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東北アジア新時代開幕の序曲、「平壌のアメリカ人」への賞賛

 平壌の舞台で奏でられた美しいしらべ。ニューヨーク・フィルの公演は敵対国間の葛藤すらも超越する音楽の力を証明した。

 舞台では朝鮮と米国の国歌に続いて、ドボルザークの「新世界より」、ガーシュウィンの「パリのアメリカ人」などが演奏された。同フィルの数ある演奏曲目の中でも、米国の人びとからとくに愛されている名曲だ。

 公演会場は言葉で言い表すことのできない静かな感動に包まれた。朝鮮の聴衆は演奏された曲を純粋な気持ちで受け入れた。こみあげる感情はおそらく米国の聴衆のそれと変わらないだろう。舞台に向けて拍手を送る平壌市民の姿に偽りはなかった。

 音楽という共通の言語によって舞台と客席が一つになった。朝鮮半島と東北アジア情勢の新たな流れを予感させる今回の平壌公演は、一般的な文化・芸術行事の範疇を超えたものだ。

 公演は朝米両国政府の関心の下で実現した。6者会談で一連の合意がなされ、朝鮮半島核問題の直接の当事国である朝米は敵対関係清算のための実践的措置を講じる段階に入っている。核問題の解決のみならず、政治、経済、文化などより広い分野での交流促進と相互信頼の醸成が共通の課題に挙がっている。

 朝鮮と米国の新たな関係構築がもたらす波及効果は大きい。今回の平壌公演は朝鮮半島と東北アジア情勢の秩序再編を予告するイベントだといえるだろう。

対決終息の決断

 公演は朝鮮国内と世界各国に生中継された。テレビを見た朝鮮の人びとは、米国のオーケストラが奏でる音楽を新時代開幕の序曲として聴いたのだろうか。

 朝鮮半島における自主独立国家の萌芽を摘み取った米国、そして1950〜53年の朝鮮戦争。21世紀のこんにちまで朝米間には国交がなく、停戦体制という名の交戦関係が持続してきた。しかし朝鮮創建60周年を迎える今年、米国を代表するオーケストラが朝鮮の首都で朝鮮の国歌「愛国歌」を演奏したのだ。

 聴衆の一人は語る。「米国がわれわれをこれ以上敵視せず、平和共存の道に進めば、両国関係の大きな飛躍が可能だ」。

 今年、朝鮮は2012年に「強盛大国の大門」を開くという目標と構想を内外に宣言した。ニューヨーク・フィルの公演を、「北朝鮮の閉ざされた扉を開き外の世界を見せるきっかけ」としてとらえるのは、朝鮮の現状を知らない第3者の一方的な見方だろう。

 国土の分断と敵対国による圧力と封鎖、そして苦痛と受難を強要してきた古いパラダイムを壊す朝鮮の決断はすでに下された。米国の交響楽団が演奏する朝鮮の国歌が全世界に響いた。米国の国歌を聴く聴衆の姿も電波に乗って世界へ届けられた。朝鮮の「音楽政治」が持つ意味は深い。

 6者会談の進展で始まった変化を肯定し促進しようとする人びとにとって、ニューヨーク・フィルは歓迎すべきゲストだった。朝鮮を訪れた米国の音楽使節、「平壌のアメリカ人」に向けられた拍手喝采は長く鳴り止むことはなかった。

[朝鮮新報 2008.2.29]