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〈本の紹介〉 朝鮮王朝時代の世界観と日本認識

 本書の著者、河宇鳳氏は、朝鮮時代の朝・日関係史の南の代表的な研究者。この研究には政治・社会・文化・経済・外交などさまざまな分野からのアプローチがある。その中で、朝・日両国の対外認識、あるいは相互認識というテーマはこうしたアプローチが互いに関係しあい、総合的に考察するなかで明らかになるものであろう。

 また、対外認識に関する研究は、近年とくに高まっている通信使に対する関心とも大きく関わってくる。07年は、日本の朝鮮侵略により断絶した両国の国交が1607年の第1回通信使(正式名称は回答兼刷還使)によって再開してから400年を迎えた年でもあったことから、日本各地で通信使と関連した行事やシンポジウムが開催された。朝鮮時代後期(日本の江戸時代)に安定した善隣外交関係を維持しようとした朝・日両国のあり方に再び注目が集まっている。

 当時の朝鮮にあった日本認識のなかには、小中華意識にもとづいて日本を夷狄視する一方で、実学者のように小中華から離れた視点で日本を理解しようとする認識もあった。そうした認識が通信使外交とどのように関わっていたのか興味がつきない。

 善隣外交という大枠を維持しようとする当時の両国における外交意思の重要性は、今の朝鮮半島と日本との関係をはかる意味でも一読に値する。

 同書の主な内容は次のとおり。

 第1部 朝鮮時代の対外認識の構造と日本認識(朝鮮時代の人々の世界観と日本認識、朝鮮時代後期の対外認識の構造と推移、朝鮮半島の人々の対馬認識−朝鮮時代を中心に)

 第2部 日本認識の展開(朝鮮時代初期における対日使行員の日本認識、朝鮮時代後期の通信使使行員の日本認識−1764年甲申通信使の元重挙を中心に)

 朝鮮時代後期の南人系実学派の日本認識

 朝鮮時代の漂流民の日本認識

 開港期の修信使の日本認識

 東学教祖崔済愚の対外認識と日本観

(明石書店、TEL 03・5818・1171、6000円+税)

[朝鮮新報 2008.3.21]