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NYフィル平壌公演 朝米交響楽団が初協演

美しいアンサンブル奏でる

 2月26日、平壌で初公演した米国の有名オーケストラ、ニューヨーク・フィルハーモニック一行は滞在期間(2月25〜27日)、国立交響楽団との協演や音楽専攻の学生らに対する演奏指導など、朝鮮側とさまざまな音楽交流を行った。同フィルの音楽監督で常任指揮者のロリン・マゼール氏が平壌訪問の目的の一つとして挙げていたのが、「朝鮮の音楽家との交流」だった。(写真はいずれも呉陽希記者撮影)

 【平壌発=金志永記者】ニューヨーク・フィルの公演翌日の2月27日、牡丹峰劇場で朝鮮の国立交響楽団とニューヨーク・フィルのメンバーによる初の協演が行われた。また、ロリン・マゼール氏の指揮による国立交響楽団の演奏も行われた。

息はぴったり

ロリン・マゼール氏指揮の下で演奏する朝鮮国立交響楽団

 朝鮮と米国のオーケストラがアンサンブルを奏でるのは初めて。両楽団からそれぞれ4人の弦楽器奏者が選出され、メンデルスゾーン作曲の弦楽8重奏を演奏した。

 この日の協演は観客のための正式な公演ではなく、両オーケストラのメンバーらが演奏を楽しむための場として企画された。牡丹峰劇場の観覧席では国立交響楽団メンバーと国内の音楽関係者が8人の演奏を見守った。

 「お互い今日初めて顔を合わせたので、うまく演奏できないかもしれない」

 演奏に先立って米国側の奏者が客席に向かって「了解」を求めたが、杞憂にすぎなかったようだ。

 第1楽章が終わるころには、「言葉は通じないが演奏の息はぴったりだ」と感嘆の声が上がった。

 「一曲だけでなく、たくさんの曲を一緒に演奏してみたい。時間制限があることが残念だ」。第2楽章終了後に米国側奏者がこぼした「愚痴」が笑いを誘った。

 最終楽章、8人の奏でる音が美しいハーモニーを織りなす。メンデルスゾーンのアップテンポのメロディが会場に響きわたった。30分ほどの演奏時間だった。演奏が終わると、客席からは拍手が沸き起こった。

 また今回の協演では、ある米国人少女が朝鮮の子どもたちに贈るために作曲した曲も演奏され、朝鮮側の拍手喝采を浴びた。

新しい感覚学ぶ

 続けてマゼール氏は、国立交響楽団によるワーグナーの「マイスタージンガー」、チャイコフスキーの「ロミオとジュリエット」を指揮した。

 国立交響楽団がワーグナーの歌劇曲を演奏するのは久しぶりのことだというが、同楽団のアンサンブルは米国の有名な指揮者を納得させるのに十分な内容だった。近年、同楽団は金正日総書記の特別な関心の下、めざましい飛躍と発展を遂げているとの評判だ。楽団関係者は、「総書記はわれわれの公演を何度も鑑賞し、そのつど、演奏の細部にいたるまで具体的に指導している」と明かした。

 牡丹峰劇場は数年前に全面改装され、交響楽の最高殿堂として生まれ変わった。今回、その牡丹峰劇場にマゼール氏の指揮するワーグナーの壮厳な音楽が響き渡った。

 一方、チャイコフスキーの曲は朝鮮でもよく演奏されるが、マゼール氏の指揮する「ロミオとジュリエット」は、朝鮮で一般的に知られている曲の印象とは異なって聞こえた。国立交響楽団の指揮者キム・ホユンさんによると、「曲に対する理解は指揮者ごと、楽団ごとに異なる」そうだ。「他国の楽団の指揮者に会うことは、自分の知らない新しい感覚に触れ、奏者の表現力を豊かにするうえで大変意義の大きいこと」だという。

出会いの意味

 牡丹峰劇場で奏でられたアンサンブルが持つ深い意味を、この日、席をともにしたすべての人びとがそれぞれの心に刻んでいた。

 「平壌で、われわれが知らなかった音楽に出会えた。今後もあなたがたの活動が大きな成果を挙げることを願っている」

 指揮を終え花束を受け取ったマゼール氏は国立交響楽団のメンバーに別れの言葉を残した。

 一行を劇場前で見送った国立交響楽団のコンサートマスター(楽団のリーダーで、通常第1バイオリンの首席奏者)であるチェ・ギヒョクさんも、団員の心情を代弁するように語った。

 「マゼール先生をはじめニューヨーク・フィルのみなさんと楽しい時間を過ごせた。朝鮮の交響楽が発展する姿を見せられたことがうれしい」

[朝鮮新報 2008.3.5]