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NYフィル平壌公演 各国メディアの反響 朝米交流と信頼構築に期待

「平和への序曲」「オーケストラ外交」

 米ニューヨーク・フィルハーモニックの平壌公演(2月26日)は、世界各国のメディアで大きく報じられた。米国や南朝鮮メディアの報道を中心に、今回の公演に対する国際社会の反響をまとめた。

「雪解けの兆候」

2月26日、東平壌大劇場で行われたニューヨーク・フィルハーモニックの公演 [朝鮮中央通信=朝鮮通信]

 米国の主要メディアは2月26日の公演を大きく報じ、同フィルの平壌訪問が敵対関係にある両国間の和解と交流を促進させるきっかけになると、その意義を強調した。

 ニューヨーク・タイムズ(2月26日、電子版)は「米国の交響楽団としては初の記念碑的な公演」と指摘し、「半世紀にわたる朝鮮と米国間の文化的断絶の雪解けを知らせる兆候」だと評価した。同紙27日付は、「演奏が終わると団員の一部は涙を流し、聴衆は起立拍手で楽団を称え、別れを惜しむように手を振った」と会場の雰囲気を伝えながら、公演が「大成功のうちに幕を下ろした」と報じた。

 ワシントン・ポストは朝米間の音楽交流が持つ意義を、米中国交正常化のきっかけとなった「ピンポン(ping-pong=卓球)」外交をもじった、「シングソング(sing-song)」外交という造語で表現した。

 ほかにも、「ニューヨーク・フィルの平壌訪問はバイオリン外交をもたらした」(AP)、「米朝関係の閉塞状態を打開する歴史的な公演」(AFP)などと、朝米間で初となる本格的な文化交流を肯定的にとらえる報道が大部分を占めた。

 ニューヨーク・フィルの平壌訪問には100人を超す報道陣が同行した。メディアは26日の本公演以外にも、平壌市内の様子や市民の声など、さまざまな朝鮮の姿を平壌発で報じた。

 たとえば、「朝鮮国立交響楽団の演奏能力の高さ」(ニューヨーク・タイムズ)や、「人びとが大統領選挙など米国の政治情報に詳しいこと」(AP)が「驚きの経験」として伝えられた。

 米政府は、6者会談合意履行プロセスとの関連を否定し、「公演はあくまでも公演にすぎない」(ペリーノ・ホワイトハウス報道官)と政治的意義の付与には慎重だ。一方で、「文化交流は望ましいこと」(ライス国務長官)、「民間レベルの重要な交流であり、今後もこのような活動を支援していく」(ケイシー国務省副報道官)と、両国間の交流拡大には前向きな考えを示している。

「前例ないイベント」

 それ以外のメディアもニューヨーク・フィルの平壌公演を大きく報じた。

 中国の東方衛星TVは同日、公演の特集番組を生放送し、「公演が朝米関係の改善を通じた核問題の解決の触媒となるかに期待が集まっている」と伝えた。ほかにも中国新聞や新華社通信などが詳しく報じた。

 ロシアの国営テレビ「NTV」は26日の放送で、「米国の使節団300人が国交のない朝鮮を訪問したのは初めてのこと」だと評価し、「公演は金正日国防委員長の出席いかんに関わらず、『バイオリン』を通じて朝米両国が外交関係を樹立する可能性を示したことに意義がある」と伝えた。

 フランスの日刊紙ル・モンド27日付は平壌発で「朝鮮の心臓部で米国のオーケストラの旋律が響き渡った」と伝え、「つい最近まで想像すらできなかったことが現実となった」と報じた。同じ日刊紙リベラシオンも、「ホワイトハウスと北朝鮮との波乱万丈な関係の中で前例のないイベントが開かれた」と意義を強調した。

南でも大きな関心

 一方、ニューヨーク・フィルの平壌訪問は南朝鮮でも大きな関心を集めた。新聞やテレビは一様に公演の成功を歓迎する論調を展開し、これを機に朝米関係改善の突破口が開かれることへの期待感を示した。

 ハンギョレ新聞27日付は社説で、今回の公演を朝米関係の「分水嶺」と評価し、「両国関係の進展に大きな助けとなることは明らか」だと指摘した。

 中央日報も、「北と米国との関係において歴史的な里程標として記録される」出来事だと強調し、「平和への序曲」「両国間の敵対関係の雪解けに青信号」などと表現した。

 連合ニュースは、「敵対関係にあった北と米国が音楽を媒介に交流を始めた」と指摘し、今回の公演が「単なる芸術公演以上の意味を持つ」と評した。同通信は、米国にとって今回の公演が「悪の枢軸」「暴政の前哨基地」と呼んだ朝鮮に対する「和解の手ぶり」であり、朝鮮側も公演の成功のために最大限の誠意を見せたと指摘した。また、公演が「両国間の今後の文化交流活性化と信頼関係構築につながることを期待する」と付け加えた。

 各国メディアの論調は、今回の公演がすぐさま6者会談のこう着状態を打開し朝米関係改善の直接の突破口になる可能性は少ないとしつつも、半世紀以上にわたる朝米間の不信を解消し各方面の交流を促進するのに寄与するだろうとの見方で一致している。

 対照的に、日本のメディアの報道は全般的に否定的なトーンが目立った。

 「北朝鮮の政治宣伝に使われた」「派手な歓迎ぶりが空々しく映る」(ともに読売新聞27日付社説)、「劇場にいたのは特権階級の面々」(産経新聞28日付)など、6者会談のこう着状態とからめて、公演の意義を矮小化しようとする意図が見て取れる。

[朝鮮新報 2008.3.7]