〈朝鮮と日本の詩人-50-〉 草野心平 |
民族の悲哀と怒りを暗示 高めの屋根の向うから。 その時おれはすべてが未知のまんなかで。 叫びの如くガアッと迫った。 この街は。 石の上に濡れ衣を叩く木の音と。 何万年。 沈む血の色。 「北漢山」の全文である。この山はソウルの北に立つ標高836メートルの名山である。1、2連では北漢山の偉容が紺碧の空にそびえる情景を視野にとらえている。第4は「うち沈む」と「つむじ風」を対比させて、第5連は砧を打つ響きと路面電車の軋みとを対照させて、植民地化の民族の悲哀と怒りを表徴している。次の二つの連は、北漢山の「大岩乗」「槍の光」「沈む血」という詩句で、民族の不屈の気概と抵抗精神を暗示している。 この詩は1970年にソウルで開催された国際ペン大会に参加した折の作品で東亜日報に訳載された。心平は1903年に福島県で生まれ慶大を出て第一詩集「第百階級」で評価された。蛙の詩を多くつくったことで知られる、日本詩の大家の一人である。(卞宰洙・文芸評論家) [朝鮮新報 2008.3.3] |