を行った。11月27日には、在日本朝鮮商工連合会、東京都商工会に対する強制捜索を行い、元新宿商工会副会長を逮捕した。12月3日には新宿商工会総務部長を逮捕した。

 労働新聞4日付論評は、日本の反動層の反朝鮮・反総連策動が「看過できない重大な段階」に至っていると指摘した。

 民主朝鮮29日付論評は、日本当局による総連傘下団体に対する弾圧について「総連を抹殺しようとする卑劣な政治弾圧」「容認できない国家犯罪行為」だと強く非難した。

 また、官房長官、官房副長官をはじめとする当局者が対朝鮮追加制裁を主張していることについて論評した労働新聞10日付は、日本の制裁について「無益な行為」だと強調。日本当局自身がそのことを「はっきりわかっている」と付け加え、こうした主張は、拉致被害者の再調査に対する世論が静まりつつあることに対し、「新たな世論づくり」をする点に目論みがあると指摘した。

 民主朝鮮19日付は「現在、朝・日関係は最悪の危機局面へと向かっている」との認識を示した。

−対南 「北南関係、論じる余地ない」

 11月の各紙の論調全体の半数以上を占めた。そのほとんどが李明博政権の対北政策の転換を求める内容のものだ。

 労働新聞24日付論評は、現在の北南関係について「対決と緊張だけの一触即発の激動状態」だと指摘した。

 11日付の労働新聞は、北南関係破たんの責任は「全的に、李明博逆徒と彼の反民族的な『対北政策』にある」と指摘した。

 北南将官級軍事会談北側代表団団長は12日、「度重なる警告にもかかわらず、南側当局の反北対決騒動は危険水位を越えている」としながら、軍事境界線通行を制限、遮断するなどの「重大措置」を通告する通知文を南側軍部に発送した。

 朝鮮赤十字会中央委員会も同日、板門店の赤十字連絡代表部を閉鎖し、北側代表を撤収させ、板門店を経由したすべての北南直通電話回線を閉鎖することを明らかにした。

 その直後の16日、李大統領は、訪米中に行なった記者懇談会で「自由民主主義体制での統一が最終目標」だと発言した。

 これに対して22日の祖国平和統一委員会スポークスマン談話は、李政権は、「自由民主主義体制」は南に対する米国の植民地ファッショ統治体制で、その「体制下での統一」とは「吸収統一」であり、「最終目標」とは北侵戦争起こすことだと非難した。そして「李政権とは北南関係と統一問題を論じる一顧の余地もない」という判断を下した。

 北南将官級軍事会談北側代表団団長は24日、12日の通知の具体的内容を南側に通告した。

 一時は朝鮮を「悪の枢軸」と規定したブッシュ政権の任期も残りわずかとなった。

 来年1月、大統領に就任するオバマ氏は「朝鮮との直接対話で問題を解決」すると発言した。

 こうした点を踏まえ、朝米平和協定締結についても「楽観的」(10月25日、フランク・ジャヌージ上院外交委員会上級スタッフ、オバマ陣営の朝鮮半島政策分科委員長)との見方が一部に出ている。

 国務長官に指名されたヒラリー・クリントン上院議員も、ブッシュ政権の対朝鮮敵視政策が朝鮮半島情勢緊張の主要原因だったとしている。

 朝鮮は、オバマ氏の大統領当選に対して「われわれはいかなる政権が登場しても、その政権の対朝鮮政策に従って対応する準備ができている」(李根・外務省局長、11月6日)との立場だ。

 一方、米国の同盟国、南朝鮮と日本は「失われた10年」だの「拉致問題解決」だのと対朝鮮強硬路線をひた走っている。ブッシュ政権末期から表面化した対朝鮮政策での3者のズレは今後さらに拡大していくだろう。

 しかし、この3者が軌道修正さえすれば、関係改善の速度は早いと思う。北南間には、6.15共同宣言(00年)と10.4宣言(07年)、朝・日間には平壌宣言(02年)という首脳レベルの合意がある。北南の統一、朝・日の国交正常化にはすでにロードマップが用意されている。(陽)

[朝鮮新報 2008.12.12]