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〈みんなの健康Q&A〉 慢性閉塞性肺疾患−原因と疾患

 Q:知人が病院で「このままタバコを吸い続けたら肺気腫になる」といわれたそうです。

 A:ちょっとした用事をしただけでも息が切れて呼吸が苦しくなったり、しょっちゅう咳や痰に悩まされる病気として慢性閉塞性肺疾患(COPD)がとても有名です。肺気腫はこの疾患に含まれます。

 Q:呼吸をして体内に酸素を取り入れるのに重要な役割をする肺に、異常が生じるわけですね。

 A:COPDはタバコの煙や有毒粒子・ガスなどを長年にわたって吸入することによっておこる肺の異常な炎症が主病因です。この炎症によって、肺内における空気や酸素などのガスの通り道がせばめられたり、肺の膨らんだり縮んだりする能力が低下して気道が容易にぺたんこになります。だからいくら呼吸をしても気流が円滑に出入りできなくなるのです。以前は慢性気管支炎や肺気腫といった個別の表現を用いることが多かったのですが、今日ではCOPDとして一括して定義されています。

 Q:あまり耳にしない病名ですが、患者数は多いのですか。

 A:診断基準に照らし合わせると、日本における有病率は40歳以上では8.6%もあったという最近の統計報告があります。ここから推定されるCOPD患者数は500万人以上となり、これは世界諸国と同程度の有病率といわれています。こんなに患者が多いのに、なぜ身近に患者があまりいないように感じるのでしょうか。それは、多くのCOPD患者が医療機関できちんと診断されていないからだと考えられています。また、息切れや慢性の咳嗽があっても「タバコのせい、年のせい」でこんなもんだろうと軽く考え、医療機関を受診していない人が多いのです。

 Q:原因あるいは危険因子にはどのようなものがありますか。

 A:最も重要なのはタバコの煙、職業上の粉塵および大気汚染です。そのほか、遺伝的な素因、肺の成長と発達における障害などがあげられます。なかでも喫煙との関連はきわめて強く、長年の喫煙歴がその発症を促すといっても過言ではありません。だから患者のほとんどは40歳以上となります。また、喫煙感受性に遺伝的因子が関与している可能性も指摘されています。一方、喫煙していないのにCOPDを発症する場合がまれにありますが、まだまだその炎症反応の特徴は解明されていないようです。

 Q:COPDの症状や身体所見の特徴について説明してください。

 A:COPDの主要症状は、労作時呼吸困難・息切れ、慢性咳嗽、喀痰です。喘息と違って無症状期はなく、こうした症状が常時みられます。病状が進行すれば安静時にも息苦しさを感じるようになります。COPDでは長期的にみるとほぼ年単位で息切れの程度が進行していくことが多いので、早期の治療開始が大切です。

 Q:日常生活がかなり制限されてしまいますね。

 A:進行するにつれて肺が過膨張してゆくので、前後径が増大する特徴的な胸郭を示すようになります。胸が張り出しているので、これをビア樽胸郭とよびます。また、呼吸のうち呼気すなわち息を吐くのに苦労するので、呼気の効率を高めるため、呼気流速を低下させる口すぼめ呼吸を自然に行うようになります。努力呼吸のために普通は働かない呼吸補助筋を最大限に使用するので、肋間が陥凹したり首の回りの筋肉が強調されて見えるようになります。げっそりやせたり食欲不振におちいるのは長期化したCOPD患者でよく認められる現象です。

 Q:自分でできる効果的な予防・治療法について教えてください。

 A:COPDの90%は能動喫煙者であるといわれています。つまり、喫煙は最大の原因であり、禁煙なしにCOPDの予防・治療はありえません。タバコは本数を減らすという甘い考えではだめで、完全にやめるべきです。COPD患者がかぜや肺炎にかかると重症化しやすいので、インフルエンザなどの感染予防ワクチンの積極的接種をすすめます。運動療法を上手に行うことで、呼吸困難や生活能力を改善させることができます。とくに散歩・階段昇降といった下肢運動療法が効果的だと報告されています。なお呼吸リハビリテーションという専門的治療法もあります。

 Q:食事で気をつけなければならないことはありますか。

 A:体重減少がさらなる病状悪化をもたらすので、食事においてはカロリーの積極的摂取が推奨されています。りんごや梨などの果物摂取が症状軽減に効果があったというデータもあります。

 Q:飲酒はどの程度許容されるのですか。

 A:とくに飲酒が悪影響を及ぼすとは考えられていないようですが、飲酒のために食事の栄養バランスがかたよるようでは問題です。

(金秀樹院長、医協東日本本部会長、あさひ病院内科、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800)

[朝鮮新報 2008.2.20]