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〈第30回在日朝鮮学生「コッソンイ」作文コンクールから〉 中級部1年生散文部門

「私の家族」

 わが家は、アボジとオモニ、5人姉妹の7人家族だ。

 最近、日本で少子化が急速に進む中で、5人姉妹は少し珍しいと思う。けれども、それよりもっと珍しいのは、うちの家族の性格だ。

 私は、学校の行事で家族が集まるたびに、個性的な家族を恥ずかしく思っていた。

アボジ、オモニと5人姉妹

 だけど、中級部入学式の日にあった出来事をきっかけに、大切なことに気づいた。

 「新入生が入場します。大きな拍手で迎えてください!」

 紹介とともに、入場門が開いた。

 歓迎曲が流れると、かわいい初級部1年生が紙吹雪の中を歩いていく。私たちも、その後ろについて入場門をくぐった。私の心は、今日から中級部という喜びで溢れていた。

 その時だった。

 「慧瑛ー、慧瑛ー!」

 私を呼ぶ、大声が聞こえてきた。横目でちらっと左前を見ると、ビデオカメラを持ったオモニが手を振っていた。私は恥ずかしくて、早足でオモニの前を通り過ぎた。

 舞台上の椅子に座った後も、オモニはまだ手を振っていた。私はオモニをにらみつけた。

 すると、急に「オンマー! オンマー!!」と、泣きながらオンマを探す声が聞こえてきた。

 私は、びっくりして辺りを見回した。

 誰かと思ったら、2番目の妹・スネが、チヘお姉ちゃんのひざの上で大泣きしていた。

 ちらっとチヘお姉ちゃんの横を見ると、1番目の妹・ヘリムが、まかれた紙吹雪をかき集めてまいては、またかき集めていた。

 チヘお姉ちゃんは、スネをあやしながらも、「ヘリム、お姉ちゃんと一緒に座ってみよう?」と何度も言いきかせていた。

 だけどもヘリムは、「いや! いや! 私、ここにいる!」と、とうとう床に座ってしまった。

 こうなると、いよいよ5人姉妹の頭、ヘスクお姉ちゃんが登場する。

 「座らないんだったら、お姉ちゃんと一緒に出よう」

 ヘスクお姉ちゃんが、泣くヘリムをむりやり外に連れ出した。

 私は、顔から火が出そうだった。

 それにもかかわらず、オモニは幼い娘たちが何をしでかしても、何事もなかったかのように、ただビデオを撮るだけで、アボジは他人のように泰然として座っていた。

 その時だった。

 変な音楽が場内に鳴り響いた。

 誰かの携帯電話が鳴ったのだ。私は心の中で、(うちよりずっと恥ずかしいことをしでかした人がいた)と思いながら、密かに喜んだ。

 一人の男性が、携帯電話をとって立ち上がった。

 私の喜びは、一瞬にして消えた。携帯電話をとって立ち上がった男性は、ほかでもない私のアボジだったからだ。

 もう校長先生の言葉も、2年生の歓迎の言葉も、何一つ耳に入ってこなかった。

 やっと退場する時がきた。

 私は顔を赤らめて、下だけを見て歩いた。

 ホームルームが終わると、私は母を怒った。

 「オモニ! どうしてうちの家族は、いつもこうなの? 恥ずかしくて、耐えられない!」

 私の言葉を聞いたオモニは、少し寂しげにこう言った。

 「慧瑛は、ほかと同じ家族がいいの? オモニは、個性的なうちの家族が一番好きよ」

 私は驚いた。

 オモニが、こんな家族を誇りに思っていたからだ。

 私は、自分を見つめ直した。

 冬でも半そで、短パンで歩き回ったり、駅の近くにもジャージで遊びに行ったりと、私も人とは違うところがある。

 今まで、人と違う自分が嫌で、友だちと話を合わせようとしたり、読みたくもないファッション雑誌をわざわざ読んだりしていた。

 人と違うのは当然だ。私たちはみな、個性を持った人間だからだ。

 しかし、私は人と違うと自分をさげすんだり、ひいては家族までも、恥ずかしく思っていたのだから、そういう私が、一番恥ずかしい人間だった。

 怒ると怖いけど、私たち5人姉妹を、何の心配もなく、健康に育ててくれる頼もしいオモニ。

 休みになると、いろんなところに連れて行ってくれ、また本部委員長として、学校にも多くの手助けをしてくれるすばらしいアボジ。

 お姉ちゃんたちも、どんなに優しくて温かいか。私が、初めて寮生活をした時に、泣き叫ぶ妹をおぶり、本も読んでくれた。風邪をひいたときは、りんごもむいてくれて、わからない宿題があると教えてくれる。

 そして、愛する妹たち。おもしろい言動で笑わせてくれるたびに、心が和む。

 何よりも、うちの家族は、みんながチョソンサラムの心を胸に抱いている。アボジ、オモニが遠い寮に送ってまで、私たちを立派なチョソンサラムに育ててくれるから、私たちはアボジ、オモニのもとを離れても元気に学校に通っている。

 そうだ。私たちが当たり前に過ごす平凡な日々が、実はとても貴重なことなのだ。

 そう思うと、私は家族がとても愛しく、大切に思えた。

 こんな楽しい家族に恵まれたことは、本当に幸せだ。

 これからは、どんなことがあっても、決して卑屈にならず、家族を恥ずかしいなんて思わない。

 これから私は、アボジとオモニが望む立派なチョソンサラムになるために、学校で一生懸命学んでいく。そして将来、うちの家族のような朝鮮の心を胸に刻んだ楽しい家庭を築きたい。

(東北朝鮮初中高級学校 崔慧瑛)

[朝鮮新報 2008.2.1]